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支援の日の出  作者: hoketsu
第一章 始まりの始まり
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11話  噂の罪

「火が……っ」


 王都の中心に大きく火が上がっているのが見えた。

 辺りは煙が充満し、魔法で水を出して消火にあたる人がちらほらいる。そんな状況だった。


「太陽の位置は!?」


 太陽の位置と動き方から、大体の時間を予測できるはずだ。

 魔法道具は使えば使うほど効果が薄れ、おばあさんの死では一日弱ほどのズレがあった。

 となると、一日以上の猶予が生まれることはまず無いだろう。

 太陽の位置を確認すると、二、三時間といったところだろうか。ズレは大きくなかった。

 衛兵がいないと知った時から、何かが起きていることに気づくべきだったのだ。

 今さら後悔してももう遅い。

 今は、できることをやるべきだ。


 あの商人の青い死体。

 間違いなく、ミクスがやったものだろう。

 犯罪者しか狙わないと言っていたが、あの商人は何かしら罪でも犯したのだろうか。

 本来ならば、善良な民を狙うなど言語道断と言いたいところだが、あの商人には不穏な雰囲気を感じていた。

 犯罪行為をしていてもおかしくない、そんな雰囲気である。

 偏見の強さは否定しない。

 ただ、殺されるまでのことをしたのかは別問題である。

 ミクスの中で、犯罪と認める範囲は広い。どんなに小さい罪でも、だ。


 僕はミクスを止めなければならない。

 この世に殺されてもいい人など、ほとんどいないと信じているからだ。


 しかし、この大火事はどういうことなのか。

 未だによく分かっていないのだ。

 ミクスが火をつける。

 その可能性もあり得なくはないが、無差別に殺すのを気が引けると言っていた彼女が、昨日の今日でこのような行為に及ぶのかどうかは議論の余地があった。


「まずはあの周辺に行って、ミクスが隠れそうな場所を探さないと」


 遠すぎる距離ではない。

 今から行っても余裕ができるほどではある。が、早めに行って損はないだろう。

 思考を切り替え、大急ぎで火元へ向かう

 すると、どっしりと構えた大きな門が見えてきた。

 通るためにあるはずだが、通らせないと言っているかのような門。

 その下では、衛兵が通行人のハレストを確認しているようだった。

 門の脇には衛兵が固まっており、簡易的な休憩所のようになっている。


[この先、クラスⅠの方のみしか入れませんので、それ以外の方は列から外れてくださーい]


 若い衛兵が大きな声で案内をする。

 その後ろには、威厳のある堂々としたおそらく上司の衛兵が、仁王立ちで立っていた。

 まるで自分が最後の(かなめ)であるかのように。

 何も起きてないのに、常に警戒を張っている。

 衛兵として頼もしい限りである。


 通行は比較的スムーズで、長い列に飽きを感じる間もなく番がきた。


「ハレストを見せてください」


 言われた通り、手のひらを見せる。


「はい、クラスⅠの方ですねー。どうぞ、お通りくださーい」


 最高クラスの人しか入れないことは初耳だったが、今の自分は対象者。

 難なく門を突破する。



 ーーと思っていた。



「おい、そこの黒髪の若いの! ちょっと止まれ!!」


 門を潜っている途中、耳が耐えられるギリギリの声量が辺りに響き渡った。

 どうやら、若い衛兵の後ろにいた堂々とした衛兵が、声を出したようだ。

 一瞬、自分ではないと思ったが、こと王都において黒髪はあまりいない。

 また、衛兵が真っ直ぐこちらに向かってくることからも、呼び止められたのは確かだった。


「名前は?」

「え……レイド・シースリーです」


 急に始まった尋問のような質問に、戸惑いながらも答えてみせる。


「やっぱりか……。お前が昨日、大通りにいたハレストが付いてないってやつだな? 珍しい髪色してたから、すぐ分かったぜ」


 あの時、ハレストがないことで少しの騒ぎにはなっていた。

 もしかすると、騒ぎが起きたことだけ知っていて、誤解が溶けたことは知らないのかもしれない。

 釈放されたのは昨日の夜。

 まだ午前中である今の時間では、全ての衛兵が結果を知っている訳ではないのだろう。


「この方、レイドさんは、ちゃんとクラスⅠのハレストがありました」


 異議を唱えようとすると、確認してくれた若い衛兵が先に言ってくれた。

 そう。

 今の自分には、ハレストが付いていないどころか最高クラスのものが入っている。

 先ほど確認してもらったのだから、わざわざ呼び止めた理由が思い当たらなかった。


「お前はまだ若いから知らんのだろうが、ハレストは偽造が容易(たやす)い。目視で見ただけでちゃんと確認したとは言えんよ」


 んん!? 

 もしかして、偽物のハレストを僕が入れているとでも言いたいのだろうか。いや、文面をそのまま捉えるならそれしか言ってないのだが……


 しかし、昨日リオラに入れてもらったばかりで、衛兵が疑うのも分かるところはある。

 なにせ昨日の今日なのだ。

 『ハレストが無い』

 この情報を昨日もらって、今日改めて確認するのは疑い方としては間違ってないだろう。

 自分の視点からではなく、相手の視点を考えて仕方ないという感情を引き出す。

 ストレスを溜めずに生きる方法である。


「では、魔法で確認するなりしてもらって結構です。急いでいるので、早めにお願いします」

「ふん、何を言い出すかと思えば戯言を。おいお前。牢屋に入れる準備を始めろ」

「は?」


 そう言うと、上司に命令された部下は、躊躇いの表情を見せるものの、逆らう勇気は湧かなかったようだ。

 指示に従い、拘束の準備を始める。


「なんで、牢屋に入れられなきゃならないんですか!? 偽物かどうか、確認してもらえれば済む話です」

「そんなものがあるんなら、ぜひ見せて欲しいものだ。そうやって時間稼ぎをしているつもりだろうが、貴様の思い通りになってやるつもりはない! おい、さっさと拘束せんか!!」


 ない、のか? 確認する方法がないのに、牢屋に連れていかれそうになっているのか……?

 何かしら魔法を使って二重チェックをしたり、門を通ることで確認できたりする。

 そんなシステムは、この衛兵の言い方を聞くにないらしい。

 衛兵ですら見抜けないものを、自分の勝手な考えで偽造と決めつけ。

 通さないという選択をすることは、単なる嫌がらせとしか思えない。

 不正の温床としかならない門の確認方法に、呆れが止まることはなかった。

 見抜けないから通さない。 

 それは、自らの怠慢を声を大にして言っていることにはならないだろうか。


「昨日はフォートマンさんに尋問を受けました。僕はいま外にいるんですから、出自に関して問題は無かったということをフォートマンさんが認めたのと同じなんです。帰った後に刻んでここにいるんです」

「ええい、訳のわからんことを!!」


 あぁ、話が通じない部類の人間だ。

 本人はもう我慢できない、といった感じだが、何も理解しようとしていない。

 だから話が通じない。

 鐘楼を出てから三十分ほど経っているだろうか。

 こんなところで時間を使っている暇はないのに!!


 僕を捉えようとしてじりじり近づいてくる若い衛兵。

 これはもう、真正面から入ろうとしてはダメだ。

 近道が塞がれた今、遠回りになろうとも一旦逃げた方が良さそうだった。

 幸いこの衛兵には、若干の躊躇いが残っている。

 タイミングを作れば逃げれそうだった。

 仕方ない。この手は使いたくなかったのだが……


「な、なんであそこに……」

「?」

「なんであそこに、ジャイアントベアーがいるんだ!!!」

「!?」

 

 一斉に振り向く衛兵たち。

 影響は通行人や列で待っていた人たちにも広がった。

 いきなり、生態系の頂点であるジャイアントベアーが現れたとあっては、振り向かないものはいないだろう。

 汚すぎる手に縋りたくはなかったのだが、今は火事を止めるために動かなければならない。

 心の中で、嘘をついたことに負けないぐらい、善良な行いをするから許して欲しいと。

 神様に願いながら、その場を離れた。



 

 慌ててそこらにあった路地裏に入った。

 衛兵たちは、いつの間にかいなくなっていた僕を探すことは諦めたらしい。

 何人か追手が近くを通ったが、路地裏の複雑さのおかげでほとんど危険に陥ることはなかった。

 難なく逃げることができた。が、目的は何も達成されていない。

 むしろ正面からの突破含め、衛兵たちの警戒度が上がっている。

 そのため、難易度は先の時より高いだろう。


 これからどうしようか。

 門の周りを囲っている壁は、到底高くて登れそうにない。

 あれを越えようとするのは、不可能に近かった。

 しかし、それはミクスも同じことなのではないだろうか。

 魔法を壁の前で使用するようなものならば、すぐに目立ってしまい、衛兵に追いかけられること間違いなしだろう。

 最も、それでも彼女は逃げ切るだろう。

 しかし残された時間の関係上、あの青い死体が出るまではもう少し。

 見つかるような行動を取るならば、ほぼ不可能に近かった。


「もしかすると、あの火事はミクスが起こしたもので……それで注意を引きつけて中に入った……?」

「お前の中の私、にゃんかすごい物騒なやつにされてにゃい?」

「っ!?」


 突如、話しかけられた。

 それは白い猫耳を携えて、不服そうな感情を出している。



 ーー目の前には目的の人物、ミクスがいた。




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