悲劇の胚珠
朝を迎え、昼は遊びに行き、夜は家でゆっくり過ごす。
このサイクルを繰り返してきた僕は今、凄惨な光景を目にしている。
ポタ・・・ポタ・・・
「……な、何か……っ!」
そう、そこには何かがあった。
夜になっても灯り一つ付かない家で、その物体は液体を垂らしながら僕を見下ろす。
父親がいないこともあり、母が自分を養うために根を詰めていたことは知っている。
暗くて見えないものの、明かりを付けてはいけない気がした。なぜなら、想像通りのことが起きているのは明白で、=何も見てはいけない=そう直感が告げるからだ。
しかしそんな考えとは裏腹に、念の為の確認として身体は動いていた。
「うそ、だよね……?」
誰もいない空に向かって問いを投げる。
本当は知りたくないはずなのに、早く確認したいかのように本能のまま歩みを進める。
ランプに手が届く距離になって尚、その物体から目を離さずにいた。
ポケットからマッチを取り出し、ランプに灯す。ランプの周辺は明るくなり、その物体にかざすと、正体がはっきりと確認できた。
「……っ!」
もしかしたら…… そんな淡い希望は、この瞬間に砕け散った。
何が起きているのか徐々に理解してくると共に、全身から血の気が引いていく感覚を覚える。
ーーそれは、唯一の肉親である母親の死体だった
心臓付近には服ごと貫いたと思われる刺し傷。また、血の通っていない体は首に括られた縄によって宙に固定されていた。
その周りには木の椅子と剣が無造作に散らかっており、何が起きたかはイヤでも分かる。
机の上には「レイドへ」と書かれた遺書らしき紙が乱雑に置かれていたが、その中を見るのも気が引ける。
自害したことへの謝罪の言葉が綴られているのか、はたまた解放されることへの喜びの言葉なのか。どちらにせよ母親の死がある時点で、良いことでないのは確実だった。
結局その中身は……
ーーどうしようもないほどの、憎悪だった。
小説の文章の書き方についてひたすらに調べてはみたものの、結局書かないと分からないということで始めてみました。
まだ何も始まっていませんが、お付き合いのほどお願いいたします。