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ゲーム・オーバー

作者: 駒友四季

どこかで聞いたラブストーリー

「これで終わりだね」

 いつもの優しい微笑みを浮かべて彼は言った。彼の口から初めて発された最後の言葉が涙をとめどなく流させた。



 自由奔放と誰かに言われていたことも知っていた。だけどそれは寂しかったから。要領が良い方ではない彼は残業や休日出勤に追われる毎日で、会えるのはたまの休みだけ。もっともっと会いたくて、もっともっと触れ合いたいと思っても叶わない。その抑えられない気持ちは、違う形で顕著になっていった。


いつ、どんな時でも世の中には、顔の見えない世界には待っていてくれる誰かがいる。真夜中に「行ってきます」のメッセージを送ると、彼はすぐにどんなところでも飛んでかけつけてくれた。何度も彼に連れ戻され、その度に彼には怒られたけれど、必ず彼は迎えにきてくれた。それが当たり前だと思っていた。


 当たり前のことなどどこにもない。四六時中いつでも彼が行動できるわけではない。そして、世の中は世間慣れしていない私の思うような人ばかりではないことは、少し考えればわかることだった。それに考えが至らない…いや、正確には考えを放棄していた。全ては自己責任。ほとんど綱渡りの行動。たった一度の思い違いで…過ちで、人生を大きく狂わせてしまうことがある。それに気づいたのは、全てが終わったあとだった。


 彼からの電話がきた時、一度では出ることができなかった。それがわかっていたのか、何度も何度も留守番電話につながっても繰り返しコールが続き、何度鳴ったのかわからない時にようやく応答することができた。



「これで終わりだね」

 どんな人でも許せないことがある。疲れ切った表情で私の前に姿を見せた彼を見た時、そのことに気づいた。もう戻れないと気づいた。たくさんあるはずだった伝えたい気持ちは何ひとつ言葉にならず、代わりに涙としてとめどなく流れていく。彼はそれをわかってくれているはずなのに、それ以上何も言わずに背を向けた。最初で最後の彼の冷たさが、なぜか温かく感じた。


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