098・古島というバカな男
「そんじゃ母さん、いってきま~す!」
俺はカバンを手に持つと学校に行く為、玄関を開けて外に出る。
「ふう...昨日はホント色々あったが、今日は平穏にいくといいな......」
俺は昨日起こった様々な出来事を思い出し、げんなりしつつもそんな願望を胸に抱き、そして学校道をトコトコと歩いて行く。
それから数分後。
「あ!やっと来た!おはようさん、朔夜ぁ♪」
「遅かったじゃん、朔夜くん。女子を待たせるのは御法度だぞ?」
昨日連絡先を交換していた亜依子と心愛から明日一緒に学校に行こうとリンレスで誘いを受けた俺は、そこで選んだ待ち合わせに行き、二人と合流する。
「はは、すまんすまん。ちょいと起床が遅れてな。おはよう亜依子、心愛!」
「おや?何~か元気がないね、朔夜くん?どったのよ?」
「いやね。昨日の出来事を思い出していてね......」
「ああなるほど。あーしらの事やあの不良ども、そしてナンパ野郎とイベント目白押しだったもんね♪」
「それプラス、委員長の件もかぁ?うん確かに色々とオンパレードだったねぇ~うふふ♪」
心愛と亜依子が俺の気苦労も知らずにクスクスと笑う。
「もう笑い事じゃないよ。ったく...俺は平穏に暮らししたいのに......」
そんな二人の笑顔を見て、俺は不満顔を洩らす。
「......まぁいい。話は変わるけどさ、あいつ今日来ると思うか?」
「あいつ?」
「古島だよ。古島。昨日も言ったと思うけどさ」
「ああ...古島か。まぁ古島だし、けろっとした顔で来るんじゃない?」
「古島だしねぇ......」
亜依子と心愛がゴミを見る様な目付きで各々口をする。
「い、いや...あれだけの恥晒しをしたんだぜ、流石にあいつでも数日時間を開けるんじゃないか?」
俺だったら、数ヵ月は引き篭るけどね!
「おお!遅かったなじゃねぇえか、亜依子!心愛!」
「―――な!?!?」
マ、ママ、マジか!?
こいつマジなのかぁぁっ!?
あんな事を仕出かしておいて、平然と登校して来ていやがるっ!?
「おお!良かったぜ!二人とも無事だったんだな!......って、光野?な、何でてめえが亜依子達と一緒にいやがるん―――のげぇ!?」
いつもの陽キャライケメンスマイルでこちらに近寄って来た古島の頬を、亜依子がストレートパンチで叩き殴る。
「イテテテ......い、いきなり何しやがる、亜依子!?」
亜依子から訳も分からずに殴られた頬を擦りながら、古島が納得がいかないという顔をして亜依子に抗議する。
「黙れクズ!不良どもから連れ去れそうになったわたし達を置いてきぼりにして逃げたクソゲス野郎が、わたし達に話し掛けてくるんじゃないわぁあっ!」
「――う、うぐ!?」
亜依子から殴られた正論を聞かされた途端、古島がバツの悪そうな顔に変わって黙り込んでしてしまう。
「お、おい。聞いたかよ、今の話?」
「ああ。あいつそんな事を仕出かしておいて、なに食わぬ顔で二人に話し掛けたのか?」
「し、正気かよ......だとしたら、あいつ怖いんですけどぉぉおお!?」
「サ、サイコパスだ!完全にサイコパスだよ~~っ!」
亜依子の怒りの言葉を聞いて、クラスメイトがザワザワ騒ぎ出す。
「ち、ちち、違うんだよ!き、聞いてくれよ、亜依子!お、俺はな別に逃げた訳じゃないんだよ!そ、そうっ!助けを呼びに行ったんだよ、助けをさぁ~っ!」
「見苦しい言い訳すんなし。あーしらあの場所にしばらくいたけど、朔夜くん以外誰も来なかったし!」
「うぐ!?」
古島の浅い言い訳は、心愛からあっさりと論破される。
「そ、それは...そ、その...あっちこっちと探し回ったんだけどよ、助けてくれそうな人間が中々見つからなくてよ......そ、それよりも何で光野の奴とお前達と一緒に登校なんかして来たんだよ?そ、そんな腕なんか組んで仲良さげにしてよ!?」
「そんなよりもってなんだあ!あーしらには一大事だったんだぞ!...ったく。大体仲良さげで当たり前だし、だって朔夜くんがあの不良どもからあーしらを助けてくれんだもん!」
心愛は呆れ顔で古島にそう言うと、俺の腕にギュと力強く抱き付いた。