090・男も女もチョロイン
「ね。ただの友達枠では済まなかったでしょう?」
「は、はい....ぜ、全然...全く...友達ではなかった...です....ね。ほ、本当にすいま...せん...でした......」
俺は参りましたという表情で項垂れ、成美に心から謝罪する。
「うむ、分かればよろしいっ!ではお兄ちゃんも自分の非を認めてくれたようなので改めて聞くけど、お兄ちゃんは何上その友達...女性達とそんな関係になっているのかな?一から十まで詳しく細かく話してもらおうではないかっ!勿論、話してくれるわよねぇ~お・兄・ちゃ~ん♪」
こっちを威圧感タップリのニコニコ顔で見てくる成美に、もうこれ以上隠し通す事は不可能だなと悟った俺は、
「う、分かりました、お話しします。じ、実はですね......」
話す事の出来ない部分は誤魔化しつつ、今日起こった出来事を成美に話していく。
「フムフム。なるほどねぇ...そんなんやられたら、こんな関係にもなっちゃうか。うむ、これは致し方ないな......っていうか、マジ惚れしちゃってんじゃないの、その三人の女性さん達?」
「はあ!?あ、あいつらが俺にマジ惚れ!?」
いやいや、それはない。
何故なら、陰キャラと陽キャラは決して混じ合う事のない対極なる存在なのだから。
ま、まぁそうは言うものの、
好感度が上がったかもっていう自覚はちょこっとはある。
けどさ~
「やっぱ、惚れる所までいかないかな?」
「いやいや確実に惚れるって!女性っていう生き物は窮地に立った自分を勇敢に助けてくれる男性には基本的に弱い生き物だから。ほら、あれだよあれ。白馬の王子ってやつ?」
「う~ん。白馬の王子......ねぇ」
言われて見れば、あっちの世界でもアキラに助けられた女性...俺の手柄も含む...が、そんな感じの恍惚な表情をしていたな?
「それに男性の方は、もっとそうなんじゃないの?」
「うぐ。た、確かに成美の言う通り、男性はちょっとでも自分を助けてくれた女性には好意を持っちゃうかも。いいや最悪、その女性の事を好きになっちゃう可能性は高いかもっ!」
特に陰キャラはその可能性が、他の男性よりもずっと高いと思う。
何せ女性との交流なんて縁遠い存在、それが陰キャラだもんな。
事実、あれだけいっぱい揶揄われまくった亜依子や心愛だっていうのに、終始デレデレだったしな、俺。
俺は今日の出来事を思い出し、成美の正論に納得する。
「どうやらお兄ちゃんに私の言いたかった事は十分伝わったようだね!ではでは私の言い分を認めてもらった所で......こほんっ!お兄ちゃんには来週の日曜日、私とデートをしてもらいますっ!!」
「―――は??」
「あ。言っておくけどこれ、キャンセルは不可能の決定事項なので、そこんとこよろしくっ!」
成美が満足したというしたり顔を見せた後、軽く咳払いをすると、俺の鼻先に人差し指をビシッと突き付け、ニコッとした笑顔でデートの強制申し込みをしてきた。
「え、えっと...何でこの流れから成美とデートするっていう流れになっちゃうのかな!?」
俺は意味が分からんとハテナ顔を見せていると、
「......わ、わたしとデートするの...も、もしかして嫌...なの?」
そんな俺の表情を見た成美が、ショックとばかりにしょんぼりと顔を下に落とす。