088・彼氏彼女?
「う、うぐぬぬぬぅうっ!お、おのれぇぇえっ!地味陰キャラの分際で俺を馬鹿にしやがってぇぇぇえっ!!」
俺の挑発に最後のチャラナンパ男がビビりながらもプライドからか、拳を構えて攻撃体勢に入る。
「おお!凄い気合いじゃん?だったら、俺も少し本気を出しちゃおっかな♪」
「な、なめんじゃねぇぞぉぉぉおっ!い、陰キャラ風情がぁぁぁああっ!!」
俺の煽り言葉に対し、顔中を真っ赤にさせたチャラナンパ男が、右腕を大きく後ろに振り上げて殴り掛かって来た。
そんなチャラナンパ男を、俺は冷静な表情で待ち構える。
「草生と羽佐男の仇討ちだっ!くたばれぇぇぇやぁぁあっ!!冴えない地味くそ陰キャラやろうがぁぁあぁあ――――――」
『無気弾!!』
「――――ぐば!!!」
最初のチャラナンパ男と同じポイントの土手っ腹に、スキル『無気弾』を再び放つと、殴り掛かって来たチャラナンパ男は脂汗を滲ませながら動きをピタリと止める。
そして俺はトドメと言わんばかりに、
『無者の威圧っ!!』
威力を少し上げた無者の威圧で、チャラナンパ男をキッと睨む。
「はぎゃああああああぁぁぁあああぁぁああああああっっ!!!!??」
無者の威圧をまともに食らった三人組最後のチャラナンパ男は、これでもかというくらいに叫声を荒らげた後、さっき俺から無者の威圧を食らったチャラナンパ男よりも更に下半身を盛大にドバッと濡らすと、静かに仰向けでバタンと地面に倒れてそのまま気絶した。
「うぎゃぁぁぁあっ!?こいつもお漏らしかよっ!?エエ、エンガチョッ!エンガチョッ!バリバリアァァアッ!!バリアフリ~~~~ッッ!!!」
さっきの仲間と同じく地面を黄色の水で漏らすナンパチャラ男に、心愛が思いっきりドン引きした顔をしながら両方の人差し指で重ねてクロスを作ると、再び謎の言葉を何度も何度も連呼する。
「......あ、あれも朔夜の威圧のせい?」
「うん。少し威圧レベルを上げてみた♪」
「す、少しであれ......なの?」
亜依子は朔夜の言葉を聞き、今までの自分のやった行為に朔夜がキレなくて本当に良かったと心の底から安堵する。
「あ!?チャラナンパ三人組を煽る為、ふたりを抱いたままになっていた!?ゴ、ゴメン!い、今すぐ離れるからさっ!」
俺は亜依子や心愛を抱いたままになっている状態に気付くと、慌てて二人から離れようとする。
が、
「ううん。別にいいよ、このままでもぉ♪」
「構わんし♪」
亜依子も心愛も離れようとする俺の腕を力強くグッと掴み、腕を元の位置へと戻した。
「だってわたし達、彼氏彼女の間柄なんでしょ♪」
「そういう事だし、あーし達の彼氏さん♪あ、ついでにおっぱい触っとく?」
そして亜依子は顔を少し赤くし、心愛はニヤニヤした顔で抱き締めている俺の腕に胸をグイグイと押し当ててくる。
「はう!?ち、違うんだ!?こ、これは恵美の奴をナンパから追い払ういつもの手で......そ、それに彼氏と言ったのも、亜依子達の演技に乗っかったただけであって...それに心愛さん......ささ、流石に...人前でそれはちょっと......!それよりもさ、さっきから周囲の視線がめっちゃ刺さって痛いんでやっぱり離れようよぉ、ねっ!」
「うふふ。い・や・♪」
「くふふ。イヤだしぃ♪」
亜依子と心愛はお互いにニヒヒとした表情で、俺をいつもみたいに揶揄ってくる。
「......うぐ」
こうなった時の二人は全く話を聞いてはくれないので、俺は仕方がないと諦めた。
それからしばらく経った後、
数人のゲーセンの店員がここに慌ただしくやって来て、俺達にどういう経緯でこうなったのか、それを聞いてきた。
周囲が騒がしいので静かな場所スタッフルームに俺達は移動し、そこで何があったか、それをゲーセンの店員に説明する。
その結果、大変お騒がせして申し訳なかったとゲーセンの店員が謝罪すると、メダルゲームのメダルと交換の出来る券をお詫びとして俺達にくれた。
そしてこの騒ぎのせいで結局ゲームをする時間もなくなってしまい、俺達はゲーセンを出て家へと帰路するのだった。