086・ふ、懐かしいなこれ。
「あ、あいつら、またナンパされていやがる.........」
トイレから戻って亜依子達の待っている場所のちょっと手前まで辿り着くと、そこでチャラそうな男性三人組から亜依子と心愛がナンパされている姿が目に入ってきた。
まぁしょうがなくもあるのか。
亜依子も心愛も性格こそあれだが、見た目はめっちゃ可愛いからな。
そんな二人が揃ってこんな時間にいりゃ、ナンパもされちまうか。
「ハア、しかし面倒くさいことになったな。またあれを相手にしなきゃいけないのか......」
ああいう類いと会話をするのって、ホント心がドッと疲れるんだよなぁ。
俺は深い嘆息を吐いてこれはまた面倒な事になっているなと思いつつも、亜依子と心愛を放っておく訳にもいかず、やれやれと頭をガシガシ掻いた後、二人のいる場所へと早足で戻る。
「あっちにいけってヒドイなぁ~」
「そんなつれない事を言うなって~♪」
「きっと大人な俺らの方がキミらのその彼氏よりも、きっと満足させてやれると思うぜ♪」
「だから彼氏なんか放っておいて、俺達と楽しく遊ぼうぜ♪」
「「遊ぼうぜ~♪」」
「うわ、キモッ!吐き気がしてくるから、ホンマジで退場してくんない?」
「そんなしかめっ面をしないしない。折角の可愛い顔が台無しだぜ♪」
「それにそんな偏見な気持ちなんて俺らと付き合えば、すぅぐに最高で素敵ハッピーに変えてみせっからよ♪」
「そうそう、君らもハッピー、俺らもハッピーになろうぜ♪」
「うぐ...こ、こいつら全然めげないし、しつこい......っ!」
「朔夜はまだ戻って来ないのぉ~~っ!」
「んじゃま、そういう訳で俺達とデート決定♪」
「さあ!行こうぜ!」
「な!」
「ついて来ないと俺達、ちょこっと暴力に訴えちゃうかもしれな―――いだぁあ!?」
「―――やあやあ、お待たせしたね!亜依子、心愛♪キミ達の待ち人、彼氏さんのご帰還ですよ~♪」
「――わきゃ!」
「――なう!?」
俺は亜依子の腕を掴もうとしたチャラナンパの手を軽く弾き、そして亜依子と心愛を爽やか笑顔で自分の方へスッと抱き寄せる。
ふ、懐かしいなこれ。
恵美の時も、こうやってナンパ野郎からよく助けていたっけ?
「ハァン!なんだてめえは?」
「この二人は俺達の獲物だぞ!横取りするんじゃねえぞ!」
「無関係な奴がしゃしゃり出て俺達の邪魔すんな!」
突如現れた俺によってナンパを邪魔された、チャラナンパ三人組が揃って額に青筋を立てて怒りを露にする。
「いやいや、邪魔なのはあんらだと思うんだけど?こいつらと俺の会話を聞いてなかったのか?耳の聞こえが悪い連中らだな~。そんな耳の詰まったお前らに、もう一度言ってやるよ。俺とこいつらは彼氏彼女の間柄なのよ。つまりは邪魔者も無関係も全~部あんたら側って訳、オッケー?」
俺は恵美の時と同じく自分に危害が向くよう、少し大袈裟な煽り口調でチャラナンパ三人組を挑発していく。
「ハァ!嘘付くんじゃねぇよ!どう見てもてめえ、陰キャラじゃねぇか!」
「陰気くせえボッチ野郎がこんな可愛いギャル...しかもふたりも彼女になんて出来る訳ねえだろうがっ!」
「どうせ彼氏なんて嘘八百でよ、こいつらとは同級生か、はたまた軽~い知り合いとかか何かなんだろう?」
「陰キャラとギャル。相応の不釣り合いの時点で嘘とバレバレなんだよ!」
「どうせ大方、こいつらを助けたらワンチャンあるとか思って助けに入ったんだろうけど、陰キャラ風情を好きになる女なんていねぇっての!」
「くくくく!こいつ多分、女の言う優しい人が好きとかなんてのを真に受けていると思うぜ?あんなもん、女の逃げ口上だっていうのによ~!」
「そうそう!実際、女どもは影のある不良や俺らみたいなチャラい人種が大好物なんだってのっ!てめえみたいな陰キャラお呼びじゃないんだよ!」
冴えない陰キャラに煽られ、挑発されたのが余程イラついたのか、チャラナンパ三人組が息する暇もない早口で、自分の持論を次々と俺に浴びせてくる。