084・やらないんか~いっ!!
「え!?し、しまった――きゃああああああっ!!!」
AI人形の放った攻撃スキルをまともに食らってしまった香織がその衝撃で空を舞い、そしてさっきやられた玄太と宗一郎と同様に地面をゴロゴロと転がっていく。
『ピーッ!プレイヤー戦闘不能により、ゲーム終了ッ!!』
残った香織も戦闘続行不可能と判断されると、ゲーム終了を告げるアナウンスが流れる。
「うわ!?な、なんだよ、あのシールドビーム!?」
「あんなパターンもあるのかよ!」
「あのゲーム、一体どれだけのパターンが仕込んであるのかしら!?」
「っていうか、プレイヤーを勝たせる気が無さ過ぎるわ!」
「だ、だよな。俺じゃ絶対勝てねえよ......」
ゲームを見ていたやじ馬達から、驚きの声や不満の声などが飛び交う。
「な、何か俺が想像していた物よりも、かなりスペックのあるゲームだな、あれ?でもこんな凄いゲームをここに置くには、ちょっとコストとか色々掛かり過ぎないか?稼ぎよりも出費の方が多い気がするぞ、あのゲーム?」
「その心配はご無用だよ、朔夜。何せこのゲームに掛かる経費の負担って決闘ギルドが殆ど出しているしねぇ」
「そうそう。確か決闘ギルドが、ゲーセンなら血気盛んな若者が多く集まるから~とか言って、これを作ったんだっけか?」
俺の素朴な疑問に、亜依子と心愛が答えを返してくれる。
「なるほど。つまりこの戦闘アタックバトルってゲームは、クリアした優秀な連中を決闘ギルドがスカウトとかして、他のギルドよりも勢力や権力を増やそうって算段で作られたゲームって事か?」
「多分それが目的なのは間違いないと思うよ。っていうかそれが目的でしょうね。この戦闘アタックバトルで決闘ギルドからスカウトされた連中は事実多いし、そしてスカウトされた連中はギルドでの扱いが優遇されたり、ランクアップにも便宜をはかってくれたりするみたいだしねぇ?」
「へぇ、このゲームでスカウトされると、そんな特典が付くんだ?」
「さっきのプレイヤー達もあの気合い振りを見るに、恐らく決闘ギルドからスカウトされる事が目的だったと思うし♪ま、ボロ負けしちゃったけど♪」
「そりゃま、そんな特典が付くんだ。さっきのプレイヤー達も必死になって頑張るよ!」
誰だって優遇をされないよりも、優遇された方がいいもんな。
「なるほどね。このゲーム...戦闘アタックバトルが人気ってのも頷けたよ!」
亜依子と心愛の説明で、俺はこのゲームの人気に納得する。
しかし目の付けどころが中々いいじゃん、決闘ギルドのやつめ。
ゲーセンに来る連中って、意外に好戦的な奴が多いからな。
俺はこのゲーセンの格闘ゲームに熱くなっている連中や、恵美の奴をナンパしようとしていた連中の事を思い出す。
「まぁでも、俺は決闘ギルドに入るつもりは更々ないので、金を払ってまでこのゲームをやる気はないんだけどね~っ♪」
俺はそう言いながら、ケラケラと笑う。
「はあぁあ!?ここまで色々説明をさせといてやらないんか~いっ!!」
「いや、やれしっ!!」
だって~こんなゲームをやったら、確実に目立つ事この上ないじゃん!
かといって、金を払っているのにワザと負けるのも何か違うと
思うし。
「それにあのゲームをやるには、ちょいと時間も足りないようだしな!」
俺はそう言うと、腕時計に目を移す。
「あ、ホントだ。朔夜くんの言うように、今からあのゲームをやるとなると日が完全に落ちちゃうか......」
心愛も携帯電話で現在の時間を確認し、更に戦闘アタックバトルに並んでいる長蛇の列を見て、俺の意見に同意する。
「あれはパッと見ても、二時間以上は掛かっちゃいそうだよね......」
亜依子も同じく戦闘アタックバトルに並んでいる長蛇の列を見て、苦笑いをこぼしながら二人の意見に同意する。
「んじゃ変わりに何をするよ?まだ帰るには少~し時間が余っちゃってるし?ねえ亜依子、この時間内で出来るゲームって何かある?」
「う~ん、そうだな......残り時間を考えるとなると.........」
亜依子が首を傾げて何が良いかとしばらく思考した後、
「あ!あれなんて、どうかなぁっ!」
とある場所を人差し指でスッと差す。