081・普通の写真じゃつまんないし!
「いやいや。ゲーセンに来ているんだぞ!ならさ、まずはこいつ、ゲーセンキャッチャーに何が配信されているか、その物色は基本だと思うんですけど!」
俺は鼻息荒く亜依子と心愛を諭す様に話ながら、ゲーセンキャッチャーを手でトントンと叩く。
「ハァ~これだから、陰キャラは......」
「今はあーしらとデート中なんだから、こっちに合わせろしっ!」
亜依子と心愛はそう言うと俺の腕を力強くグイッと掴み、奥にある色々な加工が出来る写真の取れる機体が設置されているコーナーへ、ズルズルと引きずって行く。
「ノォオォォオッ!?俺のマイエンジェルが離れて行くぅぅぅぅううっ!!」
「マイエンジェルはここにいるっしょ、朔夜くん!」
「そうそう。あんなのより、わたし達の方がいいでしょう?」
「いや、お前達よりフィギュアの方が――――」
「――んんっっ?」
「――はいっっ?」
お前達よりフィギュアの方が良い、そう言いかけた瞬間、亜依子と心愛が眼力を鋭くしてこちらをジロッと睨む。
「いや...な、何でもないです。たは、たはは......」
そんな二人の反応を見て、これは言ったら確実に荒れると、あっちの世界で学んだ経験がいち早く反応し、俺は言いかけた言葉を口の中へグッと引っ込め、苦笑いでその場を誤魔化す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「きゃはは♪なにこの朔夜の顔~めっちゃウケる♪」
「おい、心愛!これはいくらなんでも目を大きくし過ぎだろ!?この大きさ、マンガキャラの瞳よりヒドイじゃんか!それに加えてこの長いまつ毛もヒドイ!そして留めと言わんばかりに髪いっぱいに盛られたこの沢山の髪飾りも!」
俺はこれでもかというくらいに大きくされた目や、眉毛まで届いている長いまつ毛、そして髪には様々な髪飾りが飾られている自分の完成写真に眉をヒクヒクさせてしまう。
「ノンノン、何を言うとるのかね朔夜くん。ただ普通に写した写真なんてマジつまんねぇじゃんさ~!こういうものはね、加工を過剰にしてこそ醍醐味があると思うんだよ、あーしはさ!」
不満を露にしている俺に、心愛がやれやれというポーズをしつつ、撮った写真を如何に楽しく面白くするかを説く。
「うぐ......た、確かに心愛の言う通りかもしれな―――」
「――しかし心愛、こいつは流石に加工し過ぎだぞ。もはや朔夜の原型をとどめていないじゃないか!」
「な、なぬ!って事は、やっぱ俺の愚痴は正しかったって事かっ!」
「あはは、バレたか♪でもちょこっとだけ過剰にやっちまっただけで、別にこの加工事態はそこまで変な行動でもないし。そもそもこのセスフォトは写した写真をおもしろ可笑しく加工して遊ぶ為のものだし♪であるならば、普通にハイチーズの写真では全然面楽しくないじゃん!違う?」
心愛が写真を撮る機体『プリンセス・フォトグラフィ』
通称『セスフォト』をドヤ顔でトントンと叩く。
「くふふ♪さて朔夜くんを見事論破した所で......次は何のゲームをしよっか?何かいい案ある亜依子?」
「う~んそうだねぇ......あ!あれがいいんじゃないか、心愛?
丁度、朔夜もいる事だしさぁ♪」
「おお!良いものに目を着けたじゃん、亜依子!うんうん。朔夜くんがいたら、もしかしたらイケるやもしれんね♪」
亜依子の指差した箇所に心愛が目線を移すと、なるほどと頷いて納得する。
「ん?俺がいたから丁度良い?イケるかも?」
亜依子と心愛が何を見て頷き合っているのか、それが気になった俺は目線を二人の見ていた先に向ける。
「......えっと、決闘ギルド公式......『戦闘アタックバトル』?」
なんじゃ、戦闘アタックバトルって?
「それに決闘ギルド公式?ギルドって、冒険ギルドの他にもあるのか?」
「あれ、朔夜?ひょっとして冒険ギルド以外のギルドの事を知らなかったの?」
「はは、恥ずかしながら......」
何せ、冒険ギルドの事も最近知ったばかりだしな。
「ギルドはね。冒険ギルドを踏めて四つ存在するんだよ!」
「え?そんなにあるの?ギルドって!?」
「そこも知らないんだ?よし!それならわたしが分かる範囲で四つのギルドの事を朔夜に説明してあげるよ♪コホン!まず最初は......」
亜依子が軽く咳払いをした後、俺の知らなかった冒険ギルドとは違う他のギルドの説明に入っていく。