080・久しぶりのゲーセン
「ええ~!そんな言い方をされたら、めちゃめちゃ気になるじゃんかっ!」
「だよだよ~!頼むから教えてよ~朔夜く~んっ!」
「真面目委員長には絶対にバレないようにするからさぁ~っ!」
「駄目です......モグモグ」
手を合わせて嘆願してくる、隅田や心愛や亜依子の顔をチラッと見てそう言い放つと、手に持っていた唐揚げを口に加えて食べ始める。
「ふう、お腹いっぱいだ!もう食えない......」
俺はゲプと息を吐いて、少し出た腹をポンポンと叩く。
「くそ、何も聞き出せなかった......」
「意外に頑固だし、朔夜くん......」
「こ、ここまで言っても教えてくれないとは......」
懸命に理緒さんとの事を聞き出そうと躍起になっていた隅田や
心愛達だったが、しかし結局俺から何も聞き出せず、テーブルに身を倒して力尽きてしまう。
「ふう、さて!時間も時間だし、そろそろ帰ろっか!」
「え?ちょっとストップ、朔夜くんっ!」
「はぐ!?」
「まだ帰るのは早いって!」
「そうそう!まだ六時前だよ?なので、今からゲーセン行こ、ゲーセン♪」
「ゲ、ゲーセン......」
久しぶりに耳に聞いたな、この単語。
あっちの世界に行く前は、よくゲーセンに行っていたなぁ。
主に恵美と。
因みに、ここ...マドサイには恵美とはあまり来た事がない。
ほら、ここって学生が多いだろ?
だからここに来ると恵美の奴が毎度ナンパをされてしまうのだ。
その度、チャラい陽キャラや不良を相手にしなきゃいけなかったのでホント面倒くさかった。
時には蔑まれたり、時には暴力行使をしてきたりと、食い物を食っている時間が殆どなかったくらいにナンパが起きていた。
あいつ、超が付くほど美人だったからな。
......性格はクソ以下だったけどっ!
「で、どうする朔夜?」
「勿論行くよね?行くっしょ?行くしかないよねぇ~?」
「あ、ああ。そ、そうだな......」
しかしゲーセンに行ったら、恵美との思い出を思い出してしまいそうだしなぁ。
でもあの場所は嫌いじゃないし、あいつ抜きでもよく行っていた場所だ。
なので、
「よ、よし...行ってみるか、久しぶりのゲーセン!」
「やった!朔夜ならそう言ってくれると思ったよ!ではデートの続きを再開だねぇ♪」
「うっし!善は急げだし、行こ行こ♪ってな訳で隅田、それらの処分任せたし♪お礼としてあーしらのスプーンやストローとか持って帰ってもいいぞ、くふふ♪」
心愛がニヤニヤした顔でテーブル上のハンバーガーを包んでいた紙、飲み終えたジュースやアイスのカップ、そして自分と亜依子の使用したスプーンやストローに指を差す。
「だ、誰が持って帰るかっ!でも安心しろ。ちゃんとこのゴミは片付けておくからよ!」
「ん?お前は行かないのか、隅田?」
「お前らのイチャイチャハーレムを横で見ていたくないんでね。それにこれ以上、そいつらの陽キャラパワーに身体が持たなそうだ......」
隅田の顔色を見ると、確かに具合が悪そうな色に変わっていた。
「そ、そっか。それじゃ隅田。また学校でな!」
「バイバイ♪」
「じゃねぇ~♪」
俺達は隅田に別れの言葉を掛けると、ゲーセンに移動する。
マドサイで隅田と別れてから数十分後。
ゲーセンに到着辿した俺達は、早速とばかりにゲーセンの中へと入って行く。
「おお、おおお!こ、こ、このフィギュアはっ!?俺の大好きなあのアニメ、天使娘アイナースのフィギュアじゃねぇかっ!?」
ゲーセンの中に入った俺は、入り口付近に設置されていた、アームで商品を掴んで穴に落としゲットするゲーム、ゲーセンキャッチャーのある場所で足を止め、そのゲーセンキャッチャーに配信されていたフィギュアに目を奪われていた。
「このキャラって妹の成美に似ているから、めっちゃお気に入りのヒロインなんだよなぁ♪しっかしこの配置はかなりの激難だな?一回では無理として、五回、六回で取るのも厳しいぞ、この配置?っていうか、十回でもゲット出来る想像が全然つかないんですけど!?」
俺は真剣な眼差しで真上や真横と、ガラス内に配信されている欲しいフィギュアを各角度から見ていく。
「だがこれはゲットしないと、俺の妹への愛が疑われてしま――――はぐ!?」
「こら、朔夜!デート中にそんなもんに目を奪われるんじゃないのっ!」
「その行動は流石にドン引きだぞ、朔夜くん?」
俺の後ろにいた亜依子と心愛が呆れ顔でそう言うと、自分達の方へと俺をグイと引っ張る。