074・西城亜依子と風見心愛
「いや~~しっかし、凄かったねぇ~さっきの動き!わたしマジビックリしちゃったよぉ!恵美の奴には聞いてはいたんだけどさぁ、あんたって本当に強かったんだねぇっ!」
「うんうん。恵美ちゃんの過大評価だと思っていたよ~♪」
目の前の女性二人こと、西城と風見がキラキラと瞳を輝かせ、俺の強さに感動している。
「あはは...あの浮、コホン!恵美を好きだっていう連中の暴走からあいつの身は勿論のこと、俺の身も守らないといけなかったからね。だから必死になって身体を鍛えたんだよ!」
なので異世界抜きでも、このレベルの不良は軽く屠れる。
「ああ、なるほどねぇ。確かに「あんな陰キャラ野郎なんかよりも俺の方が恵美さんには相応しい!」とか宣っていた連中、結構多かったもんな......」
「そうそう。あーし達のとこにも「あの陰キャラ野郎が恵美さんと付き合うなんて!きっと弱味か何かを握られて無理やり付き合わされているんじゃ!」とか聞いくる連中も沢山いたっけか?」
当時の状況を思い出し、西城と風見の二人が苦笑をこぼしている。
「はは、そんなふざけた事を抜かす連中は俺んとこにもいっぱい来たよ♪そうそう、ふざけたで思い出したんだが、あいつの姿がどこにも見当たらないが、あいつとは今日一緒じゃなかったのかい?」
こいつら、放課後はあのウザ絡みイケメンとよく一緒につるんで遊んでいた記憶があったんだが?
「ん?あいつ?」
「え、えっと、ウザ絡みイケメ...じゃなく、古、古......」
「あ、もしかして古島の事?」
「そうそう!古島!あいついつもキミ達と一緒に行動していたからさ。いないのは珍しいなぁと思ってね?」
「あの古島のクソ野郎はいた事はいたんだけど、そいつらに絡まれた直後、一目散にわたし達を置いて逃げて行ったよ......」
「はぁ!?キミ達を置いて逃げていったぁぁあっ?」
怒りで眉をヒクヒクとさせながら言う西城の言葉に、俺は目を丸くして「嘘だろ!?」と驚いてしまう。
「わたし達と古島で遊びに行く途中、そいつらから絡まれたんだけどさ。あのクズめ!そいつらに軽~く小突かれただけでビビりまくってさ!」
「でその後、腰を抜かした身体であたふたパニックしながら、振り向く事もなく、あーしらを置き去りにして脱兎の如く逃げ出しやがったんだよ!ホンットあの野郎!最低最悪のクズ野郎だよねぇ~っ!!」
「マ、マジかよ...あいつ......」
古島の野郎、クラスではあんなにイキり捲っていた癖に......
今日の朝、俺にニヤニヤした顔であんなにイキッてウザ絡みをしていたイケメン野郎こと古島の事を思い出し、心から呆れてしまう。
「......って事はこいつら、別にキミ達の友達でも知り合いでもないんだね?」
俺はそこに転がって気絶している不良三人に目を移し、ふたりにそう問うと、
「冗談!」
「こんな連中、知り合いでもゴメンだよ~!」
西城と風見の二人が首を左右に何度も振って、嫌悪感全開の表情で俺の問いに否定の言葉を返す。
「そっか、それなら良かったよ。もしそいつらがキミ達の仲間とかだったら、こんな目に合わせちゃった事に少しだけ気が咎めちゃう所だったからさ!」
「そいつら仲間どころか、マジクソの強姦野郎だしっ!だから光野くんが気を咎める必要なんて全然ないしっ!」
「そうそう。ホント助かったよ、光野!もしも光野がここに来なかったかと想像するとゾッとするわ......うう」
「あーしだってしばらく立ち直れず、家の中に引き込もってたと思う......ぶるぶるぶる!」
二人は俺の来ないもしもの事を想像したのか、顔を青くしてブルブルと震えている。
どうやら、本当に二人とも危機一髪だったようだな。
「そういう事なら道に迷って結果オーライだったよ。だってキミ達の危機に駆け付ける事が出来た訳だしね♪」
俺はそう言うと、安堵の込もった笑顔をクスッとこぼす。
「――はう!?」
「――なう!?」
その笑顔を見て、西城と風見の頬が赤く染まっていく。