073・こいつらの頭の中の構造
「ちょっと!?いきなり攻撃は物騒ですよ!少しだけでもいいんで、大人しくしててもらえますか?」
「な!ふざけんな!何が大人しくしてて―――だべろっ!?」
殴り掛かろうとしている不良の拳を軽く弾いた後、相手の口を閉ざす為、土手っ腹に手加減した蹴りを叩き込む。
あ、ヤベ!ちょっと加減を間違えた!?
「でもまぁ。いきなりこいつから殴り掛かって来たんだし、正当防衛だよな?」
「ま、政雄!?て、てめえっ!よくも政雄をやりやがったなぁぁああ!」
「自分達から攻撃してきた癖に、やりやがったなって......」
盗賊といい、ならず者といい、
何でこういう連中って、我が儘で自分勝手なルールなんだろうな?
あっちの世界にも存在した、こいつらに似た連中の事を思い出した俺は、それに対して呆れていると、
「くたばれぇぇえっ!陰キャラァァァァァアッ!!」
仲間がやられた事で頭に血がのぼり、顔中を真っ赤にさせた金髪の細マッチョ不良が、右手を大きく振り上げて俺を殴ろうと物凄い勢いで突進して来る。
だが、
そんな金髪の細マッチョ不良の突進を俺はひょいと軽くジャンプで躱す。
「はぁぁぁあ!?な、何だ、そのジャンプ力は!?クソがぁぁぁあっ!逃げんじゃ―――――ぐがは!?」
そしてジャンプしたと同時に大きく振り上げていた右足を、金髪の細マッチョ不良の頭に目掛け、ドンと叩き落とした。
「と、智則!?ば、ば、ば、馬鹿な!?こ、こいつらがこうも簡単にやられちまうだなんて......っ!?」
一撃でノックダウンされた自分の仲間達を見て、残ったリーゼント頭の不良男性が唖然とした顔でヨロヨロと後退りしてしまう。
「これで俺には敵わないって分かったでしょう?ならもう俺の邪魔をしないで下さい、いいですねっ!」
そんなリーゼント頭の不良男性に向かって、人差し指をビシッと突き付けると、俺は軽い威圧を掛けてそう忠告する。
「ク、クソがぁぁぁああああっ!じょ、冗談じゃねぇぇええぇえっ!こ、こんな根暗ガキのひょろひょろした野郎にぃぃい、ナメられたままでいられるかぁああぁぁぁあああっ!!」
恐怖より安っぽいプライドが勝ったのか、リーゼント頭の不良が怒りを露わにして叫声を荒らげると、ポケットからナイフをスッと取り出し、刃先をこちらに向けてくる。
「......はぁ、やれやれ。上から目線でイキっていた癖に、この程度の反撃でナイフを持ち出すとは......」
「て、てめぇぇええっ!その憐れみの顔をやめやがれえぇぇぇえっ!根暗ガキの分際で生意気なんだよぉぉぉぉおおっ!!」
俺の憐れむ顔を見て、益々怒り出すリーゼント頭の不良が、ナイフを振り回しながら突撃して来る。
「こ、この!このこのこのこのこのぉぉぉぉぉおおっ!!」
リーゼント頭の不良が怒りに任せてナイフを上や下、右に左に振って攻撃してくるが、しかし俺はそれをひょひょいっと意図も容易く躱し続ける。
「ぜえ...ぜえ......何故だ、何で陰キャラの根暗ガキ風情に、俺の...俺の攻撃が...ぜ、全然...あ、当たらねぇんだ―――げばぁ!!?」
「......隙を見せ過ぎだろ?」
リーゼント頭の不良が疲れと油断で見せた隙を狙い、俺は拳で相手の顔面を小突く様に叩く。
「あが...ぁあ......お、俺がこんな...陰キャラ如...きに......ぐはが!!」
リーゼント頭の不良が無念の言葉を震える口で洩らすと、白目を剥き、そしてその場にバタンと大きな音を立てて崩れ落ちた。
「ふう...ホント、こいつら不良や陽キャラ連中って無駄にプライドが高い上、人の話を全く聞かないな......」
意味の分からん理不尽な理由で、陰キャラを見下してくるわ。
そっちがタメ語で喋ってきやがる癖に、
陰キャラがタメ語で返したら、いきなり不機嫌しやがるわ。
そっちが聞いてきたから素直に答えたってのに、
同じくいきなり不機嫌しやがるわ。
マジでこいつらの喜怒哀楽のスイッチが陰キャラには意味不明なんだけど!
「ホントこいつらの頭の構造が一体どうなっているのか、一回頭の中を覗いて見たいわ......」
襲い掛かってきた不良達をジト目の表情で見つつ、俺は深い嘆息を吐く。
「......まぁいい。手加減の練習相手には丁度良かったしな。おっと、それよりも!コ、コホン!えっと...そ、それじゃ、そこのお二人さん。改めてお尋ねしたんですが、ここって一体どこなんでしょ――――」
「―――あ、あんた。こ、光野...だよ...ねぇ?」
「へ?な、なんで俺の名前を知って......なあっ!!?キ、キキ、キミは西城さんっ!!?」
「おっと、あーしもいるぞ~光野くん♪」
「はあ!か、風見さんもっ!!?」
道を尋ねようとしていたギャル二人組は、俺の事をいつも揶揄っていた恵美の親友、その二人組だった。