072・不良三人とギャル二人
――時は現在に戻り、ここはとある路地裏――
「こ、ここは......一体どこだ???」
俺はマドサイに向かって駆けて行ったつもりでいたのだが、完全に道に迷っていた。
「ど、どう見てもあまり人が通らなそうな路地だな、ここ......」
ま、まぁいい。
「ここいら一体をブラブラ歩いて周っていれば記憶にある道に
出くわすかもしれんしな!」
俺は戸惑い顔をこぼしつつ、正解の道を求めて周囲をウロウロと彷徨い歩く。
――彷徨い歩くこと数分後――
「ぜ、全然見覚えにない......」
歩けども歩けども、俺の記憶にない道が続く。
「あ、あれ?おっかしいな?」
ひょっとしてあの大通りにあった、一番最初の道から右に曲がるべきだったのか?
「いや違うな。あの道は公園通りに抜ける道だったはずだ」
だ、だったら次の曲がる道を間違えたか?
首を傾げて昔の記憶を呼び戻そうとするのだが、
しかしマドサイに行く為の通路の順番が朧気にしか浮かんでこなかった。
「......マドサイには学校帰りに結構な数で道草していた場所だから、頭が道順を覚えているもんだと思ったんだが」
こっちの平和だった記憶なんて、あっちの世界では吹き飛ぶような殺伐した生活だったから、記憶が薄れていても仕方がないといえば仕方がないか。
「しかしこうなるんだったら、隅田を置いて先に教室を出なければよかったぜ......」
今さらながら俺は隅田と一緒にくればよかったと、物凄く反省と後悔をしてしまう。
「く......こうなればスキルを使って思いっきり真上にジャンプし、空から全体を見渡せてみるか?そうすれば、ここがどこなのかマドサイがある場所が分かるかも知れな―――」
――いやいや、駄目駄目だ。
もしそれを誰かに見られてしまったら、目立つ事この上ない。
「な、なら...どうする?こうなったら開き直ってこのまま引き返さず、人通りの多い場所に出るまで突き進んでみるか?それとも素直に今来た道を引き返した方がいいか?」
俺はこの後の行動をどうするべきか、あれこれ悩んでいると、
「ん?こ、これは...人の気配!?」
俺は人の気配がした方角に顔を向ける。
い、いた!
今いる道の一番奥通りに人らしき影を見つける。
一、二、三人か?
いや、その奥に二人いるから五人か?
「うおお!ラッキー!お~~~い、すいませ~~~んっ!!」
俺はその人らしき者に道を尋ねるべく、スタタと早足で駆けて行く。
「あ、あのすいませ~ん、ちょっと良いですか?あなた方にお尋ねしたい事がある...ん...で......す.........があっ!?」
人らしき者のいる場所に辿り着いた俺は、早速とばかりにマドサイの場所を尋ねようと口を開いた瞬間、そこではギャルっぽい二人の女性と厳つい顔をした不良らしき男性三人組がいた。
「はああんっ!なんだ、てめえはっ!!」
「見て分かんねぇか、クソガキ!俺達は急がしいんだよっ!てめえみたいな根暗が俺達に話しかけてくんじゃねぇよっ!」
「俺達が大人しい内に、さっさとあっちへ行きやがれっ!しっしっ!」
厳つい顔をした不良男性三人が俺に気付くと、露骨に嫌そうな顔をして俺に鋭い眼光を向けて睨み付けながら、喧嘩腰の言葉を次々に放ってくる。
......しくった。
こいつら、どう見ても不良ですって連中じゃん。
やっと見つけた希望が、よりによっても面倒な連中とは。
取り敢えず、こいつらから因縁を付けられる前に聞きたい事を聞いてさっさとここから離脱しよう。
...って、もう半分以上付けられているけどな。
「......コホン!え、えっと...すいませ~ん。ちょ~っとばかり尋ねたい事があるんですが、よ、よろしいでしょか......ね?」
俺は面倒な連中に声を掛けてしまったと思いつつ、相手の怒りを買わないように笑顔を崩さず、低腰の体勢で目の前不にいる良連中にマドサイのある場所を尋ねる。
が、
「この状況でその態度......てめえ、オレ達を馬鹿にしてるようだなっ!」
「クソが!なめてんじゃねぇぞ、陰キャラ風情がよっ!」
「痛い目を見たくなかったら、さっさと尻尾巻いて失せやがれやっ!」
厳つい不良男性達は俺の質問を全く聞く耳持たず、怒りを露にした表情でここから消えろと威圧してくる。
「いや...そうは言われましてもこっちも迷子から脱出したいんですよ。あ!でしたら、そっちの女性お二人にお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
俺はこいつらじゃ埒があかんと思い、近くにいるギャル二人に焦点を変えて声を掛ける。
すると、
「て、てめえっ!勝手にそいつらに近づくんじゃねぇぇえっ!ぶち殺されてぇえかぁああっ!!」
厳つい顔をした不良男性三人の一人が、苛立ち全開の顔をして叫声を放ち、俺を殴ろうと拳を大きく振り上げて襲い掛かってきた。