069・陰キャラのお友達?
「なぁなぁ、光野。ちょっといいか?」
後ろの席の男子生徒が、俺の背中を人差し指でちょんちょんと叩き、小さな声で俺に話し掛けてきた。
「............?」
そんな男子生徒を俺が「こいつ...誰だっけ?」という訝しんだ表情でジロリと睨むように見ていると、
「ちょ!光野さん!な、何でそんな疑わしいものを見る目で俺の事を見てくるんですかねっ!?」
俺に話し掛けてきた男子生徒が、目を大きく見開いた表情でオロオロと動揺を露にする。
「え、えっと...もしかしてキミ。お、俺と友達なの...かな?」
「何故、疑問系っ!?」
「...............」
「はう!?まだ疑いの目を向けらっしゃる!?何なの、その心を全く開いていないお顔は!?う、嘘だよねっ!?俺の事、揶揄っているだけなんだよねっ!?」
未だに目の前の男子生徒を思い出せない俺は、ジト目の訝しんだ表情を崩さずに睨んでいると、男子生徒がさっきよりも更に動揺したビックリ表情で「冗談だよな?」と狼狽えを見せる。
「いやいや!お、俺達、休み時間や放課後の帰り道で、まぁまぁ一緒にダベっていた仲じゃんっ!それは世間一般ではお友達と言うんじゃなかろうかねっ!?だ、だからそのこいつ誰だっていう訝しむ目をやめてくんないかなぁぁっ!?」
未だに男子生徒の事を知らないと疑う俺に対し、めっちゃ早口で必死な口調にて友達エピソードを語ってくる。
「休み時間に放課後...?あ、ああ...っ!お、思い出した!お前は確かお、大田...そう!大田尚斗かっ!」
「ちげぇよ!大田はあれだ、あれっ!あの短い髪型の少し小肥りの奴っ!」
「え?違った!?え、えっと...そうだ!ほ、細井!細井安男だっ!」
「それも違うわ!細井はあのヒョロガリ体型の奴だっ!!」
名前を間違えられた気安い男子生徒が、おいっという表情で本物の大田尚斗と細井安男に人差し指をビシッと突き差す。
「俺は隅田だっ!隅田徹平っ!」
「隅田...隅田......ああっ!はいはい、何か記憶にあるっ!確か放課後、たまにだけど一緒に寄り道をして遊んでいた、あのっ!」
俺はハッと閃いて手のひらを拳でポンと叩くと、やっと目の前の気安い男子生徒こと、隅田徹平の事を朧気だがやっと思い出す。
まぁ遊んだと言っても、放課後の帰り道にこいつと出会った際、半ば強引な感じで遊びに連れて行かれただけだけどな。
「き、記憶にあるって...それって勿論ボケ......なんだよな?だって俺達、結構楽しく語り合った仲じゃんさっ!?」
隅田が困惑と戸惑った表情で俺を見てくる。
いやいや、全然楽しく語り合っていませんけど?
あれはどう見ても、お前の一方的な語らいだったんですけど?
でもそっか...いつもペラペラと喋ってきて鬱陶しかったクラスメイトはこいつだったのか。
俺はてっきり、あのウザ絡みイケメン野郎とばかり思っていたよ。
「......まだ突っ込み足りないが、今は後回しにして置くとしておこう。コホン!で、改めて光野、お前に聞きたい事があるっ!」
隅田はまだ納得いかないという顔をしているが、取り敢えずそれは横に置いておき、自分の聞きたかった話へと切り替える。
「え?お、俺に聞きたい事?」
「ああ!お前一体いつの間にクラスのマドンナとあんなに親しい仲になったんだよっ!」
「マドンナ?親しい...仲??」
「ええい!またハテナ顔かよっ!さっき華宮さんと親し~い感じで教室から出て行き、そして親しーい感じで帰って来たじゃねぇかよっ!」
あ、ああ、はいはい。マドンナって理緒さんの事か。
「えっと...そ、それはだな......」
「それは?」
「な、何と説明していいのか、あまり話したくないと言うか......」
「却下するっ!さぁさぁ!包み隠さず、華宮さんの事を洗いざらい話してもらおう――――」
キ~ンコ~ン、カ~ンコ~ン。
隅田が血相を変えた表情で机から身を乗り出した瞬間、次の授業を開始するチャイムの音が教室内に鳴り響いた。




