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065・何かの黒い手帳


「............」


自分の席に座った俺は、目の前の女子生徒を改めてチラッと見る。


うひぁぁぁああっ!?


や、やや、やっぱり、どこをどう見ても今朝の女子生徒だっ!?


いくら目を凝らして見ようとも、角度を変えて見ようとも、目をグッと瞑って後パッと見開いて見ようとも、やはり今日の朝にあの残念イケメンから助けたあの女子生徒だった。


ま、まさか同じクラスだったなんて......


で、でも忘れていてもしょうがないよね。


だってあれだけ鬱陶しく絡まれていたあいつらの事もスッカリ忘れていたくらいだぞ、俺ってば。


だというのに、殆ど顔を見て喋った事のない...あの子の可愛さを見るに、きっとクラスのカーストトップグループの一人に君臨しているであろう女子の事なんて、


五年半もの時が過ぎ去った陰キャラの記憶に残っている訳ない。


......ああでも、


今のやりとりと委員長というキーワードで、朧気だけど少し思い出したよ。


確かクラスの輪をいつも乱していたあいつら三人を、よく説教や注意をしていたのはこの子だったっけ?


場の空気を読まず、毎度毎度どんちゃん騒ぎをやっていたあいつらをよく注意と説教をしていた女子生徒がこの子だったよなと、うっすらした記憶の中にちょっと甦ってきた。


......まぁいい。


今はそんなどうでも良い昔話よりも、こっちの問題だ。


俺の正体...この子にバレて......いない......よ...ね!?


だ、だってちゃんと認識阻害の魔法を発動させていたもん、俺!


あっちの世界でも一度も発動を失敗したり、怠った事なかったしさ!


う、うん。そ、そうだよっ!


だから絶対、この子に俺の正体がバレてるなんて事はないないっ!


あはは。もう焦る必要なんてなかった―――


「あっ!そうそう!光野君、これ...落としたでしょう?はい♪」


「―――よぉおっ!?」


阻害魔法を発動させていたんだからバレる訳ないと安堵したその瞬間、目の前の女子生徒がポケットから何かの黒い手帳をスッと取り出し、それをニコッと微笑む笑顔で俺に手渡してきた。


「なぁあっ!?こ、ここ、これは!?お、お、俺の生徒...手帳じゃん!?なな、な、なんでキミがこれを持っているのっ!?」



――――ハッ!?



ま、まま、まさか!?


あの現場で落としちゃったのかぁぁあっ!?


「え、えっと...つ、つかぬ事をお聞きしますが、こ、これを一体...ど、どこで...お拾ろい...なさった...の...でしょ...か.....?」


俺はその仮説を確かめるべく、目の前の女子生徒に顔をゆっくり向け、それを恐る恐る聞く。


「ふふ♪さて~『どこ』でだと思います♪」


だが女子生徒はニコニコした表情で、俺の話をはぐらかす。


「それよりも光野君......」


動揺を未だ隠せない俺に女子生徒がスッと静かに近寄って来ると、口を俺の耳元近くに持ってくる。


「朝のお礼も兼ねて光野君と色々お話したいからさ、昼休みの時間に開けておいて下さいね♪」


そして女子生徒が周囲には聞こえないくらいの小さい声で楽しげにそう言った後、足取り軽く自分の席へと歩いて行くのだった。


「......うん。これはどう見てもバレてるな......はは...」


自分の席に帰っていく女子生徒の後ろ姿を見て、俺は軽く苦笑いをこぼす。



―――それから何事もなく授業は進み、昼間休みの時間がやってきた。



「ここならゆっくりとお話が出来そうだね、光野君♪」


昼間休みに入ると同時に俺は今朝助けた女子生徒に素早く捕縛され、教室から中庭へと移動していた。


「それじゃ光野君。このまま立っているのもなんだし、取り敢えずはここの長椅子に座りましょうか♪」


「は、はい。そ、そうですね......」


俺は言われるまま、目の前にあるベンチに女子生徒と一緒に腰を下ろす。


そしてその後、彼女は俺の方に顔を向けると、


「こ、光野君!朝方の件、本当にありがとうございましたっ!お陰様で何事もなく無事に済みましたっ!」


にこやかな表情を真面目な表情に変えて、心からの感謝の言葉を告げて頭を深々と下げる。


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