064・見覚えのある女子生徒
......くくく。
くたばれやあぁぁぁあぁぁぁぁああっ!!
俺は心の中でそう叫びながら、ウザ絡みイケメン野郎の頭上目掛けて拳を思いっきり降り下ろ―――
「―――こらぁぁあ!あなた達っ!また私の目を盗んで光野君の事を揶揄っていたわねぇえっ!!」
俺の拳がウザ絡みイケメン野郎の頭上に当たる寸での所で、教室のドアがガラッという音と共に開き、そして天使の輪がキラキラと美しく輝く長い髪の女子生徒がその黒髪を靡かせ、俺と陽キャラ三人の下に早足でツカツカと近づいてくる。
ちっ!誰だよ、もうっ!
俺は邪魔が入ったとばかりに軽く舌打ちをすると、イケメン野郎の頭上に目掛けて振り下ろそうとしていた拳を慌てて戻す。
おのれぇぇぇぇえっ!
一体どこのどいつだっ!!
俺の邪魔をしや...がった......奴...は――――――なっ!?
うえ、うえぇぇぇえ―――――う、うう、嘘ぉぉぉおぉっ!?
こ、ここ、こ、この子はぁぁぁぁああ―――――っ!?!?
俺の邪魔をしてくれた人物に余計な事をと恨み節な顔を向けると、そこには朝の登校時、変態イケメン達から助けてあげたあの女子生徒が凛々しい顔付きで仁王立ちしていた。
「え~あーしらが光野くんを揶揄っている~?委員長が何を言ってんのかマジ意味不なんですけど~?ねぇ~古島くん~♪」
「そうそう!どこを見てそう思ったかは知らないが、俺達は別にこいつを揶揄った事なんて一度もなねぇぜ?なぁ、亜依子!」
「うんうん。古島の言う通りだよ!ただわたし達は他愛ない世間話と談笑を光野を含めて一緒にしていただけなんですけどぉ?ねぇ~心愛?」
「だっよねぇ~くふふ♪」
「あはは♪」
「くかかか♪」
目の前で怒っている女性生徒の説教に、ウザ絡みイケメン野郎と恵美の友達二人がニヤニヤした顔で互いに向かい合い、相づちをうんうんと打つ。
「なぁおい、光野。俺達、お前と普通に会話していただけだよな?なぁっ?」
そしてウザ絡みイケメン野郎がニヤニヤしたその顔でこっちを見てくると、俺の肩に回していた腕にグッと力を入れる。
そのニヤケ顔にイラっときた俺は、思わず全力パンチをそのニヤケ面にめり込ませてやろうかと一瞬思ったが、しかし今はそんなをしている場合ではない。
何故ならば、目の前の陽キャラ共に説教をしている女子生徒が、先程学校の通学路の途中で、変態イケメン達に襲われていた同一人物と気づいたからだ。
うえ!?うええぇぇえっ!?
なな、な、なんでこの子が俺のクラスにぃぃいっ!?!?
制服が一緒だったから、同じ学校の生徒だとは思ったけれども、
まさかまさかの同じクラスの子だとぉぉぉおおっ!?
俺が目の前にいる女子生徒に、思いっきり動揺を露にしていると、
キ~ンコ~ン、カ~ンコ~ン。
学校の始業ベルが教室内に鳴り響く。
「始業ベルが鳴ってしまいましたか。これからこの連中にたっっぷりと説教をしなければいけないというのに......取り敢えず古島君、それに西城さんと風見さんも先生がくる前にさっさと自分の席に着きなさい!」
「ういうい~先生怒るとめっさ怖いしぃ~」
「古島も光野くんに構ってないで自分の席に帰るぞぉ~」
「了解了解。もうちょいこいつを揶揄...じゃなかった、こいつと楽しい談笑をしていたかったが...しゃない!」
始業ベルを聞いて恵美の友達二人とウザ絡みイケメン野郎が、早足で自分の席へと戻って行く。
「ふう。やれやれ、あの人達にも困ったものですね...大丈夫でしたか、光野君?安心して下さい。あの人達には私が後からタップリと説教と注意をしておきますので!」
「う、うん。ありがとう......」
「あ、光野君も先生が来る前に自分の席に座った方がいいですよ?」
「う、うん。そだね......」
女子生徒の言葉に、俺は動揺している表情で頭を何度かペコッと小さく下げて感謝の言葉を伝えると、自分の席にそそくさと座る。