062・陽キャラのノリはホント鬱陶しい
さ、さぁ、どうだ!この教室で正か?不か?
俺が緊張した面持ちでドアをガラッと開けると、開けたドアの音が教室内に響き渡る。
そしてその後、生徒達がこっちをチラチラと見てくるが、生徒達は何事もなかったという表情で、元の方向へと視線を戻していく。
「おお、生徒達の目線が「何でこのクラスに他のクラスの生徒が?」っていう目線じゃないぞ!」
...となると、
ここが俺の教室で間違いないようだな!
俺はここが自分のクラスだった事に安堵でホッと胸を撫で下ろすと、自分の席へと移動して行く。
「えっと...確か、俺の席は窓際の一番後ろだったよな?」
覚えやすい席場所だったので、五年ちょいの月日が経っても流石に忘れる事はなかった。
「...ん?何か俺の席近くで誰かが屯っているな?一体誰だよ!邪魔だ.........なぁぁぁあっ!?」
うげげぇぇえっ!?あ、あいつらはぁぁぁあっ!?
俺が記憶にあった自分の席に移動していると、恵美の友達の風見が俺の席の机上に座って、もうひとりの恵美の友達の亜依子と談笑をしていた。
くそ!まさか俺の席で談笑をしていたとは......っ!?
さっきはあいつらのみに目線が行っていたので、あいつらのいた場所が俺の席だという事に、全く気付かなかった。
「ち...面倒な事になったな。恵美と関係のある連中とはもう喋りたくもなければ、関わりたくもないっていうのに......っ!」
......く、しかたがない。
チャイムが鳴ってあいつが自分の席に戻るまで、他の場所で待つしかないか。
今自分の席に行くのは得策じゃないと判断した俺は、恵美の友達が俺の席から離れるのを教室の後ろ側で待つ事にした。
「よう~光野じゃねぇか!珍しく遅いご登場だな~おい♪」
恵美の友達に気づかれないよう、教室の後ろに向かって抜き足差し足と移動していると、突如俺の背後から誰かが声を掛けてきて、俺の肩にグルッと腕を回してきた。
「しっかしお前、相変わらず顔を下を俯かせちゃってんなぁ~♪いやはや今日も根暗モードは健在ってかぁ~!あははは~♪」
そして腕を肩に回してきた人物がニヤニヤした顔で、俺の頬を人差し指でツンツンと突つきながら、小馬鹿にした態度をとってくる。
「あ!光野くんじゃん!おっぱ~♪恵美ちゃんがいなくなってもう半年以上も経ってんのに、ま~だ恵美ちゃんの事でうじうじとしちゃってんの~♪」
「心愛の言うように、もういい加減に恵美の事はスッパリ忘れなってぇ!光野にとって、所詮恵美は高嶺の花だったんだからさぁ!」
「そうだぜ、光野!海川はお前の程度の身の丈にはあっていなかったんだよ♪なぁ、心愛もそう思うよな♪」
「身の丈を知らなかった陰キャラさんか~♪ホントうける~きゃはは♪」
背後から腕を肩に回してきた男子生徒、そして恵美の友達二人が人を小馬鹿にした表情で、俺をトコトン揶揄ってくる。
「お、おい見てみろよ。光野の奴がまた陽キャラグループの連中に揶揄われているぜ?」
「しっかし飽きもせず、光野に毎日絡んでいるよな、あの連中?」
「海川の奴が光野と付き合い出してから、あいつらとあんま遊ばなくなったからな~。その恨みが未だにあるんだろう」
「しかも海川の友達だったあの二人、海川の付き合いが悪いっていつも愚痴をこぼしてたもんね。その積年の恨みつらみもあっての揶揄いなんだろうと思うよ」
「でも流石に半年以上も揶揄うのはしつこいと思うけどねぇ~」
「揶揄える相手がいたらトコトン付きまとって揶揄い倒す、それが陽キャラっていう人種だからな......」
「ああ、ホント陽キャラのノリって鬱陶しいよな...」
「分かるぜ、陽キャラのターゲットになったらマジ最悪の毎日だからな......」
「その感じ...どうやらキミ達も陽キャラの被害者のようだね?」
「......あんま思い出したくない体験だがな」
「......同感」
「......同じく」
陽キャラ三人に絡まれている俺の姿を見て、クラスメイトの連中の視線が次々とこちらに向けてくる。