058・『あいつ』
「......その表情と動揺、アタシの考え通りみたいだね。で、一体誰が理緒を助けて、そしてあいつらを捕縛したんだい?」
「うぐ!え、えっと、それは...だね。そ、そう!そ、その子ってあんまり目立った事というか、面倒くさい事が嫌いみたいなタイプみたいでさ!だ、だからその...素性はあまり勘繰らないで欲しいというか......」
桜が理緒の顔をジッと見つめつつ、孝之助達を捕縛した人物を問うてくるので、理緒は言い訳をして誤魔化そうとするが、しかし動揺が勝ってしまい、あたふたを隠す事の出来ない表情でサクヤの事をつい口滑らせてしまう。
「その言い様......やっぱ想像通り、理緒があいつらを捕縛したって訳じゃないんだね?」
「はう!?ち、ち、違うんだよっ!こ、こ、これは言い方を間違って....!え、えっと...うぬぬ......っ!?」
「また動揺を表にしちゃってから~。理緒はね、感情が分かりやす過ぎなんだよ。理緒も将来は上位ランクの冒険者になる予定なんだろう?だったら、もうちょい感情をグッと奥に引っ込めなきゃね!」
桜が嘆息を吐いた後、ジト目の表情で理緒の頬を摘まみ、欠点を指摘しながら両頬をムニムニする。
「うう...桜お姉ちゃんのご指摘は分かってはいるつもりなんだけど....でも私、桜お姉ちゃんと違って気が弱いから、騙し合いが苦手なんだよね......」
桜の指摘に対し、理緒はそう言うと苦笑いをこぼす。
「苦手はアタシもあんたとそう変わんないと思うよ、だって...ね。まぁいい。それより......目立ちたくない、それに面倒くさい......か。南城一族がアタシ達に二度と逆らえないよう、事情をより詳しく聞いて纏め上げておきたかったのだけども...恩人の嘆願は聞き入れない訳にはいかんよね。ふう、しょうがない。理緒の証言だけで何とか頑張って処理しておきますかね!」
「あ、ありがとう、桜お姉ちゃん!そしてゴメンね...私のわがままでお手数掛けちゃって!」
理緒が頭をぺこりと下げて、感謝の言葉を口にする。
「いいよいいよ。気にしない、気にしない。理緒の恩人さんの嘆願もあるけれどさ、アタシの可愛~い妹の頼みごとだしねぇ~♪なので、これ以上の詮索や下手な勘繰りはしないから安心して、理緒♪」
申し訳なさそうに感謝とお詫びをしてくる理緒に、桜が胸を手でドンと叩いた後、サムズアップをビシッと突き出す。
「......それにしても目立ちたくないに面倒くさいか。その理緒を助けてくれた恩人さん。何か『あいつ』にとっても似てるかも♪あいつもいっつも何かと言えば、目立ちたくない~、面倒くさい~って、口癖の様にぼやいてたからなぁ~♪」
桜が理緒の恩人に似ているという、誰かを思い出して懐かっていると、
「似てる?あいつ??」
理緒が桜の口にしたサクヤに似ているという『あいつ』発言に、ハテナ顔で首を傾げる。
「ね、ねぇ桜お姉ちゃん。そ、そのあいつって誰?」
桜が口にした『あいつ』という人物が気になった理緒が、それを桜に聞く。
「ん?ああ~こっちの話だから、理緒はそんな気にしないでいいよ♪」
だがそんな理緒の問いに、桜が苦笑いを浮かべて今の発言をさらっと流す。
「コホン!さて...それよりも話を変えるんだけど。この記憶カードって、ひょっとしてあなたを助けてくれた恩人くんから貰った物なのかな?」
咳払いを軽くして話を切り替え、そして先程理緒から貰った記憶カードをポケットからスッと取り出し、そしてそれを理緒に見せる。
「――はう!?ち、ちち、ち、違うよっ!?ほ、ほ、本当に違うからねぇ!さ、さっきも言った通り、トリプルフリーオークションで手にいれたんだよ!う、嘘じゃないよ!ホ、ホントなんだよっ!」
桜の問いに理緒が慌て様で何度も首を左右に大きく振って、桜の問いを全力で誤魔化そうとする。
そんな理緒を見て桜が、
「ふう、理緒。アタシあれほど感情を抑えろって忠告した筈だよね?その慌て様と動揺...アタシの疑問に肯定したも同然だぞ?」
「―――う、うぐ!?」
桜がジト目の表情で、自分の顔を人差し指でちょんちょんと突つきながら、理緒にバレバレですぞと注意する。




