053・四大貴族
「き、貴様かぁぁあっ!ボスをこんな目に合わせた野郎はぁぁああっ!」
「はい、そうですけど?それがなにか?」
小鉄の問いに、俺はあっけらかんとした悪びれない口調でそう言い返す。
「き、貴様はこのお方が誰だか、知っているのか!このお方はな、四大貴族のひとつ、南城大財閥の長男、南城孝之助様なるぞぉぉぉおっ!」
「え?よ、四大...貴族?なんだそれ??」
「き、貴様!四大貴族を知らんのか......!?」
小鉄が呆れ顔でこっちを見てくる。
「いいか、耳かっぽじって良く聞きやがれっ!四大貴族とはこの国に最大なる貢献をしている商人ギルドを仕切っている者達の事だ!そして孝之助様の親御様である南城孝太郎様は、その商人ギルドのひとつを牛耳っておられるっ!」
「ふ~ん、商人ギルドのトップ......ねぇ」
こっちの世界にも貴族様が絡んでいるギルドがあるんだ?
そりゃまた面倒だな。
......商人ギルドとは極力関わらない様にしよっと。
「......取り敢えず、そこのイケメン野郎が上位市民様なのは良~~く分かった。けどよ、それがどうしたってんだ?その理由が拉致監禁をして良いって理由には全然繋がらないと思うんだが?」
「ハァ!?ら、拉致監禁だと!?か、勘違いするんじゃねぇ、小僧っ!孝之助様はそこにおられる女性に交際の申し込みをなさっていただけだっ!」
「いやいや!どう見てもお前、その子を誘拐して拉致しようとしていたじゃん?相手の意に反し、強引に連れ去ろうとした時点で誘拐拉致なんだよ!例え相手の意が合ったとしても未成年は誘拐拉致になるんだけどな!」
俺はそう言うと、地面に転がって気絶している変態イケメンをゴミを見るかのようなジト目で見る。
そして俺は小鉄に目線を戻し、
「大体そこの変態イケメン野郎、その子を監禁して襲う気満々だったじゃん?あ。ほれ、これがその証拠ぶつね!」
俺はそう言うと携帯電話を胸ポケットから取り出し、さっきの現状と状況をしっかり記録した動画を小鉄に流して見せる。
「なっ!き、貴様!?いつの間にそんなものをっ!?」
「どうだ、おっさん?これを見てまだ交際の申し込みだと寝言を言い張るつもりか?」
「ぐぬぬぅぅうっ!そ、そいつをこっちに寄越せぇぇぇええっ!!」
証拠を録られていた事に焦りを見せる小鉄が、こちらに向かってドスドスと足音を鳴らしながら襲い掛かってくる。
「おいおい、誘拐監禁の次は泥棒ですか......よっと♪」
俺はやれやれというポーズをとった後、涼しい表情をして相手の攻撃が届く寸前の所でひょいっと横に軽く躱す。
「クッ!さ、避けるんじゃねぇぇえ!このクソガキがぁぁあ!そいつをさっさと俺に寄越せやぁぁぁぁああっ!!」
俺に攻撃を躱さ怒りを上げた小鉄がクルッとこちらに向き直すと、両手を大きく振り上げて再び襲い掛かってくる。
「誰が寄越すかよ、バ~カッ!この携帯一体いくらすると思ってんだ!結構なお値段のする携帯電話さんなんだぞっ!」
そう、これはかつての俺の元カノ...恵美との会話をスムーズにする為に寝る間も惜しんでキツいバイトを頑張りまくって、最新機能が沢山搭載されたやつを買ったんだよなぁ。
「まぁ、それも無駄買いの結果に終わっちまったけどねぇ.....」
......たはは。
当時の苦い思い出に俺は渇いた苦笑がこぼれてくる。
「こ、このクソガキがぁぁぁあっ!調子に乗るなぁぁぁぁああっ!!」
「え~嫌だよ、乗るもん!だって調子は良好が一番だもんっ♪ほいほい、ほほいのほいっと~♪」
俺は舌をべーと出し、挑発な態度での返しをした後、相手の繰り出す攻撃を余裕顔でひらりひらりと何度も躱す。