035・応援オンパレード
「キャー!見て見て、あの佐々木様の寛容と余裕っぷり!」
「うんうん、スッゴク格好いい~♪」
「相手の攻撃を絶対に食らわないという強者の行動よねぇ~♪」
「じ、じゃあ今度もまた見れるかな?あの「余裕っしょ!」アピールが!」
「うふふ~これは期待期待♪」
「それにしても新人の風情が何人も佐々木様に挑んでいるけど、佐々木様に勝てると本気で思っているのかな?勝てるはずないのにさ?」
「試験官が佐々木様だと分かってんだからさ、その時点で棄権するべきよねぇ~。ホント身の程を知らないし、厚かましくおこがましいよねぇ~!」
「ああ!ひょっとして佐々木様って見た目があんなんだから、もしかしたら勝てるかもという哀れな打算があったんじゃないの?」
「あはは、かもねぇ~♪そんなの奇跡がある訳ないのにさぁ~!」
「「「「きゃはははははははっ♪♪♪」」」」
佐々木を崇拝するかのように、その場にいる女性達の皆が皆、佐々木の事を褒め称えて、逆に新人やサクヤ達を小馬鹿にする。
そんな女性達の応援や声援の横で、
「ちぃっ!また出たよ、あいつの横着アピールがさっ!」
「ホント佐々木の野郎め!何から何まで鼻につくよな!」
「それに見てみろよ、あいつの顔!ありゃ~絶対相手の攻撃を軽くヒョイといなして交わした後、したり顔をする気満々だぜ、きっと!」
「くそ!俺がいるってのに、彼女があいつにウットリしていがやるっ!」
「だぁぁあもうっ!何かしらの奇跡が起こって、佐々木の野郎が無惨を晒してくれねぇかなぁあっ!!」
「もしもそんな奇跡を起こしてくれるんだったら、俺、あの新人冒険者のファンに絶対なっちゃうんだけどなぁ~!」
「うっしゃ!なら男性諸君、その奇跡を信じてあの新人冒険者をトコトン応援しちゃおうぜぇえいっ!!」
「応よっ!頑張れぇぇぇえ、しんじぃぃぃいんっ!」
「奇跡を起こして、そいつをぶっ飛ばせぇぇぇえっ!」
「そいつそのすまし顔を消してくれやぁぁぁあっ!」
「土手っ腹だ!土手っ腹を思いっきり叩けぇぇええっ!」
ひとつとなった男性達が、サクヤに熱い応援の激をそれぞれ飛ばす。
「くくく...おい。見てみなよ、坊主。観客席の連中......いや、男性だけだが、お前の事をあんなにも応援してくれているぜ?こいつはもう生半可な戦いが出来なくなっちまったな♪」
佐々木がニヤニヤした顔で、俺を挑発してくる。
「ハァ...勘弁してくれよ......」
正直嫌いなんだよ、こういう流れ。
だってよ、もしここで佐々木に負けて無様を晒してみろ。
この応援が打って代わったように、露骨なまでに嘆息&蔑みを含んだ視線と表情のオンパレードに変わって俺を迎えるんだぜ。
そして女どもは女どもで「ほぉ~ら、やっぱり駄目駄目じゃん~ぷぷっ♪」という声と共に、イケメンに逆らうなよのクスクス失笑攻撃&呆れ怒号攻撃のオンパレードをポイポイ投げてきやがる。
特に俺の様な陰キャラには、そのオンパレードが数倍に膨れ上がるからマジで太刀が悪い。
「こいつらのブーイングってホント容赦ないから、今の俺でもメンタルが相当やられちゃうんだよな......」
なので、なるべく......いいや、絶対にそんなもん食らいたくないっ!
「......ハァ」
適当な感じで戦った後「負けたぜ、ちくしょい!」をやるつもりだったのに計算が狂ったな。
俺がこの流れにげんなりし、深い嘆息を吐いていると、
「おいおい、坊主。いつまでそこで突っ立っているつもりなんだ?このポーズって意外にキツイんだからよ、さっさと攻撃してくれや~~~!」
佐々木がイラッとくる表情をしながら攻撃してこいよと、広げた両手で手招きをちょんちょんしてくる。
「うるせぇぇえいっ!んなもん、お前が勝手にやったポーズだろうがいっ!キツイんだったら、今すぐ止めろやぁぁぁあっ!こちとら、てめえのせいで出来上がったこの流れをどうすっか、その思考中なん――――――」
そんな佐々木の挑発姿を見て、俺は思わずそう叫声を荒らげてしまいそうになったその時、
「お兄ちゃ~ん、頑張れ~~♪ファイトだよぉお~~~♪」
観客席から成美の可愛い応援エールが、俺の両耳に入ってきた。