表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/147

029・試験官の代理を見つける


「ふぇえぇえ!『戦乙女』パーティがいないですってぇぇえっ!?」


「は、はい。えっと、少し前くらいになりますか?『戦乙女』のパーティメンバーが神妙な面持ちで何かを言い合った直後、別々の方向にバラバラに散って行きました」


「マ、マジですか!?な、なんともタイミングの悪い......グハッ!!」


特設グラウンドにいる唯一試験官をやってくるかもしれない『戦乙女』へ試験官を嘆願しにきた試験担当のお姉さんだったが、しかしその場にいた男性から『戦乙女』パーティの皆はどこかに何かの用事で去って行ったと聞き、試験担当係のお姉さんが「嘘でしょ!?」と言わんばかりの表情でガクッと項垂れてしまう。


「ううぅう、参りました。もう時間が殆どないというのに、一体どうしたら良い―――」


試験担当のお姉さんが試験官の代理人をどうしようかと、両手で頭を抱えて悩ませたその時、


「次、こい!」


「おうよ!はぁぁあっ!」


「遅いっ!」


「ぐはっ!」


「よし、次だ!」


グラウンドの奥の方から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「こ、この声は...確か『黄昏の果て』の早河さんと佐々木さん!」


......黄昏の果て。


「あの特訓ぶりを見るに、試験官の代役を引き受けてくれる可能性は低いだろうけど、一応ダメ元で頼むだけ頼んでみますか......」


依頼を受けてくれたらラッキーくらいの気持ちで、試験担当のお姉さんが『黄昏の果て』パーティメンバーのいる場所に早足で移動して行く。



――その頃――



「くぅ...や、やはりC級以上のランクともなると、既にダンジョンに潜っているパーティが多いですね......」


もう一人の試験担当のお姉さんこと望月が、試験官の代理人を見つけるべく、ギルド内をくまなく探し回るが、やはりいるのはD級以下の冒険者ばかりだった。


「あの子がうまくやっていれば良いんですが....」


もし駄目だった場合、


「私が直々に試験官をやるしかありませんか......」


いくら探し回ってもC級以上の冒険者が見当たらないので、これは自分が試験担当をやるしか道がないかと、望月がそう意を決した時、


「......あれ?そこに見えるは望月っちじゃないですか?」


背後から聞き覚えのある声が、望月に声を掛けてくる。


「え!?あ、貴女は!?」


望月がその声のした背後に顔をクルッと振り向かせると、明るい緑色のショートヘアがキラリと輝く『戦乙女』のリーダー、風菜が立っていた。


「こんにちは~望月さん♪ところでどうしたのかな?何か血相を変えた表情をしているご様子だけど?」


「え、えっと、実は......」


望月が風菜にその訳を話していく。


「ほうほう。なるほど...そういった事情が......」


「そういう訳なので、もし差し支えなければ風菜さんに試験官をやっていただきたいのですが......どうでしょうか?」


「え!ウ、ウチが試験官を...ですか?」


望月の申し出に風菜は少し戸惑う。


そして、


「......そうだなぁ。正直に言うといま手が離せない用事の真っ最中なんですが、でもまぁ望月っちには普段お世話になっているしなぁ......」


風菜が腕を前に組んで、試験官の代理を受けるかどうか、頭を悩ませて考える。


そして数十秒ほど悩んだ結果、


「......よし!分かりました、望月っち!試験官の件、やらせてもらいます!」


風菜はニコリと微笑み、望月の嘆願を快く快諾する。


「ほ、本当ですか、風菜さん!あ、ありがとうございます!では風菜さん、もう時間があまりございませんので急ぎ試験会場に戻りましょう!」


風菜の言葉を聞いてホッと安堵した望月が風菜に心からの感謝の会釈をすると、早速とばかりに風菜と共に試験会場へと早足で移動して行く。


「本当に切羽詰まっていたんだね......」


軽い足取りで試験会場に戻っていく望月を見て、風菜は軽い苦笑いをこぼすと、望月の後を追い掛けて行く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ