023・冒険者ルールと心得の説明 その5
「はう!?お、お姉さんからめっちゃ威圧感が!?」
「わ、笑っている筈なのに、何故か身震いしてくる!?」
「そりゃこんな顔にもなりますよ、だってあの年寄り達、負け戦に追い込まれて焦ったのか、禁断の核兵器を使用しようとしたんですよ!」
「ブッ!ひ、人を相手に核兵器って......」
「まさに窮鼠猫を噛むだな......」
「しかしその行為は流石に見逃せないと、SS級冒険者数名がこの年寄り連中の暴走を止めるべく参加してきましてね。核兵器の配備されていた施設を次々に破壊して回り、何とか最悪の危機を逃れる事が出来ました!」
「おお、流石はSS級!手際良いな!」
「そしてその後、SS級冒険者達はこの愚かな年寄り連中を殲滅するべく、戦いの場に合流...馳せ参じました」
「うひゃあ!?ただでさえ戦闘力の差が圧倒だったのに、そこにとどめとばかりに、SS級冒険者が加わったんだ!?」
「そ、そんな連中に年寄りどもが勝てる道理が一個もないじゃん!?まぁ自業自得だけどさ!」
「後には引けないプライドのせいとはいえ、冒険者達の戦闘力を上げるヘマをしちゃうなんて、本当に愚かな連中だよな......」
「でもSS級冒険が参加を決めたのなら、もう白旗を振るしか年寄りどもの助かる方法はないか......ザマァだな!」
「......ですね。SS級冒険者達の参戦によって、格段に戦闘力が飛躍した冒険者達の前に、最早なにも為す術の無くなった国と年寄り達は降参の諸手をあげるしかありませんでした!」
新人冒険者の言葉に、説明担当のお姉さんがその通りという表情を見せ、そしてこの戦争の結末をニコリ顔で締める。
「はは。やっぱ、白旗を振っちゃうか~。どう転んでもそれしか助かる方法がないもんな~」
「しかしそんな連中を相手にして、良くもまぁ国が滅びなかったよね.....」
「その点は皆様、ちゃんと心掛けていましたからね。戦いの場を基本的に国に影響の及ばない...あ、正確には一般人にダメージが及ばないようにと、冒険者達は強欲な年寄り達の粉が掛かっている場所を重点に置いて戦っていましたので」
「ああ、だからか。一度も町に被害がっていう話を聞かないなって思ってたからよ!」
「そんな戦いが出来るなんて、上位レベルの冒険者のステータスって凄いんだねぇ...」
「それプラス、スキルの効果や能力がずば抜けているんだろうな?」
「あ、因みにですが、この戦争が終結したあと、この愚かな年寄り連中は全員死刑とまでいきませんでしたが、左遷とか降格処分を受けました。何せこの年寄り達のせいで、相当数の人々の生活が困窮貧困に陥りましたからねぇ。今の世界情勢は冒険物の持ってくる素材で成り立っています。もう依存レベルといって過言ではないくらいに。だというのに......」
そう...冒険者達の持ってくるドロップアイテムや素材、そして魔石は国の経済を左右し、国を動かすエネルギーとなる動力源なのだ。
説明係のお姉さんは、その事を冒険ギルドで働いているからこそ知っている。
「それをこの年寄り連中のせいで数年間もそんなエネルギーの元が断たれてしまったんです。先程も言いましたが、一体どれだけの一般の生活が困窮し、貧困に飢え苦しんだ事か。勿論、冒険者達が素直に税を払っていれば、こんな状況にはならなかったのではという声も少なくない数ありました。ですがもし戦争なんて起こさずに冒険者の皆様が税を払うという形を取っていらした場合、恐らく近い将来、殆どの冒険者様はギルドをおやめになられた事でしょうね。B級以上の冒険者様は普通に働いた方が利益が多いはずですので。ですから結果はどちらに転んでも困窮や貧困に陥るという事実は変わらなかった事でしょう。いいえ、冒険者様がお辞めになるイコール今後の魔石補給は絶望的なのですから、素直に税を払っていればという意見は論外もよい所ですね!」
「素直に税を払っていれば......ねぇ。まぁ困窮や貧困状態に
陥った奴らからしたらそう言いたくなるのは仕方がないのかもしれねぇ。けどよ、俺は別にこいつらやお国、ましてや市民の為と命を張ってまで冒険者稼業をやるつもりは毛頭ないぜ!」
「ああ。俺だって聖人君子じゃないし、あまつこんな年寄り連中の為に馬車馬のようになって働く気は更々ないよ!」
「当然だ。我々は国の懐を潤す為の道具じゃないからな!」
「そうそう~。力を得る、お金を得る、名声を得る。私は自分の利益の為だけに、冒険者っていう危ない稼業をやっていくつもりだしねぇ~!」
「私も同じくだよ。恐らく普通の仕事は、そこそこ頑張って上げた能力やスキルでも十分楽勝だろうしねぇ♪」
「皆様の言葉はもっともな意見です。先程も言いましたが、今の世界経済を支えているのは間違いなく、冒険者の皆様の持ってこられるドロップアイテムや素材、そして魔石です。それをあの年寄り連中は理解できていなかったんでしょうね。......そういう理由もあって、冒険者達の行動はストライキとして受理され、罪はなしの不問となりました。まぁ仮に罪に落とそうものなら、今度こそ確実に自滅が待っているという自覚はある
でしょうから、やりたくともできはしないでしょうけどね......」
説明係のお姉さんが溜め息混じりの口調でそう言うと、疲れた表情を浮かべながら、顔を天井へ静かに向けていく。