022・冒険者ルールと心得の説明 その4
―――それから説明担当の女性の説明は数十分ほど続いた。
「......さて、ルールと心得のお話はに大方終わりましたが、最後に冒険者として生活するに至って、重要かつ大事な話、冒険者の稼ぎによる『税』の話を説明しますね」
「ああ、そっか。そういえば冒険者も仕事だったな!」
「うん。冒険者ってあんま、お仕事ってイメージがないもんね」
「いや、お金が発生するんだから、その時点で気づけよ......」
「まず基本的に、先程の話にも出てきた、ドロップアイテムや素材等の売却によって生まれる税金ですが、どれだけ稼いたとしても国からその税を摂取される事はございません」
「ええ!?で、でも冒険者って、仕事のカテゴリーですよね?それなのにどうして税金が免除になっちゃうんですか?」
「それは...ですね。その昔、冒険者も仕事ですし、勿論税金を取り立てる法律はありはしました。ありはしたんですが、当時の強欲で強突く張りな年寄り達があまりにも法外な金額の税金を冒険者達に摂取...請求して取り立てようとしましてね。更にピンハネもかなりの数が横行しまして。その結果、世界中の国々とそこにいる冒険者達との間でストライキ...いや、あれはもう『戦争』ですね...」
「へはぁ!せ、戦争って、あの戦争ですか!?小競り合いとかデモとかストライキとかじゃなく?」
「はい、あの争いは戦争と言っても差し支えないですね......」
説明係のお姉さんは新人冒険者の問いに、真面目な表情で頷く。
「そう...あれは当時の権力を持っている年寄り達が、国の運営する場所で稼いでいるのだから、法外な金額だったとしても四の五の言わずに税金を払え!とか、どうせ取った所で直ぐ同じ金額を稼いでこれるだろう?とか言い出してきましてね。そして冒険者達から法律の名の下に稼いだお金を摂取していったんですよ。いいえ、あれは摂取というよりも、強奪していったと言った方が正しいですね」
「確か上級冒険者って、月に数十億は楽々稼ぐらしいからな。その稼ぎをクズな年寄りどもに目をつけられたって感じか......」
「はい。冒険者達は命をチップとし、生と死を賭けて戦います。そしてコンマ一秒で生と死のどちらかにをあっさりと傾き、勝利か敗北へと傾く。そんな危険な戦いを常に繰り広げ、お金や報酬を稼ぐんです。だというのに、危険な事なぞ何もしない愚かな年寄り達が、よりにもよって三分の二も税を払えと抜かしてきましてね......更にレア度の高い武具やアイテムは四の五の言わせず全て没収されるという......」
「うわぁ、稼ぎを三分の二も摂取したんですか!?」
「更にレア級のアイテムを全て没収......マジありえんな!」
「言葉の通り、強欲で強突く張りにも程がありますねぇ!?」
「そんな法外な金額の税を理不尽に取られ、自分達の身を守る武具を没収され続けた冒険者達の怒りが遂に限界を超えてしまいました」
「それは当然の怒りですよ!命をかけて得た物をそんな意味不明で理不尽な摂取なんてされたら、私でも黙ってませんよ!」
「敵が強くなっていくなら武具も強くしなきゃいけないのにそれを没収するだなんて......おふざけのレベルを越えています!」
「その怒りの限界にきた冒険者達の殆んどは、B級からS級の冒険者でして、その身体は鉄を軽く引き裂き、銃如きではキズひとつ付かない。そして属性耐性も強い。そんな上級冒険者の方々を相手に、国の兵士達や近代兵器如きでは太刀打ち出来る訳もございません。ホント見事なボコボコショーでしたよ!」
「近代兵器って諸刃の剣だもんな。攻撃能力は凄まじいけど、小突けば一瞬で爆発するし...冒険者達からしたら、楽勝なターゲットだよな」
「そりゃ、一方的にボコボコにされるわな......」
「皆様の言う通り、人と人の戦い...冒険者と兵士の戦闘は最早大人と子供の喧嘩...いいえ、ヒーローと一般人の喧嘩レベルくらいの差があり、兵士達が一方的に冒険者からボコボコにされてました。ホント、あれは蹂躙でしたねぇ。流石に兵士達が可哀想に思える程の...あ、すいません、やっぱり全然可哀想そうじゃありませんでした♪」
説明係のお姉さんがそう説明した後、表情は笑っている筈なのに、全身からは黒い威圧感が漂っていた。