153・入学式
――時は過ぎ、サクヤの入学式の朝――
「ふう。いよいよ今日から俺も高校生かぁ......」
あっちの世界に行ったせいで、五年ちょい遅れての高校生。
やっと俺の高校生活が始まるのかぁ。
サクヤは着こんだ制服を右に左にと見て感極まる。
「おお!お兄ちゃん制服姿、中々極ってるじゃん!よく似合ってるよ♪」
「ふ、ありがとう!マイエンジェル♪」
朝食を取るべく一階に降りたサクヤは、先に朝食を食べていた成美に制服姿を褒められ嬉しくなる。
「でもお兄ちゃん、本当に良かったの?」
「良かったって何が?」
「エクトス学園に通わなくて良かったのかって事よ。ここいら一帯の中学生で冒険者をやっている人は殆どエクトス学園に通うんだよ?」
神妙な顔付きで成美が、エクトス学園に通わなくて後悔しないのかと問う。
「へぇ~やっぱ人気があるんだな、エクトス学園って」
亜依子も心愛も本来はエクスト学園に通う予定だったらしいし、隅田の奴も通うみたいだからな。
「そりゃそうだよ。何度も言うけどさ、強い冒険者ってみんなの憧れなんだよ。で、お兄ちゃんは選ばれる数の少ない最初から仮の取れた冒険者じゃん!しかもあの『黄昏の果て』のパーティメンバーの佐々木さんから「お前は凄い!」って太鼓判を押されたさ!そんなお兄ちゃんがエクトス学園に通わないなんて、勿体無いと思うんだよねぇ~。うん、絶対に勿体ないよっ!」
「勿体無い......か」
そういえば亜依子達にも言われたっけ、何でエクトス学園に通わないのかって。
でも、
「スマンな成美。俺は普通の学校がいいんだよ、普通のさ。それに俺の性根って基本的にインドアだぞ?それなのに何が悲しくてそんな1日中、身体をこき使う様な学校...いや学園に通わねばいかんのだよ!」
俺は陰キャラの正論を踏まえ、エクトス学園なんぞに通いませんと改めて宣言する。
「でもさでもさ。お兄ちゃんホントマジで強いからさ、エクトス学園に通えば、きっと女の子にモテモテだと思うんだけどなぁ~!」
「―――なっ!?モ、モテる!?」
そっか、モテる......か。
「んんんっ!ちょっとお兄ちゃん!なぁ~~に鼻の下伸ばしてんのかなぁ~!そんなに女の子からモテるのが嬉しいかぁぁぁあっ!!」
「いや!何て理不尽なお怒り!?成美が女性にモテるって言ったんですけどっ!?」
自分で言っておいて理不尽に怒る成美に、サクヤはビックリ表情で目を丸くする。
「あはは、ゴメンゴメン♪で、話は戻すんだけどさ。お兄ちゃんって勉学に勤しむっていうタイプじゃないじゃん?それに友達作るぞってタイプでもないし。だとしたら、一体何しに普通の学校に通うの?」
「おい!酷い言いようだな!?」
どうせ俺は頭も悪いし、コミュニケーション能力も足りない陰キャラですよ~だ!
「普通の学校に通いたい理由はただひとつ。俺は穏便な高校生活を楽しみたいんだよ。さっきも言ったけど、俺は武器を一日中振りまくったり、魔物と一日中戦かったりと身体を動かしたくないんだよ。特に命を賭ける賭けないのやり取りなんて、絶対にやりたくないしっ!」
そういう事なので、ダンジョンや冒険生活はしばらくはご遠慮願いたいのだ。
まぁ...ユカリとの約束で二ヶ月後に試合をするんだけどね。
で、でもあれは俺の欲求が入っているからノーカンだ。
「ふ~~ん穏便な高校生活を......ねぇ。でも前にも言ったと思うけど、お兄ちゃんの学校にも小規模だろうけど冒険科はあるんだよ?」
「例えあったとしても、パーセントでいえば二十以下くらいだろ、多分?だったら許容範囲だよ、許容範囲!」
んなオマケの様な授業、適当に流していれば良いだけだしな。
「むむ。わたしの計画としては、お兄ちゃんには是非がにもエクトス学園に通って欲しいんだけどな......」
「スマンな、成美。成美の計画が何かは知らないけど、恐らく冒険者好きの成美としてはお兄ちゃんにエクトス学園に通って欲しいんだろう?けどさ、これは前から決めている決定事項なんだ。例えハグ禁止と言われてようともな。だから諦めてくれや!」
あっちの世界で戦いに明け暮れていた時、何度も何度も夢見た願いなんだよ。
戦いなんぞ全部どっかに放り投げて、のんびり生活がしたいなぁってさ。
「ぶう~。そこまで真剣な表情で言われちゃったら、もう何も言えないじゃんか!」
「はは、すまないな成美!」
俺は申し訳ないという表情で成美に頭を下げる。
『7時10分になりました。では次のニュースを―――』
「......おっと。そろそろ学校に行く時間みたいだな!」
初日から遅刻はしたくない。
「ご馳走さま。んじゃあ、母さん行ってくるねぇ~!」
TVから聞こえてきた時報を耳にし、学校に行く時間だと気づくと、俺は手を合わせてご馳走さまと口にしてカバンを手に取ると玄関に駆けて行く。
「あ!ま、待ってよ、お兄ちゃ~ん。途中まで一緒に登校しよう~~!」
成美も手を合わせてご馳走さまと言うと、サクヤの後を慌てて追い駆けて行く。




