150・SSランクダンジョンで特訓
「はあぁあ、私が試合に!?な、なな、何故私なんですかっ!?私、家族で一番弱いんですよっ!し、試合に出るんだったら、お父様かお姉ちゃんでしょうにっ!」
自分を試合に出そうとするサクラや南城家に、理緒が思いっきり困惑する。
「そ、それが駄目なんだよ。父さんは仕事のアクシデントでケガ。そしてアタシは前回の試合でやっちまったいざこざのせいで出禁を食らってしまい、今回の試合には出られないんだよ......」
「い、いざこざで出禁っ!?あ...っ!?そういえば前回のイベントの時、何か家中で家族や使用人達が桜お姉ちゃんがどうしたの、こうしたのって騒いでいたような?」
も、もしかしてあれって、お姉ちゃんの出禁が原因で騒いでいたの!?
「しかしいざこざで出禁って......お姉ちゃん、前回の試合で一体何をやらかしちゃったのよ......」
「う、う~む。じ、実はだな。お姉ちゃん、久しぶりの対人戦にちょこ~っとばかりテンションが上がってしまってな。試合開始直後に繰り出した一撃目の回し蹴りで他の選手を全員纏めてぶっ倒しちゃったんだよ......」
「ハァァア!?ぜ、全員を一撃目の攻撃で倒しちゃったっ!?で、でも、それとお姉ちゃんの出禁とどう繋がるのよ?確かにその場が混乱したのは何となく分かるよ。けどさ、別にお姉ちゃん不正やインチキをしたって訳じゃないんでしょう?」
「も、勿論さ!だが後からお父さんに聞いたんだが、ああいったイベントってな、試合の流れによって勝つのか負けるのか、それをドキドキなる緊張感で楽しむもんらしいんだよ。それを知らなかったアタシは、さっき述べた様に一撃の蹴りで試合を速攻で終わらせちゃったって訳よ。あれだけ沸き上がっていた観客の声が一瞬でシーンと静まり返るわ、理緒の言う様に四大貴族の各スタッフ達が大混乱のてんやわんやになったりと、ホント色々大変だったよ......」
去年の試合会場が自分のせいで、困惑、戸惑い、嘆き、怒り、等々の感情でパニクっていた事を思い出し、苦笑がこぼれる。
「まあそんなこんなもあって、アタシは今回の試合には出られない。そしてさっき説明した通り、父さんもケガをして出られない。今回の依頼をどうしようと悩んでいた時、南城家から理緒に白羽の矢が立った。そんな訳だからさ、理緒。家の代表として頑張ってねぇ♪」
「いやいやいやいやいやいや頑張れないってぇぇぇぇええっ!無理無理ムリィィィィイイッ!!だ、だ、だってその試合、四大貴族が名誉を賭けて持てる全ての総力...信用信頼の繋がりをフルに用いって選手をスカウトするんでしょう!?そんな連中相手に私みたいな素人に毛が生えた程度が勝てる道理なんて、ひとつもないんですけどぉぉぉぉおおっ!?」
馬鹿な事を宣う姉に理緒が困惑顔で首を左右に高速に振ってながら、試合出場を全力で拒否する。
「......どうしても理緒が出たくない無理って言うんだったら、別に無理強いはしないよ。けどいいのかい理緒?この話を断れば、サク......光野君のいる学校に編入するチャンスがなくなるよ?」
「うぐ!?そ、それはっ!?」
「それにね。試合に勝つ必要は別にないんだよ」
「――え?」
「今回の依頼はね、試合に出るだけで達成なんだよ。したがって理緒が試合に負けたからといって、報酬である編入手続きが無くなる事はないのさ!」
「ほ、本当に試合には出るだけで良いの?ほ、本当の本当に?それだけで報酬は貰えるの?」
「ああ。試合には出るだけいいんだ、出るだけでな。それだけで無事、サク......光野君の通う学校に編入する事が出来る!」
「......もう一回聞くけど、本当に試合に出るだけで良いんだよね?」
本当に試合に出るだけで良いのかと、理緒は再度念押しで聞き返す。
「ああ。勝敗は関係ない、契約にはそう記述されているから安心するがいい!」
何度も聞き返す理緒に、サクラが大丈夫だと微笑みを浮かべて言葉を返す。
「......但し。さっさと試合を終わらたいからといって、わざとらしい負け方をするのは流石に駄目だからな。負けるなら上手く負けろよ!」
「わ、分かってるって。一応私だって武門...戦いを職業にしている家の娘だからね。でもそっか。そんな感じでいいんだったら何とかなる......かも?」
理緒はサクラの言葉にそう言葉を返しつつ取り敢えずの安堵をするが、しかしふと思い出す。
これも自分が学校から強引に呼び出された理由とは違うと。
「でもお姉ちゃん。その話も私を学校から強引に連れ出した理由ではないよね?私を学校から連れ出した理由、いい加減にそろそろ話してくれるかな?」
「おっと、すまんすまん。本題を話す為の前置きを話しておきたかったんだが、少々前置きが長かったか。だがこの前置きをお前にちゃんと話しておかないと、今から向かう場所でお前に行う特訓の意味が分からないだろう?」
「んん?と、特訓!?!?」
「お前も武門の血を受け継ぐ者だ。それにアタシと違って頭も良い。アタシのやらかしを反省として考慮し、試合展開を上手に立ち回るだろう。だがしかし!試合でもしもの予期せぬ出来事が起こって、アタシの可愛い理緒が大怪我をしちゃう可能性も否めない。特に北城の連中は、アタシや理緒に対して恨みを抱いているだろうし、何か良からぬ事を企んでいるやもしれん。そんな数々の負の可能性を考えれば考える度、アタシの心配が積み重なっていって仕方がなくてな!どうすればそんな危機的状況から理緒を救う事が出来るのか、しばらく考え抜いた結果、ひとつの考えに至った。そう...そんな予期せぬ出来事も企みも大怪我もみんな纏めて軽~~く跳ね返せるくらいに、お姉ちゃんが理緒の事を徹底的に鍛えに鍛えてあげちゃえばいいじゃんかっ!!...という考えに至った訳なのですよっ!!」
サクラが矢継ぎ早でそう言うと、したり顔で自分の胸をドンと強く叩く。
「な!?え!?き、鍛える!?わ、私を!?お、お姉ちゃんが!?」
「しかし全てのトラブルをぶっ飛ばせるレベルまでのステータスアップとなると、中堅クラスのダンジョンでの特訓じゃあ、四大貴族のイベントがある六月までには、ちょこっと日にちが足りないんだよ。ならどうやったら理緒をアタシが納得出来るレベルまでに鍛えられるのかと悩んでいると、丁度SSダンジョンがメンテナンス期間に入るという情報が耳に入ってきてね。で、ギルドの連中と交渉した結果。その期間中の日だったら、SSダンジョンを特訓の場として使っても良いという許可がおりたんだよ!」
「―――はあっ!?エ、SSダンジョンッ!?!?」
自分を特訓場所がSSランクダンジョンだと口にするサクラに、理緒が衝撃で目を丸くして動きを止める。
「だけどSSダンジョンを借りられる日にちがさ、今日から数えてたったの一週間しか取れなくってさ......これが理緒を学校から呼び出した理由って訳さ。たった一週間しか貸し出し期間をゲット出来ないなんて、ホント交渉下手で不甲斐ないお姉ちゃんを許してくれな、理緒......」
「いやいやいやいやいやいやいや!?不甲斐ないとか、謝罪とかなんて今はどうでもいいっ!?そそ、そんな事よりもさ、SSランクダンジョンってなにかなっ!?ね、ねぇぇえっ!?エ、SSランクダンジョンで特訓ってなんなのかなぁぁぁぁあぁああっ!?!?」
自分を呼び出した真相をやっと聞く事が出来たんだが、しかし今の理緒はそれどころではなかった。
「だが安心しなさい、理緒!一週間ダンジョンにずっと潜り続けて特訓をすれば、お姉ちゃんの定めている目標レベルまで、何とか上昇させる事が可能だからさっ!!」
「おおおおおぉぉおいぃいっ!桜お姉ちゃぁぁぁあん!?わ、私の話を聞いているかなぁぁあっ!?そ、それに今、一週間ダンジョンに潜り続けて特訓するとか聞こえたけど、それってどういう事なのかなぁぁあっ!?まま、まさか嘘だとは思うけど、SSダンジョンの中に一週間ずっと潜りっぱなしでって事―――」
「―――あははは~久々のダンジョンお泊まり特訓だぁ~っ!いや~思い出すなぁ~。こんな風に良く強いダンジョンを発見しては、あいつを連れ出してレベリングや特訓をしたっけなぁ~~♪」
「だぁぁああっ!お泊まり特訓とか言ってるぅぅぅうっ!?や、やっぱりダンジョンに一週間ずっと潜って特訓するつもりかぁぁぁぁああっ!?い、嫌だぁぁぁぁああっ!!い、一週間もダンジョンに潜り続けて特訓の毎日だなんて―――」
「―――さあさあ!理緒っ!時間は有限なのだ!急ぎSSダンジョンに直行するぞぉぉぉお~~~っ!!」
「だ、だから~っ!本当にお願いだから私の話を聞いくれるかなぁぁあぁあっ!?ねえぇぇええっ!桜お姉ぇえちゃ――――――うひゃひゃぁぁぁあ~~っ!?」
理緒がSSダンジョンで一週間も特訓なんて冗談じゃない絶対に嫌だと懸命な表情で訴えるが、しかしサクラは今から行う特訓に心がワクワクしているので、理緒の訴えは全く聞こえていなかった。
「うわあははは~~♪いざいざゆかぁあ~~ん!冒険者の憧れの地ぃい~~、SSダンジョ~ンにぃぃい~~~いっとっ♪♪」
そしてサクラはうきうき気分のニヤリ顔でSTP用の緊急サイレンを鳴らし、ギアを最大に上げてアクセスをグッと大きく踏み込むと、意気揚々とSSランクダンジョンのある場所へと理緒と共に向かうのだった。




