149・理緒の編入手続き
―――サクヤが古島をボコボコにしていたその頃。
「そんな膨れっ面をするなって、理緒~!」
「膨れっ面にもなりますよっ!だって光野君との卒業式イベントを邪魔されたんですよ!」
今頃あのギャル二人と光野君が、イチャイチャしていると思うとぉぉぉおっ!
ぐぬぬぬぅぅぅうう~~~っ!!
「それで一度しかない中学時代の卒業式をフイにしてまで、光野君との中学最後の思い出を潰してまで、私を連れ出した理由は一体何なんですかねぇっ!!」
理緒は思えば思う程、イライラのボルテージが上昇していく。
「たはは...そろそろいい加減機嫌を直してくれよ、理緒~。連れ出した理由は今からちゃんと説明するからさぁ~。じ、実はな―――」
「あ、お姉ちゃん。信号黄色ですよ」
「おっと。危ない危ない!」
理緒の指摘でサクラが慌てて車のブレーキを踏む。
「それで、実はな......の続きは何ですか?」
「あ、ああ。じ、実はな、お前の希望だったエクトス学園からサク...光野君の学校に編入できる事が可能になったんだよっ!」
「へ!?そ、それは、ほ、本当ですか、桜お姉ちゃんっ!?」
「ああ。ほら、お前も知って通り、西城グループが無理難題を押し通した為、理緒の編入手続きが困難になっていただろ?」
「はい。西城グループ...いいえ、亜依子さんが西城グループの力をフル活動させて編入手続きをしたばかりに、私がその巻き添えになってしまったんですよね......」
そう...西城グループのやらかしが、ギリギリの許容範囲だったらしく、
これ以上金持ちの力で、エクトス学園があれこれどうにでもなるっていう評判を落とす行為を防ぎたかったらしい。
その結果。
私の転入はその巻き添えを食らって却下されてしまったのだ。
「私の方が早く編入手続きをしていたっていうのに~~っ!」
数ヶ月後には編入する事はオッケーらしいけど、それじゃあ駄目なんだよ。
光野君とは一緒に、いちから...入学式から高校生活を謳歌したんだからさ!
「......そういった理由があるんだよ。だったら今さら騒いだところで、私の編入は無理なんじゃないの?」
「ふふ~ん、そこは大丈夫なのさ。このアタシが意見すれば......ねっ!」
「お姉ちゃんが?」
「おうさ!こう見えてもお姉ちゃん、希少数のS級冒険者だからねぇ~。そしてお姉ちゃんはエクトス学園の顔でもある。そんなアタシが理緒の編入を聞き入れてくれないのなら、こんなとこ辞めて他の学校に転校すると宣言したらどうなると思う?」
「そ、そりゃあ、慌てふためくだろうね?」
パニック全開の理事長や校長達がハッキリと想像ができるよ。
「そしてエクトス学園のスポンサーのひとつ、南城家がそれに裏で根回したらどうなると思う?」
「え?な、南城家が...ですか?」
「ああ。理緒の編入手続きに、南城家が関わってくれる事になっている」
「で、でも姉ちゃん。西城家のせいで南城家の口添えがあっても、エクトス学園が動く事はないのでは?」
「無茶が通れば道理引っ込むっていう言葉があってね。こういう建前論なんぞ、強引に無しにする方法はいくらでもあるんだよ.........うふふ♪」
サクラはあっちの世界の貴族や商人達が、初中道理や正攻法を無茶や強引で曲げていた事を思い出す。
「まあもっとも......」
そんな連中はユカリの奴が倍...いいや百倍返しで返し、そして意気消沈しているそいつらに、アタシ達がとどめを差していたけどね。
「とまあ...そんな感じなので、編入手続きの方は安心するといいさ!」
「......桜お姉ちゃんと南城家のタッグで、私の編入手続きをサポートしてくれるのは理解出来た。それが本当だったらありがたい話だし、とっても嬉しいよ。でもさ、その話って別に私の卒業式を潰してまで火急に伝える事?だってその話、家に帰った後でも出来る内容じゃん!」
「それはだな......おっと、青に変わった」
サクラがアクセルを踏む。
「......コホン。それはだな、南城家がサポートする条件として出してきた頼み事と関係があるんだよ」
「南城家の出してきた条件?頼み事?まあ商人がただで動いてくれる訳がないか。それで...南城家が出してきた頼み事とは一体何なの、桜お姉ちゃん?」
理緒は聞く。
「それはだな。ほら理緒も知っているだろ?四大貴族主催のイベントの事を?」
「勿論、知ってるよ。華宮家も関わる事の多いイベントだしね。それでそのイベントと、さっきお姉ちゃんが言っていた頼み事と何の関係が?」
「うむ、それはだな。父さんが言うにはそのイベント内で行われる試合に、南城家がお前を御所望なんだとさ!」
「―――へ!?」
サクラが申し訳なさそうな表情で、南城家の頼みごとを理緒に述べる。




