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148・エクトス学園に通いたかった理由


さて、あっちの世界の思い出は取り敢えず、遠くにポイッと投げ捨てるとして、まずはこちらの問題を解決しないとな。


「......コ、コホン。あ、あの...亜依子さんに心愛さん。そ、そろそろ離れてもらってよろしいでしょうか?陰キャラの俺にはこの状態の維持は限界ですので......」


亜依子と心愛に抱き付かれた瞬間からドキドキと鳴り止まない心臓が、もうこれ以上は持たないと悲鳴を上げている。


「ふむ。確かに朔夜のドキドキ音がヒドイ事になっているねぇ。致し方がない。離れたくはないけど、今日はこれくらいで勘弁しといてあげるよ♪」


「あーしも朔夜くんをもうちょい堪能したかったけど、朔夜くんに倒れられても困るから離れるし!」


亜依子と心愛がまだまだ離れたくないっていう言葉をこぼしつつ、サクヤから離れていく。


「ふう。ドキドキが落ち着いてきた......」


俺は助かったとばかりに、少しずつ大人しくなっていく心臓音を確認した後、


「なぁ。亜依子、心愛。改めて二人に聞くんだけどさ、亜依子達が俺の高校に通うっていうのは本当なのか?」


先程から気になっていた事を亜依子と心愛の二人に聞く。


すると、


「うん。ホントだよ!」


「ホントだし!」


二人は喜色満面の笑みで肯定の言葉を速攻で返す。


「でも亜依子は将来の為に、商売のイロハをエクトス学園で学んだ方がいいんじゃないのか?」


「それは問題ない。商売のイロハというものは学校で学ぶものじゃないって、わたしの両親も言っていたしねぇ。わたしもそういった商売のイロハは、自分の目で見て自分の耳で聞いて、そして先見の明という名の勘で判断をどうするか、それを極めるべきだと思うしねぇ!」


「な、なるほど。商人魂の理屈としてはあってはいるか......」


あっちの世界の商人達もそんな感じの理由を糧に、目をキラキラと輝かせて切磋琢磨と商売していたもんな。


「じゃあ心愛は?心愛もエクトス学園を選んでいたんだよな?何かエクトス学園に通いたかった理由があったんじゃないのか?」


「ん?こいつがエクトス学園に通いたかった理由かい?こいつがエクトス学園に通いたかった理由は、ダンジョンでダイエットが目的だよ♪」


心愛がエクトス学園に入学したいと決めたその理由を、亜依子が代わりに答える。


「え?ダ、ダンジョンでダイエット!?」


何それっていう顔をサクヤがすると、


「ほら冒険家って職業はさ、あれこれと動き回るじゃん?だから太っている暇がないんだよ。それを上手く利用してダイエットをしようと、エクトス学園に入学を決めた連中も結構な数いるんだよ!」


サクヤの疑問に亜依子がそう答える。


「......なるほど。そ、そういえば確かに熟練者ともなると、太っている奴は殆どいなかったな?」


俺はあっちの世界で活躍していた、冒険家達の風貌を思い出す。


「ちょ!?亜依子さん!?ダンジョンダイエットってなんだしっ!?いかにもあーしがそう言ったみたく、平然とウソを付くんじゃないしっ!商人家系はホント怖えなぁ、おいっ!!」


「あれ?違ったっけ?だってあんた、いっつも太っただ~の、ダイエットせねば~だのと叫声を荒らげていたじゃん?だからあんたがエクトス学園に通いたかった理由は、それなのかな~と思ってたよ♪」


「ち、ちげぇし!んな事、言った覚えは一回もねぇしっ!ダイエットなんて、あーしにとっては、一番遠い存在だしっ!あーしは、ボン!キュ!ボンッ!だしぃぃぃいっ!!」


心愛が目を大きく見開いてプンプンと怒り、そしてこの身体のどこが太っているんだと、スリーサイズ部分をポンポンと何度も叩いて亜依子に抗議する。


「何だよ、ダンジョンダイエットって亜依子の冗談だったんかい!真面目な表情で言うからつい騙されたよ。だったら心愛がエクトス学園に通いたかった理由って、一体なんなのさ?」


気を取り直し、改めてエクトス学園に通いたかった理由を心愛に問う。


「ふっ!あーしがエクトス学園に通いたかった理由かい?あーしがエクトス学園に通いたかった理由はね、ちやほやされたりモテモテハーレムを作る為さっ!!」


心愛がニヤリと口角を上げて、エクトス学園に通いたかった理由を口にする。


「モ、モテモテって......こいつと同じ理由じゃん......」


俺は憐れみの表情で隅田をチラリと見る。


「ちょっ!?そんな憐憫溢れる目線で俺を見るんじゃないっ!エクトス学園に通いたい理由は、それが目的っていうのが一番多い理由なんだぞっ!」


「ええ!強くなりたいが一番じゃないのかよ!?」


「強さはモテる為の結果だよ、結果。エクトス学園で強くなるって事はイコール、モテるという事だからな。つまりはモテモテを求める奴は、おのずと強さも同じ値でついてくるんだよっ!」


隅田がモテると強さの定義をサクヤに熱い表情で語る。


「くふふふ!俺はやるぜえ~光野っ!エクトス学園でガンガン強くなって、大勢の女子から「キャ~隅田くん素敵~っ!」とか「隅田様~私を恋人にして~っ!」とか言われる様なモテ男にやってやるっ!!」


サクヤに向かって自分の未来を熱弁した後、隅田はニヤニヤ顔で「ぐふふふ♪」とだらしない声を洩らす。


「はは...が、頑張れよ、隅田。お前のその目的が叶うよう、遠くから応援しているからさ」


「おう!ありがとな、親友っ!俺の活躍を期待していてくれやっ!」


サクヤの肩に手を置き、笑顔全開でサムズアップをする。


「こいつがモテ男......ねぇ」


......すまんな、隅田。


俺にはお前が勝ち組リア充どもに「ぐぬぬぬっ!!」と嫉妬全開している姿しか目に浮かんでこないわ......。


サクヤはいつもアキラ達に嫉妬していた自分と、自分と同じレベルの陰キャラ仲間の隅田を重ね合わせる。


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