147・無かった事にする特技
「ぐぬぬぬぬぬぬ!クソがぁぁぁぁああっ!な、何なんだよ、編入手続きってっ!おかしいだろうが!おかしいだろうがぁぁぁぁああっ!!」
古島は地団駄を踏んで悔しさを露にする。
「クソクソッ!てめえのせいだぁぁあっ!全部みんなてめえのせいだぞぉぉぉお、光野ぉぉぉおおっ!!順風満帆だった俺の歯車がおかしくなってきたのはぁぁぁぁああっ!!」
そして古島はサクヤに向かって、憎しみのこもった目線でキッと睨み付ける。
「......また訳の分からん責任転嫁をしやがって。悪いけど全~部お前のせいだよ、お前のさ。お前の歯車とやらがおかしくなっちまったのは、全部お前の身から出た錆びだ。自分可愛さにコイツらを置いてきぼりにして、逃げ出したお前の自業自得さ!」
俺はハァと深く溜め息を吐くと、もはや苛つきを越えて憐れみへと変わっていく。
「う、煩い!黙れぇえ!クソゴミ陰キャラ風情が、不良達に勝つってのが大概ふざけているんだよぉぉぉおお!てめえもひぃぃぃいと叫声を荒らげながら、涙と小便を撒き散らして逃げやがれよぉぉぉおおっ!それがてめえら陰キャラの、あるべき姿だろうがぁぁぁぁぁああっ!」
『スピード・ブースタァァァァアアッ!!』
古島は矢継ぎ早にそう叫ぶと、スキルを発動させて再び俺に向かって拳を振り上げて突撃してくる。
「......やれやれ。ホントしょうもないな、こいつ」
話が通じない奴には、いつも通りに物理的にて黙らせるしかないか。
それとも無者の威圧で気絶させるか?
......イヤ。
こいつに無者の威圧をかましたら、確実に漏らすな。
正直、卒業式の思い出にこいつのお漏らしを付け加えたくない。
「......ハァ。やっぱ物理的にて黙らせる選択しかないか......」
俺は深い嘆息を吐いた後、古島を攻撃するべく右足にグッと力を込める。
「今度こそ、死ねやぁぁぁぁああ、クソ陰キャラアァァァアアッ!!」
「ふむ...これくらいの力でいいかな......よいしょっと!!」
「な、なんだあの野郎?何もないところで足を蹴り出しやが―――――げばび!!?」
前蹴りにより発生させた、最大に手加減した気合弾を古島の土手っ腹に叩き込むと、古島は白目を剥きその場にバタンと崩れ落ち気絶する。
「ふう、このやりとりも何度目だろうな......」
ドタドタドタドタ、ガラララ――――。
「誰だぁぁぁああ!こんなめでたい日に大声を荒らげて騒いでいるバカもんはぁぁああぁあっ!」
古島が気絶したと同時に、教育指導係の体育先生が血相を変えて教室に入ってきた。
「あ!先生、あいつですよ!」
「そいつです、先生!」
「古島がやりました、先生!」
「人の話を全く聞かないそいつですよ、先生!」
「先生、その勘違いイケメンの声です!」
「そこのガッカリイケメンのせいです!」
「その口だけ男がバカ騒ぎしていました!」
「古島が光野君達に因縁を吹っ掛けたと思ったら、突然大声で怒り出しました!」
サクヤ達が弁明しようとするよりも早く、教室内にいたクラスメイト達が古島の発した大声が原因だと、次々に発していく。
「またお前か、古島ぁぁあっ!何度言ってもホント注意を聴かない奴だな、お前はぁぁぁあっ!」
そう、古島の野郎はあの体育の試合後もこんな感じで、何度も何度も俺に因縁を吹っ掛けてくるのだ。
そしてそのつどそのつど、
いくらボコろうとも、
その度に先生から怒られようとも、
陰キャラ如きにボコられた記憶なんぞはないわとばかりに、再び俺に因縁を吹っ掛けてきやがるのだ。
「ん?スキルを使った形跡もあるな......この間の説教の時に散々注意をした筈なんだがな。これ以上校則を破るとエクトス学園には要注意人物として報告をしなければいけないと!」
体育教師は眉をピクピクとさせて深く嘆息を吐くと、床に転がっている古島を肩に抱え上げる。
「あ、あの先生。俺達は......」
「ああ、光野と西城達は弁明の必要はない。生徒の声や場の状況を垣間見てもお前達は百パーセント被害者なのはいつもの通り事だろうしな!」
体育教師が首を小さく横に振り、お前達には何の罪もないと言う。
「しかしホント厄介な奴に目をつけられた者だな、お前さんも。だがお前はエクトス学園には行かないんだろ?だったら、これでこいつとの縁も切れるって訳か、良かったな♪おっと。教師がこんな事を言ってはいけないか!」
「......たはは」
「だがまあ。他校との交流行事で、古島と出くわす可能性は否めないがな!」
「ちょ、先生!嫌なフラグを立てないで下さいよ!」
「あはは、スマンスマン♪」
体育教師がそういうつもりで言った訳じゃないんだがなと、苦笑と笑顔の混ざった表情で謝罪した後、古島を肩に抱えて教室から出ていった。
「いやはや。最後の最後までホントウザかったな、古島の野郎......」
教室にいた隅田が俺に近付いて来ると、古島に対して呆れ顔を見せる。
「......で、時に光野。お前エクトス学園には通わないんだな?」
体育教師とのさっきの会話を聞いていた隅田が、サクヤがエクトス学園に通わない事を不思議がる。
「まぁね。だって俺、陰キャラだぜ。陰キャラは極力身体を動かしたくはないんだよ。そういう意味では隅田も陰キャラよりだし、エクトス学園には行かないんだろ?」
「いや、俺はエクトス学園だぜ!」
「ハァ!な、何でだよっ!?」
「んなもん聞くまでなかろう!モテる為さっ!!」
隅田はしたり顔でサムズアップを決め、ニヤリと歯を光らせる。
「ああ、そうだった。そういう願望を夢抱くのも陰キャラだったよな......」
成美曰く、強い冒険者はめちゃめちゃモテるらしいからな。
俺もあっちの世界に関わらなければ、こいつの言葉に賛同しただろう。
だが実際はかなり厄介なのだ、強いって事は。
現実俺達勇者パーティは結構の数に恨まれたり、敵として見られていた。
自分が絶対正義と謳うエリート貴族。
様々な悪どい商売をしていた者。
独裁の強い王族。
......等々。
そんな連中に勇者の存在は危険と見なされ、暗殺者を何度も送り込まれては命を狙われた。
特に貴族や王族はプライドが高く「平民如きが、誇り高き清浄なる青き血筋に逆らうな!不敬であるっ!」という屁理屈を宣わってね。
だけどもそんな連中に対し、女神様が「神から選ばれし者に対する不遜不敬な働きは、この女神に逆らうと同意だっ!万死に値するっ!」と返し、そいつら全員纏めて神の鉄槌...いや、女神の鉄槌が下されたけどな。
ホントお茶目さんだよねぇ、女神様って♪
「......とまあそんな感じに。強者はモテるけど、同時に面倒なのだよ」
俺はあっちの世界での勇者として活躍していた時に起きた、様々な負のイベントを思い出し、表情がげんなりとしてしまう。




