146・話の通じない男
「お、お前ら!またそんなクソゴミ陰キャラ野郎とイチャイチャしやがってぇぇえっ!」
「ふん。わたしが誰とイチャイチャしようと古島には関係ないじゃん!」
「そうだそうだ。それにあーしら何度もあんたに言ったよね?今後あーしらに一切声を掛けんなってさ!なのに何で話し掛けてくるかな?バカなのかな?」
「......くっ二人ともまだあの事を根に持っているのかよっ!俺も何度も言ったよな!あれはお前らを置いて逃げたんじゃねぇっ!応援を呼びに行っていただけってよっ!」
「はぁ~何て幼稚な言い訳をするのかしら!あんたがあの不良共に恐れをなして逃げたって事は周知の事実なんだよ、バレているんだよっ!もういい加減認めろよぉっ!!」
何度も何度もしつこくバレバレの言い訳をしてくる古島に、亜依子はイラッとした表情に変わる。
「言い訳するにもせめて前とは違う言い訳を考えてこいし!馬鹿だからその言い訳以外、何も思いつかなかったんだろうけどさ!」
心愛も亜依子と同じく、いい加減にしろとばかりのイライラ顔を古島に見せる。
「く、くうう。ぐぬぬぬ!き、貴様だ!貴様が全て悪いんだ、クソゴミ陰キャラァァアッ!何勝手にコイツらを助けてやがんだよぉぉぉおおっ!おかげでこいつらから疑われてしまったじゃねぇかぁぁぁぁあ!余計な事をしやがってぇぇえ、このクソゴミ陰キャラ風情がぁぁぁぁあああっ!!!」
古島はそう言うと、怒りで顔を真っ赤にしながら拳を大きく振り上げて俺達に向かって突撃してくる。
「......おいおい。酷い責任転嫁だな」
俺は古島に呆れ顔を見せつつ軽く嘆息を吐くと、
「―――キャ!」
「―――はう!」
亜依子と心愛の二人を両腕で抱き上げ、古島の突撃をひょいと後ろに飛んで難なく躱す。
「て、てめぇぇぇぇぇえ!躱すんじゃねぇえよぉぉおぉぉおおおっ!!」
「いや躱すに決まってんだろうが。お前の攻撃が二人ケガでもしたらどうするつもりだ!」
「さ、朔夜......」
「う、嬉しいこと言ってくれるし......!」
サクヤの言葉に、亜依子と心愛が頬を紅に染める。
「な、なら二人を離しやがれやぁぁぁぁああっ!!」
「ああ、お前の意見も尤もだな。じゃあ二人とも離れて―――」
「――いやいや。離れませんけど?却下しますっ!」
「――論外論外。離れる訳ないし!却下だしっ!」
古島の正論にそうだなとサクヤが思うよりも早く、亜依子と心愛がそれを速攻で却下すると、サクヤをぎゅっと強く抱き締める。
「こ、このぉぉぉお、却下だとぉぉぉぉおっ!クソゴミ陰キャラの癖に生意気なぁぁぁあぁああっ!!」
「いや俺が却下した訳じゃないだろう!?」
古島の理不尽な怒りの叫びに、ジト目でそう言い返す。
「ゼェ...ゼェ......ふん、まあいいさ。どうせ亜依子も心愛もそれに俺もてめえとは今日でお別れだしな!何せ、俺達三人はてめえとは別の高校、エクトス学園に通うんだからよ。確か光野、てめえはエクトス学園じゃなく普通の学校に通うんだったよなぁ♪」
「ん?あ、ああ、そうだけど?」
古島の口調にイラッとしつつも、そうだと首を縦に小さく振る。
「くくく。そういう訳でそいつら二人とのイチャイチャタイムも今日でお終いって訳だ!あははははは!残念無念だなぁ、クソ陰キャラ!俺も貴様の顔を見ないで済む、今日で見納めって訳だ――――」
「―――力説しているところ悪いんだけど、わたしも心愛もエクトス学園には通わないわよ?」
「―――へ!?」
「そうそう。あーしら、亜依子の家の力をフルに使って朔夜くんと同じ学校に通えるよう編入手続きし!」
「―――へ!?」
亜依子の言葉に古島が目を丸くして驚き、そして心愛の言葉にサクヤも目を丸くして驚く。
「は、はぁぁああああ!?エ、エクトス学園をやめて、こいつの通う高校に編入手続きしただとぉぉぉおお!?」
「え?ホ、ホントなのか?亜依子、心愛?」
「結構大変だったけど、頑張ったよあーしら!」
「いや!あんたは何もしていないでしょうがぁっ!大変だったのはわたしだよ、わ・た・し・っ!!」
亜依子は心愛の頭にチョップを落とす。
「あーしも頑張れって一生懸命、亜依子を鼓舞や応援したし!」
亜依子の言葉に心愛がちょっと不貞腐れる。
「へ、編入だと......ふ、ふざけんなぁぁあっ!い、いつからだ!い、いつからそいつの高校に編入する事を考えていやがったんだよっ!」
「朔夜に助けてもらった日からかな?本当ギリギリセーフだったんだから!こいつの編入手続きも付け加えだったからさぁ!」
亜依子は土下座であーしもと頼み込んできた心愛を思い出し、苦笑いを口からこぼす。
「えへへ♪あーしの嘆願、聞き入れてくれて本当にありがとございます、亜依子さま~~!マジで感謝感謝でございます~~っ!」
心愛は身体を90℃にビシッと曲げて感謝の言葉を伝える。




