145・卒業式
―――時は過ぎ、今日は中学校生活最後のイベント卒業式の日。
「ふう...校長の話、最後まで長かったな.......」
卒業式を無事に終え、自分のクラスに帰ってくる。
「この教室とも中学生生活も今日でお別れか......」
ホント色々あったな。
初めて出来た彼女に感極まったり、
その彼女に痛烈な裏切りを食らったり、
気付けば異世界で勇者をやる羽目になったり、
帰ってきたらのんびりしたかったっていうのに、何故かこっちの世界にもギルドやダンジョンがあったり、
それに...
「ああ!ここにいたぁっ!」
「探したしっ!」
「ん?ああ...亜依子に心愛か?」
異世界に行く前は厄介極まりなしだったこいつらと仲良くなったり。
ホント...色々あったな。
俺は今日までの中学校生活を振り返り、感慨深い気持ちでいっぱいになる。
「二人とも俺を捜していたみたいだけど何か用かい?」
「ありありだよ!記念写真を撮ろ!卒業記念のさぁ~!」
亜依子は手に持っていた携帯をサクヤに見せる。
「写真?別に良いけど?」
「やった、ありがとう!じゃあ最初はわたしからねぇ~!」
亜依子は心愛に携帯を手渡す。
「......く。ジャンケンに負けたし、致し方なし!」
亜依子から受け取った携帯を心愛が構える。
「ん?ちょっと朔夜距離が遠いぞ。もっと近くに寄って寄って!」
「―――うひゃ!?」
亜依子はサクヤの腕を掴むと、グイッと自分に近づける。
そしてサクヤの腕にぎゅっと力強く抱き付いた。
な、ななっ!?
う、腕に柔っこい感触がぁああぁああっ!?
「ほら朔夜。笑顔笑顔♪」
「う、うへ?あ、ああ。わわ、分かった!」
サクヤは腕に伝わってくる柔らかい感触にドキドキをするが、それを悟られないよう冷静を装いながら心愛の構える携帯に笑顔を見せる。
「んじゃ、撮るぞぉ~♪ほいほいほい、カシャカシャカシャ~~~ッ!オマケのカシャリっと!」
心愛が角度を変えながら写真を素早く撮っていく。
「ほれ亜依子、撮り終えたよ~!」
心愛は自分の撮った写真を確認し終えると、携帯を亜依子にポイと返す。
「さて!次はあーしの番だ~♪」
心愛は自分の携帯を亜依子に手渡す。
「うふふ。亜依子~綺麗に撮ってねぇ~!」
「元が悪いんだから無茶を言うな!」
「だ、誰の元が悪いだぁあ、コラ~~ッ!!......ったく。コホン、まあいい。それよりも亜依子同様に撮っても面白くないよな?」
心愛は小首を傾げて目を瞑り、数秒間思考する。
「よっしゃ!あーしはこれでいこうっ!くふふ~朔夜く~~~ん♪」
「―――うえ!?ちょ!?な、なな、何をしてっ!?こ、ここ、心愛さんっ!?!?」
心愛はニヤリと口角を上げると、思い付いたアイデアを実行するべくサクヤにさささと近寄り、そしてサクヤの身体に思いっきり力強くぎゅっと抱き付く。
「ち、ちち、ちょっと心愛!?あ、あんた何やってんのさぁぁあっ!!」
それを見て亜依子がめちゃくちゃ慌て出す。
「いや~だって思い出残る卒業写真だよ?だったら昔の写真をふと見たくなった時に「そうそう。こんな事もあったなぁ~♪」っていう写真を撮りたいじゃん?」
「う、うぐ。それは確かに.......」
亜依子は心愛の言う事が正しいかと口を噤む。
「ってな訳で、朔夜くんもあーしにぎゅっと抱き付くし♪」
「い、いやいやいやいや、出来る訳ねぇだろ!陰キャラの俺にムチャ振りはよせって~のっ!」
俺はパニック顔で心愛の提案を却下する。
そんなやり取りの間、亜依子は無言で素早く指を動かして写真をカシャカシャと撮っていく。
そして写真を撮り終えると携帯をポイと心愛に返す。
「さ、さぁ!朔夜!も、もういっかい写真撮ろっかぁ♪」
亜依子がドキドキ顔でサクヤに近付くと、心愛と同様サクヤの身体に力強く抱き付く。
「何~~っ!?じゃ、じゃあ!あ、あーしももう一回撮るしぃ~~!!」
心愛も負けじとサクヤを力強く抱き締める。
「ちょっ!今度はわたしの番なんだから、さっさと朔夜から離れて写真撮れや!」
「いやだし!さっきは亜依子が先だったんだから、今度はあーしが先だしっ!」
亜依子と心愛がサクヤを挟んでやいのやいのと睨み合いをしていると、
―――ガラガラ。
教室のドアが開く音が響く。
「なぁぁあ!?あ、ああ、亜依子!?こ、ここ、心愛!?」
教室のドアを開けた人物...古島が目を大きく見開き目の前で起こっている出来事に喫驚する。




