014・イケメン集団に興味などなし!
「あぁ!お、お兄ちゃん、み、見て見て、あそこっ!グラウンドの右奥に『黄昏の果て』のパーティメンバーがいるよっ!」
「た、黄昏の果て?」
「うん!数少ないAランク冒険者パーティでさ、更に見ての通り、イケメンばかりのメンバーだから、女性ファンも多いんだよ♪」
「イ、イケメン...だと!?」
成美の見ている目線に自分の目線を合わせてみると、そこには女性中心にキャーキャー言われている、いかにもというイケメンの集団がいた。
「......ふん。イケメン共なんぞ、見る価値皆無だ!」
俺はこれ以上目が汚れたくないとばかりに、イケメン集団から即座に目を反らすと、成美の方角へと目線を変更する。
「......にしても、成美も何だかんだといっても、結局イケメンが好きなんだな?くうぅう...お兄ちゃんはとってもガッカリです......ハァ」
そして俺はやれやれというジト目で成美を見ながらそう言うと、空を見上げて悲しみで黄昏れてしまう......黄昏の果てだけに。
「まぁ確かに、好き嫌いで言うなら大好きだよ『黄昏の果て』のパーティはさぁ♪」
「―――――なっ!?」
なんだとぉぉおぉおぉお―――――――――っっ!?!?
「くふふふ...そっか、そっか......」
......大好きかぁ。
だがな、聞くがいいわイケメン共ぉぉおッ!
俺の目が黒い内は、成美を嫁には決して渡さんぞぉぉぉおっ!
どうしても成美を嫁に欲しくば、この俺を倒してからにするんだなっ!!
......行くぞ、イケメン共っ!
魔王を伐ち倒したこの力に...勝てるものなら、勝ってみるが良――――
俺は妹を拐かすイケメン共を滅する為、封印していた能力を解放するべく、気合いを入れようとしたその瞬間、
「―――あ、でも勘違いしないでね、お兄ちゃん。異性としてじゃなく、尊敬として好きなんだからね!だってさ、二十代の若さでA級冒険者になったんだよ、あの人達!ホントスッゴいと思わない?」
.....あ、ああ、はいはい。
そっちの方ねぇ。
「......ふっ!」
なら、今回だけは勘弁しといてやるぜ、イケメン共っ!!
妹の言う好きが好意の方じゃないと聞くが否や、解放しようとしていた能力を再び封じ込めていく。
「だが勘違いするなよ、イケメン共っ!例え尊敬だけだったとしても、俺の辞書にお前らを許すという道理の文字はひとつもないっ!それを覚えておくが良いわっ!」
「ち、ちょっとお兄ちゃん!?な、なんか悪どい顔で訳の分からない事を宣っているけど、あの人達に変な事はしないでよね!あの人達のファンの娘達って、めんどいのが多いんだから......」
「くふふふ......分かってるって!」
「ほ、本当に分かってるのかなぁ...まぁいいか。じゃあ時間もない事だし、グラウンド近くに移動しようか、お兄ちゃん!」
「いや、俺は行かない」
成美のお誘いを、俺は首を左右に振ってきっぱりした口調で遠慮する。
「うえぇ!な、何でさ!?」
「俺にイケメンを熱望するという趣味は一切ないのでっ!」
何が悲しゅうてイケメンなんかを見学しなきゃいけないのよ。
断固、拒否るね!
例え妹の嘆願でも、無理なもんは無理なんですよっ!
「...ってな訳で、俺はここでお前がはぐれないか見ているので、ひとりで見学に行ってらっしゃいなっ!」
俺はそう言うと、成美にビシッと敬礼ポーズを取って見せる。
「ハァ~お兄ちゃんのイケメン嫌いはホント重症レベルだなぁ。しょうがない、なら私ひとりで見学に行ってくるから、そこを絶対に離れちゃ駄目だからね~!」
成美はそんな態度に嘆息を吐いて、ひとりで『黄昏の果て』を見に移動していく。