132・はぁぁあっ!?嘘ぉぉおっ!?
「うげえ~あ、あれに並ぶの!?本当に!?あの行列を見るに戦闘アタックバトルをプレイ出来るまでには、どう見積もっても一時間くらいは軽く掛かっちゃいそうなんっすけど!?」
自分が誘った戦闘アタックバトルだったが、しかし想像以上に人が並んでいる状況に、風菜はげんなりする。
「ど、どうする火奈っち?今日は色々あって疲れているし、今回は辞めて帰―――」
「どうするも辞めるもないわ!並ぶっ!この一択に決まっているでしょうがっ!ほら、いつまでもボケッと突っ立っていないで、さっさと最後尾に移動するわよ!」
火奈は久しぶりの戦闘アタックバトルに、テンションが高々にそう意気込むと、げんなりしている風菜の腕をグイッと強引に引っ張り、列の最後尾へと移動して行く。
「ち、ちょっ!ま、待って火奈っち!ウ、ウチ一時間も並びたくないんですけど~~~っ!?」
「いいの風菜ちゃん?ここで帰っちゃったら火奈ちゃんのストレスが確実にまた復活しちゃうけど?」
「うぐ!そ、それは......っ」
「だからここは素直に諦めてあれに並ぶよ風菜ちゃん」
「はううぅう。こんな事になるんだったら、ゲーセンに行こうだなんて提案するんじゃなかった~~~っ!!」
軽い足取りで列の最後尾に向けて引っ張っていく火奈に、渋々する風菜と水那が一緒に付いて行く。
「くくく、見てなさい!今度こそランキングの一位をゲットしてやるからねぇっ!!」
「そう言えば火奈ちゃんのポイントって、もうちょっとで一位の人に追い付きそうなんだよね?」
「おうよ!見てろ!今回こそ一位をゲットしてやるぜ!」
水那の問いに、火奈がニヤリと微笑んでサムズアップを見せる。
「......ねぇねぇ、火奈っち」
「ん?何だ、風菜?そんな訝しんだ顔をして?」
「火奈っちって確か『KANA』っていう名前で登録しているんだよね?」
「え?そ、そうだけど?それがどうかしたの、風菜?」
「いやね。今回のプレイで本当に一位いけるのかなって思ってさ?だって火奈っちのポイント、一位の人と三倍近くも離れているからさ?」
「―――へ?いやいやいや、そんな馬鹿な事ある筈が!?最後のプレイから数ヶ月経っているとはいえ、三倍近くも離される訳ないじゃな.........って!?な、な、なな!?なんですとおぉぉぉおぉぉおっ!!!?」
火奈が風菜の言葉に慌ててランキング表に顔を向けると、風菜の言っている事が真実と知り、「はぁぁあっ!?嘘だろぉぉおっ!?」という表情で目を大きく見開き、口をあんぐりさせて驚愕してしまう。
「こら、火奈ちゃんまたそんなみっともない大きな声を出して!そりゃ~三倍の差はショックだろうけれども、いい加減火奈ちゃんも良い歳なんだから、もうちょっと落ち着きを見せなさいっ!」
「ええぇえい!これが落ち着いていられるかぁぁぁあいっ!あのランキング表を見て見なさいな!わたしと元一位のあいつの順位が落ちて、誰か知らない新参者が一位に君臨しているんだよぉぉぉおっ!!」
「え?あ、本当だ!前に火奈ちゃんから聞いていた人が一位から二位に落ちてるじゃん!?」
火奈同様、水那もランキング表に目を向けると、そこには知らない人物が一位と記載されており、火奈はそれに伴い三位へとランクダウンしていた。
「うへぇえ~凄いねぇ~、あの『S・H』って子。一位を追い抜いた挙げ句、ポイント数も火奈ちゃん達よりも三倍近く差があるじゃない!」
「お、おのれぇぇええっ!一体誰だよ、あのS・Hって奴はぁぁぁああっ!?わたしが数ヶ月ダンジョン探索で苦難している間に、なんちゅう奴が現れてんのよっ!!三倍の差って、もう完全にチートじゃんかぁぁぁあっ!!」
火奈が冒険ギルドで怒っていた時よりも、更に激昂したお怒りモードに変わっていく。
「げ!ヤバッ!?ここには火奈っちのご機嫌回復の為にやって来たっていうのに、このままでは火奈っちのご機嫌が...ストレスが再び復活してしまうじゃんっ!?」
「どうどう、気持ちは分かるけどさ、取り敢えず怒りを抑えなって火奈ちゃん!それ以上はいくない。ボク達のイメージが落ちちゃうから!」
風菜と水那が火奈のお怒りモードを必死に止めていると、
「あ、あの...風菜とか火奈とか水那って聞こえたんですが、もしかして戦乙女の人ですか?」
緊張顔をした女性が、風菜達三人に話し掛けてきた。
「あ"あ"あ"!?それが一体どうしたってい―――」
「――こら火奈ちゃん!そういう態度はボク達、戦乙女のイメージが落ちちゃうってさっき言ったでしょうがっ!キミごめんなさいねぇ。この子、今少~しだけ機嫌が斜めだからさぁ、あははは♪」
ご機嫌斜めの火奈を慌てて後ろに引っ込めると、水那が苦笑をこぼしながら先程話し掛けてきた女性に火奈のフォローを入れる。
「おおおお!や、やっぱり、戦乙女の風菜さん火奈さん水那さんでしたかっ!!」
「い、戦乙女だと!?」
「マ、マジでか!?」
「うおお!ほ、本当だっ!」
「あの十代の若さもさる事ながら、数ある冒険者を押し退けてAランクに君臨しているあの戦乙女か!?」
「「「キャァァァアァァアアア―――ッ!!!」」」
「「「うおおぉぉぉぉぉおぉお―――ッ!!?」」」
「風菜、こっち向いてぇえぇえ!」
「ひゃあ~水那さん相変わらずおキレイだな~♪」
「おお!火奈さん、怒った顔が凛々しくてカッコいいぜ!」
「戦乙女が列に並んでいるって事は、つまりあの三人の戦いが真近で見られるって事か!?」
「マ、マジか!?戦乙女の戦いが目の前で見れるっていうのかよ!?」
「うひょう~!何かワクテカしてきたぁぁあっ!!」
「ああ、俺もだぜっ!」
「......でもよ。あの行列を見るに、戦乙女の戦いを見れるまでにはゆうに一時間以上は掛かるんじゃないか?」
「なぬ!そいつはマズイ!え、えっと...お、俺は後からでもいいのでどうぞお先に!」
「あ!お、俺も!俺もお譲りします!どうぞ前に!」
「わ、私達も戦乙女の戦いを是非見てみたいのでどうぞどうぞです!」
「私も見たい!どうぞ前に並んで下さい、戦乙女さん!」
「お、俺も戦乙女の戦いが見たい!っていうか、ここで順番を譲らんと後でここにいる連中から何と言われるか分からんし!ってな訳でどうぞ前に行って下さいっ!」
並んでいる連中は戦乙女の戦いを早く見たいからと、はたまたその場の空気を読んだりし、火奈達三人を列の前へと次々に繰り上げていく。