127・みっともない二人
「あ、あの。お、俺達に何かご用でしょうか?」
「う~ん。ご用意というか、ちょいと物騒なワードが耳に入ってきたものだからさ。その確認...かな?」
「ぶ、物騒なワードとは!?」
「お、俺達、そんな事言った記憶ないんですが!?」
圧のある笑顔で質問してくるサクラに対し、チャラ大学生その1その2が焦りと顔を歪ませた苦笑いで誤魔化そうとする。
「ふむ。話が通じないな。それともキミ達、口で語るのが不器用なタイプ?じゃ~あ、こっちの方法でなら素直に言葉を語ってくれるかな?うふふふ♪」
「―――うへ!?」
「―――あえ!?」
誤魔化しの言葉を連ねるチャラ大学生その1その2に、圧の上がった笑顔を更に光らせるサクラが両指の骨をポキポキと鳴らしながらゆっくりと近づいていく。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なるほど...ブラックコボルトが......ね。でキミ達は引率した子達をブラックコボルトの下に置いてきぼりにして逃げて来たと?」
「だ、だってしょうがないじゃないですかぁぁあっ!ブ、ブラックコボルトですよぉ!お、お俺達じゃ絶対に勝てっこないですってぇぇえっ!!」
「で、ですよ!あいつら三人には悪いとは思うけどさ!でも他人の命よりも自分の命の方が優先...大事ですから!そうでしょっ!!」
「そ、それにルールブックにも命の危機に出会した時はそうしろって書いてあったしっ!」
「俺達はそのルールに則った行動をしただけですよっ!」
チャラ大学生その1その2が必死と動揺と剣幕の混ざった表情で、手振りを加えて言い訳をサクラに繕っていく。
「......そうだね。キミ達の言う通り、ルールブックにはそう書いてあったね」
「で、でしょう!だったら俺達の言い分も筋違いじゃ――」
「――でもパーティメンバーを囮にするのは...特に悪意に満ちた囮にするのは論外。ルールブックにも反した行為だと書いてあったと思うけど?」
「「―――っ!?」」
しかしチャラ大学生その1その2の言い分は、サクラからあっさりと論破されてしまう。
「というわけなので...おい、倉田っ!沢川っ!」
「「ハッ!!」」
サクラの低い声なる呼び掛けに後ろで待機していた黒いスーツを着た屈強な男達が、チャラ大学生その1その2の背後に素早く回り込むと二人を羽交い締めにし確保する。
――その頃――
「ふぅ...やっとギルドに戻って来れたね......」
「ハァ~ッ!ほんっとわたしの寿命が何年か縮まったよ!」
「あんたが何年なら、ワタシは何十年だよ......」
疲れ体でやっとこさギルドに帰って来た綾香&佐紀、そして優子の三人が安堵の息を洩らしていた。
「さて...私達は今からギルドに今回の騒動の報告をしに行かなきゃいけないけど、成美はどうする?」
「え?わたし?そだねぇ~。わたしはここでお兄ちゃんと合流してそれから家に帰るよ」
因みにサクヤは今現在、お花を摘みに行ってます。
「ワタシもお兄さんと一緒に帰ろ―――」
「――駄目よ、優子。あんたは今回のブラックコボルト騒動の一番の当事者なんだから、ここで離脱って訳にはいかないの!」
成美のいる場所に足を運ぼうとする優子の襟首を佐紀が素早くグイッと掴む。
「いやだぁぁあ~~っ!ワタシも朔夜お兄さんと一緒に帰るんだぁぁぁあ~~~~っ!!」
「それじゃ成美。また明日学校でね~~!」
「うん。また明日学校で会お――――」
「「―――は、離せぇぇぇぇえええっ!!!!」」
「な、何!?い、今のみっともない声はっ!?」
成美が友達三人に別れの言葉を述べようとした瞬間、少し離れたフロアから何やら騒がしい声が聞こえてくる。
「は、離せよぉぉお!お、俺達が何をしたっていうんだっ!」
「囮をつかってまで自分の命を救って何が悪いんだよぉぉお!」
「誰だってあの状況下に陥ったら逃げるっつんだああっ!」
「そ、そいつの言う通りだ!命が掛かっているのに囮は駄目だなんて詭弁なんだよっ!詭弁っ!!」
「ええい!この!逃げようとするんじゃないっ!」
「往生際の悪い連中だなっ!」
騒がしい声のする方向に成美達が顔を向けると、そこには黒いスーツを着た屈強な男達に捉えられている見た事のある二人組が目に映った。