118・初戦闘の感想
「......う~~ん。確かにお兄ちゃんの言う様に、雑誌とかテレビなんかのインタビューでそんな話をしていた冒険者がいたような気がするな?」
「だ、だろ!」
「それだったら、お兄ちゃんの言葉にも一律あるのかも?」
「うんうん!そうそう、そういうこ―――」
「―――でもなぁ。それを踏まえたとしても、さっきのお兄ちゃんの動きってばどう考えてもそんな類いのレベルを軽~く越えちゃっている動きだったと思うんだよねぇ......」
俺の言い訳に納得しようとするものの、しかしまだどこか納得がいかないのか成美は首を傾げつつ、未だ疑いの眼差しをこちらに向けてくる。
「だ~か~ら~気のせいだってば、成美の気のせいっ!ほ、ほら!そんな事よりもお前のターゲットのスライムがこっちに近付いて来てるぞ!」
俺は未だに疑いの目をやめてくれない成美の思考を逸らす為、先程からスキルで動きを止めていた成美のターゲットであるスライムをスキルからソッと解放する。
「おっと、いかん!そうだった、そうだった!今は戦闘中だったよ!お兄ちゃんの事は気になっちゃう所だけども、今はまず取り敢えず私のダンジョンでの初戦闘の方が先決だよねっ!」
このスライムとの戦いがあれだけ切望し、憧れていたダンジョンでの初戦闘だったと成美が思い出すと、
「うしゃっ!いつまでも私の記憶の中にこの初戦闘が鮮明に残るべく、気合いと集中をせねばっ!!」
成美は両手で両頬をパンパンと少し強めに叩き、乱れていた気持ちを戦闘モードへと切り替える。
そしてピョンピョンと跳ねながらこちらに突進して来るスライムを迎え撃つべく、成美は手に持ってた両薙刀をビシッと前に突き出して身構える。
「くくく!さあ、掛かってきなさい!超ザコ魔物のスライムさん♪」
「―――ピッ!?ピキィィイィィイッ!!」
成美の挑発にスライムが反応したのか、威嚇するように雄叫びをあげると、スライムが大きくジャンプをする。
「ジャンプ突進攻撃か!でも甘い!そんな攻撃食らう私じゃなぁ~~いっ!」
成美はスライムの繰り出すジャンプ突進攻撃を迎え撃つ為、身を低くして両薙刀を身構える。
「いっくぞぉ~!スライムッ!この両薙刀のサビにしてあげるから!やあぁぁあぁぁあっ!!」
そして成美は突進して来るスライム目掛けて、下から上に向かって両薙刀を力いっぱいブンッと振り上げ斬り掛かる。
「―――――ピキャ!?」
振り上げた両薙刀の刃がスライムに見事に直撃すると、スライムはそのまま地面にコロコロと転がり落ちていく。
「こいつでトドメだっ!」
『切り裂け、風の刃!ウインド・カッターッ!!』
間を入れず、成美は身体を素早くクルッと反転させると、武器の持ち手とは逆の手をスライムに向けて翳し、そして風の魔法を発動させて風の刃でスライムを斬り刻む。
「―――ピキィィィイアッ!!」
風の魔法を食らったスライムは断末魔と共に消滅すると、その場に魔石がゴロンと転がり落ちる。
「よっしゃぁあ!初勝利と初魔石ゲットだよ~♪」
スライムを倒した証拠である魔石を成美がひょいと拾いあげると、満面の笑みを浮かべながら喜びのポーズをビシッと決める。
「おお!ナイスコンボだったな、成美!やるじゃんお見事!」
初めての戦闘にしては華麗なコンボ攻撃でスライムを撃破した成美の戦い振りに、俺はキラキラ笑顔でパチパチと拍手を送る。
「えへへ~お褒めの言葉ありがとう、お兄ちゃん♪」
そんな拍手喝采を送る俺に向けて、成美が頬を赤くしたテレた顔にてVサインをビシッと突き出す。
「それでどうだった?ダンジョンでの初戦闘は?」
「うしし♪控え目に言っても、さいっこうです♪」
俺の問いに成美は屈託ない笑顔でニコリと微笑んでそう即答する。
「そっか!それはよかったな♪」
「うん♪」
いや~ホント、俺の初戦闘の時とは大違いだな。
俺の初戦闘なんてさ、
「クソが!覚えておけよ愚王共がぁぁあぁあっ!てめえらをいつかきっとこの地面に転がっているスライムの如く同じ目に合わせてやるからなぁぁぁあっ!絶っっっっ対にてめらに復讐と報復をしてやるぅぅぅぅううっ!!その日が来るまで首を洗って震えて待っていやがれやぁぁああぁぁああっ!!!」
と、初戦闘の余韻なんか感じる暇もなく天に向かって怒りの咆哮を荒らげていたからな。
そんな初戦闘から数日経ったある日、
あの城が女神の裁きにて滅んだって聞かされたんだよなぁ。
その時は「アハハハハハッ!!クソ偶王共め、ザァアァァアマァァア~ッ♪」と、心の底から大笑いしてやったっけ?
でもそう思いつつも同時に、
「俺の復讐と報復の対象がぁぁぁぁあぁああああ~~っ!!!?」
と、しばらく落ち込んだ。
「......はは」
さて、俺の黒歴史に近い昔話はここまでにしておくとして。
「それで次はどうするんだ、成美?まだスライムを刈るか?それとも他の場所に移動して別の魔物を刈ってみるか?」
俺は成美に次の行動をどうするか、それを訊ねる。