116・勇者仲間の使っていた武器
「そいつは......両刃の薙刀か?」
俺は成美の手に取った武器を目に映す。
「うん!この武器、力のない女性でも戦い易かったり、相手の隙を逃さない武器としても適した作りになっているんだ。だから冒険者になった時に使う武器はこれにするって前々から決めていたんだよ、わたし♪」
成美は満面の笑みを浮かべて、両薙刀を右に左にとビュンビュン振り回す。
「......両薙刀か」
その武器、勇者仲間のユカリも愛用していた武器だったな。
そしてユカリの奴、斬るだけじゃ物足りないとこいつを錬金術でカスタマイズして弓の性能を追加していたっけ?
あ!そうそうそういえば。
ユカリの奴が新しく作ったその弓を追加した両薙刀、確か弓両薙刀って言うだったか?
とチェンジした際、
あいつのいらなくなったお古の両薙刀が、そして後にまた新しく弓薙刀を作った事で古くなった弓両薙刀たちが俺のアイテムボックスの中に入っていたよな?
「これをその内、成美に提供しようっかな?」
だって元々資金として売り払う予定でアイテムボックスに放り込んでいたやつだしな、これ。
だから成美に譲ってもユカリの奴も許してくれるよな?
「ホントは今直ぐこいつらを成美に渡してやりたいんだけども...」
でもこのお古の両薙刀と弓両薙刀って、あいつがレア素材を使いまくって錬金していたせいもあり、かなりランクが高めになっているんだよなぁ。
更に俺のこの刀と違い、ユカリの奴が地味目は嫌だとばかりに見た目を思いっきり豪華絢爛にしているからますます成美には出しづらい。
そういう訳もあって、
ダンジョンにまだ潜ってもいないと認識されているこの俺が、こんなランクの高い激レア武器を成美に渡そうものなら成美は勿論の事、色んな方面から何故そんな凄いランクの武器をキミは持っているんだと突つかれること、想像に等しい。
「......だがしかし、成美の危険度を少しでも無くしたいのも事実だしなぁ」
―――あっ!!
こういうのはどうだろうか?
さっきの言い訳で使った武器屋で手に入れたっていう体で渡すってのは?
「......いや、駄目だな」
これ以上この言い訳を使うと、その武器屋の場所はどこだと成美から追及されそうだし。
......という事なので、スマンな成美。
この両薙刀や弓両薙刀たちは、ダンジョンに潜って俺のギルドランクが適度に上がったその暁に改めて手渡させてもらう事にするよ。
俺がユカリのお古を成美にあげるべきか否かで迷っていると、
「おっしゃっ!武器と防具も決めた。回復アイテムの準備完了っと!」
ダンジョンに潜る為の下準備が終わった成美が俺の下に駆け寄ってくる。
「ではではお兄ちゃん!ダンジョンへと移動開始だぁ~っ!!」
そしてダンジョン探索の準備を終えた成美と共に、俺はダンジョンの出入り階段のあるフロアへと歩いて行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
――冒険ギルド初心者専用ダンジョン一階層――
「うわ~お!こ、ここが憧れのダンジョンかぁ~~~っ♪」
ダンジョン一階層に辿り着いた成美は、キラキラした瞳でダンジョン内をキョロキョロと見渡す。
「くふふふ!遂に...遂に私がダンジョンに爆誕したぁぁぁぁああっ!!」
そしてダンジョンに入った事への感動の感情が最頂点まで高ぶったのか、両薙刀を天に高々と掲げて嬉叫の声を大きく荒らげる。
「はは...嬉しい気持ちを抑えられないのは分かる。だがここは戦いの場だぞ。そんな気を抜いて注意や集中を疎かにいたら一瞬でケガの元だぞ?」
興奮高まって注意散漫になっている成美に、俺は軽い注意を入れる。
「ギルドに入る前にも言ったと思うけど、ランクの低いダンジョンだと侮っていたら手痛い目に..いいや、.命の危険性に陥る場面に出会す可能性もあるんだ。その事を常々忘れたら駄目だぞ、いいな成美!」
あっちの世界でもこんな初心者のダンジョンなんぞ楽勝だぜと息巻いて気を抜いていた奴が、あっさり死んでいった現場を何度も見たからな。
「うぐ!わ、分かってるってば!注意散漫しないように気を付けるよ!」
俺から真面目な注意を受けた成美は、さっきまで高ぶっていたテンションを
少しずつ下げて気を引き締めていく。
「......でもお兄ちゃんの言葉って何か妙に説得力があるよねぇ?例えて言うなら、ランクの高い冒険者が語る言葉ぽいっていうかさ?」
「はぐ!?イヤイヤ!き、気のせいだって!うん、気のせいっ!!」
俺は成美の図星に首を左右に大きく振り、成美の疑いを否定する。
「まぁもしそう見えるんだったら、それは可愛い妹を危険な魔物達から守らなきゃいけないという責任感と気合の表れからだと思うっ!!」
俺は表情をカッコつけた顔に変えてにこりと微笑むと、成美に向かってビシッとサムズアップを決める。
「えへへ~♪そっかそっか~~♪私を守る為かぁ~~♪うふふありがとう、お兄ちゃん♪」
俺の言葉に感激した成美が、眩しいキラキラ笑顔の喜びと共にギュッと抱き付いてきた。
「こ、こら成美!嬉しいけれども、そういう行動は隙を作ってケガの原因を作っちゃうから駄目だってさっき言っただろう!」
俺に抱き付いてきた成美に、俺はデレる感情を抑えつつ軽い注意をする。
「でもそうならないよう、私を守ってくれるんでしょう?可愛い妹を危険からしっかり守ってよね♪お・兄ぃ・ちゃぁ~~ん♪」
「うぉぉおぉっしゃぁぁぁあっ!守らないでかぁぁぁぁあぁああっ!!」
頬を赤く染めた上目遣いで見てくる成美を見た瞬間、俺は鼻息をフンスと荒く鳴らしながら任せろとばかりに自分の胸をドンと強く叩く。
―――それからしばらくダンジョン内を歩くこと、数分後。
「お!見て見てお兄ちゃん!あそこにスライムが複数いるよっ!」
成美が少し離れた場所にいるスライムの群れを発見する。