115・武器レンタル
「んじゃ、成美。改めてダンジョンの中に入るとしますか!」
「おう!」
そして俺は成美と共にダンジョンの入り口前にあるフロアに移動する。
「ところで成美。武器は持ってきているのか?」
「ううん。私が専用としたい武器って買うとそこそこ値の貼るから、今回はここでレンタルする予定だよ。お兄ちゃんもレンタルだよね?」
「いや、俺は自分の武器を持ってきてるからレンタルはしないかな?」
俺は成美にそう言うと、リュックから取り出した様に見える角度でアイテムボックスから一本の刀を取り出す。
「そ、それって、もしかして...日本刀?」
「ああ!俺の自慢の一刀さ!」
俺はアイテムボックスから取り出した刀を、自慢気な顔で成美に見せる。
正確にいうと日本刀とはちょっと違うんだけどね。
しかしこの刀、久しぶりに手に取ったなぁ。
こいつはあっちの世界に召喚させられた初期から愛用していた刀で、
攻撃が魔物に効かなくなってくる場面になっても、こいつから他の武器に乗り変えるのを躊躇したくらい愛着のあった刀だ。
だから俺は錬金術を使い、属性やら効果やらが添付されたアイテムとか素材を限界まで駆使して強化し、
魔王討伐までの五年半の中、約半分近くの年月この刀を使い倒していたんだよなぁ。
俺が手に持つ刀を見据え、この刀を惜しみなく強化しまくった昔の思い出に考え深く浸っていると、
「ふむふむ、ほうほう。一見シンプルに見えるけどその刀ってかなりの攻撃力を秘めていそうだね?」
成美が顎の下に親指と人差し指を置き、俺の刀をマジマジと見回す。
「でもさ、お兄ちゃん。いつの間にそんな刀を買ったのさ?冒険ギルドに行くのをあれだけ頑なに嫌がっていた癖に?」
成美がジト目の怪しむ表情で俺の顔をジッと見てくる。
「え!?え、えっと...そ、それはだな......そ、そうっ!この間、ちょっと雰囲気の良さ気なダンジョン専用の武器屋を見つけたんだよ。そ、そしてその武器屋でこいつに出会ったんだ!で、俺の直感がこいつは買わないときっと後悔するぞ!買わないと大損したと後から泣きを見るぞ!と騒ぎ立ててね。だからついつい衝動買いをしちゃったんだよ!」
成美にこの刀の入手場所をいきなり訪ねられた俺は「この刀はね、異世界で手に入れたのさ!」...とは流石に言える訳ないので、俺は適当な作り話でこの刀の出元をそれとなく誤魔化した。
「へぇ~そうだったんだ。でもその刀、結構高かったんじゃないの?日本刀って何か凄くお高いイメージがあるんだけど?」
「べ、別にそこまで高くはなかった...かな?な、何せこいつ、余り物のワゴンセールの中に置いてあった品だからさ。なので中学生のお小遣いでも衝動買いが出来たんだよ!いやはや、本当に良い買い物をしちゃったな~!あははは~♪」
「なるほどねぇ。余り物のワゴンセールかぁ。うふふ、良かったじゃん、
お兄ちゃん!多分その刀ってかなりの掘り出し物だと思うよ♪」
「成美もそう思うか?い、いや~成美の言う通り、本当にラッキーな買い物だったよ!うんうん♪」
「くぅ~羨ましいなぁ~お兄ちゃん!私の求めている武器もどこぞでの武器屋でお安く売っていないかなぁ?」
「はは、そうだな。売っているといいな!」
俺は成美の羨む言葉に、適当な相槌を打っておく。
ふ、ふひぃ~、危ない危ない。
と、取り敢えず、この刀の出所を誤魔化す事に成功したようだな。
今後からはあっちの世界での感覚で、武器やアイテムを見せないように注意をしなきゃいけないな。
俺は自分に対し、次からマジで気を付けろよと言い聞かせる。
「さて!それよりも成美。お前、ここで武器をレンタルするんだろう?だったら早くしないと後ろから来た連中に良い武器を持っていかれちゃうぞ?」
「おっと!そうだったっ!!」
成美はハッとした表情に変わると、レンタル武器を取り扱っている係員がいる場所に向かってダッシュで駆けて行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「へぇ~まあまあ良い感じの武器が揃っているじゃん!」
俺はレンタルコーナーのテーブル上に置いてある沢山の武器を目を移し、粗末なランクの武器があまり置いていない事に感心する。
「あっちの世界でもレンタル武器システムはあったけど、でもお世辞でも良いとは言えないレベルの最低クラスの物ばっかだったからなぁ......」
あっちで世界で最初の頃はまともに武器も買えなかったからさ、こういうレンタル武器にはお世話になった。
でもどれもこれも斬れ味が悪くて、討伐に倍近くの時間を取られてるのもしばしばあった。
「そんな粗悪品だから戦闘中に一度、ポキンと武器が折れた事があってさ。
あん時はホント死んだと思ったよ......」
俺があっちの世界のレンタル武器で苦労した日々を思い出していると、
「お!あったあった!私の求めていた武器さんがっ♪」
成美がテーブルの上に置いてあった一本の武器を手に取った。