110・ボコボコにしてもらっちゃうんだから~♪
うへ~!
改めて聞いてもホント何者なのよ、その桜さんって!?
屈強な男性を一方的にボコボコにするわ。
威圧感だけで人を気絶させるわ。
―――ハッ!?
ま、まさか将君!
その桜さんに、ほ、ほほ、惚れてなんていないわよねっ!?
だって桜さん。将君の目標でもあるランキング上位...その一番上の一位に君臨している人で、更に美人ときている!
さっきの将君の語りも、何かとても熱がこもっていたみたいだしさ。
も、もしそうだったとしたら、う、浮気だからね、将君っ!
う・わ・き・っ!!
私はそんな不安に心が駆られると、大丈夫だよねとばかりに顔を将君に向ける。
......あ!
し、将君のあの表情......?
ど、どうやらそういった心配は大丈夫みたいだね?
あの表情を見るに、桜さんに惚れた腫れたはなさそうだ。
将君の表情をジッと見つめるとその表情は恍惚とは程遠く、尊敬はしているがしかし恐れ率の方が多く含まれた表情を浮かべている将君に、私はホッと胸を撫で下ろして安堵した。
そして私は話を切り替える様に、
「でもさ。将君の話を聞くにランキング上位には将君もたじろぐ桜さんレベルの人達が他にもゴロゴロいるんでしょ?ならランキング上位に入るにはかなりキツいんじゃないの?」
話をランキング戦に戻す。
「......はは。そ、そうだね。めぐの言う様に、桜さんみたい連中がいると思われるランキング上位に入るには、多分想像以上に困難で無着な道のりかもしれないね......」
私の問いに、将君は諦めを匂わせるような苦笑をこぼす。
しかしそれも一時の間で、
「......でもだからといって、ボクはこのまま今のランキングに甘んじているつもりも毛頭ないけどねっ!」
将君の表情は負けるかとばかりに、気合いの入った表情へと変わっていく。
「おおぉ!そんな困苦と絶望の環境内にいるにも関わらず、自信と負けん気に溢れたその表現!流石は我が学校で一番の天才は伊達じゃないねぇ♪」
「......天才か。ボクなんてまだまださ。天才っていう称号は桜さんみたいな人こそ相応しい称号だよ......」
将君が頬をポリポリと掻きながら、私の誉め言葉に謙遜する。
「だからボクはそんな天才って言葉には自惚れずにエクトス学園で沢山の知識を学び、技を向上させるべく様々な修行をし、経験値を上げる。そしてその努力を糧として絶対にR二十ランキングの上位に食い込んでみせるよ!」
将君がイケメンフェイスでニコリと微笑むと、爽やかに自分の意気込みを熱く語る。
そんな将君に、
「うんうん、その意気だよ将君!頑張ってね!きっと将君ならそんな果て無き目標だろうとも、必ず達成出来るよ!私も将君の彼女として応援とサポートをいっぱいするからね♪」
恍惚な表情を浮かべて私はそう言葉にすると、将君の胸板に顔をペタンと付けてスリスリと頬擦りをする。
「ふふ。ありがとうめぐ!ボクもめぐの応援とサポートに負けないよう、一生懸命頑張るよっ!」
将君胸板に抱き付いている私の頭を静かに撫でながら、先程よりも満面の笑顔でニコリと微笑む。
「うん!頑張ってね、将君♪」
そんな彼氏の見せる最高で眩しい笑顔に対し、私も彼女として心からの満面な笑顔をニカッと返すのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
......くふ、くふふふ♪
いや~それにしてもホント爽やかなイケメン笑顔を見せてくれるなぁ、私の彼氏はぁ~♪
あんな優しさだけしか取り柄のなかった、地味で陰キャラの誰さんとは段違いの大違いだよっ!
あんな陰キャラ、さっさと見切りを付けて別れたのは英断だったわ♪
......まぁ別れたって言っても私が一方的に裏切っただけで、正式には別れてはいないんだけどねぇ。
でも半年以上も経っている訳だし、もう時効だよね!時効っ!!
だからさ、朔夜君。
まかり間違っても別れたくないって駄々をこねて私のストーカーになんてならないでよ?
「もしそうなったら私の完璧最高な彼氏、将君に頼んでボコボコにしてもらっちゃうんだから~♪」
私は人生で一番の汚点を蔑むような微笑の表情で頭の中からさっさと出て行けとばかりに追い払う。
「......ん?今何か言ったかい、めぐ?」
「え?ああ何でもない、気にしないで。どうでもいい中身のない下らない独り言だからさ。そんな事よりも将君。さっきも言ったけど、そろそろ卒業式が近いじゃない?だからさ、今からマドサイに寄ってエクトス学園でどう学園生活を過ごすか、その相談と予定を立てようよ♪」
「うんそうだね♪そういう事は早めに計画しておいた方がいいかもねっ!よし!そうと決まれば、少し急いでマドサイに行こうか?今から急いで行けば、人もまだそんなに混んではいないだろうしさ!」
「うん♪」
私はニコッとして将君の言葉に返事を返すと、カバンを手に取って席を立ちこれから入学する予定のエクトス学園でどう楽しく過ごすか、その話し合いをするべく、将君と一緒に軽い足取りで歩いて行くのだった。