109・R二十ランキング
「あ、そうそう!そういえば将君。この前の日曜日、決闘ギルドに行ったんだよね?それでどうだった?【R二十ランキング】の結果は?ランキングを上げる事は出来たのかな?」
私は先程の将君との会話で出てきた剣術という言葉でその事をふと思い出し、それを将君に聞いてみる。
【R二十ランキング】
十六歳から二十歳までの冒険者達の間で行われる、決闘ギルドが中心となって主催しているランキング戦の事だ。
「ん?ああ、R二十ランキングの結果かい?うふふ♪それがさ~、聞いてよめぐ!お陰様でランキングを三つも上げる事が出来たんだよ!」
私からランキング戦の結果を問われた将君は表情をニコッと爽やかな微笑みに変え、私に向けてVサインをビシッと突き出した。
「おおお!三つもランキングが上がったんだ!す、凄いじゃん、将君っ!うふふ、流石は私の自慢の彼氏さんだよ♪ランキング昇進おめでとう♪」
良い結果だったという将君からの報告に私はパチパチと賞賛の拍手をすると、ランキングアップのご褒美とばかりに将君の身体にギュッと抱き付いて両手を背中に回し、そして力いっぱい将君の事を抱き締める。
「えへへ。お褒めの言葉をありがとうね、めぐ!彼女のキミにそんなにも喜んでもらえるなんて、彼氏として頑張ったかいがあるってもんだよ♪」
私から称賛の言葉を貰った将君は、嬉しさからか頬を緩ませる。
「ホント凄いよ!このままの勢いで突き進めばさ、目標にしていたエクトス学園を卒業までにランキングの上位に入るって夢も、まんざら絵空事ではなくなってきたね♪」
「あはは♪うん、そうだね。めぐの言う通り、このままの勢いで事が運べば、ランキング上位に手が届くかも!......と言いたいけれども、でも残念ながらランキングの上位はかなりの強者だらけでね。そう簡単にはいかないってのが本音......かな?」
私の疑問に対し、将君が頬をポリポリと掻いて苦笑いをこぼす。
「うへぇ~嘘!?将君ほどの実力者でもそんな弱気になっちゃうほど、R二十ランキング上位の人って強敵ばかりなの!?」
口から自信のなさそうな苦笑をこぼす将君を見て、私は目を大きく見開き、その事実にビックリしてしまう。
「悔しいけど、ハッキリ言ってランキング上位連中とまともに戦っても勝算は殆どゼロだと思う。だからとあの手この手と策を練って戦ったとしても、やっぱり結果は手も足も出ないだろうね。これが今のボクの限界で現実さ......」
「ラ、ランキング上位の人達って、そこまで強いんだ!?」
「うん。特にランキング一位に君臨している絶対王者、桜さんには恐らく一秒も戦う事は叶わないと思うよ......」
「い、一秒!?」
将君が一秒も持たないの!?
R二十ランキング、ヤバ過ぎ!
そのランキング上位の人って、多分名前からして女性の人だよね?
「......ね、ねぇ将君。そ、そのランキング一位の桜っていう人、もしかしてだけど名前からイメージして女性の人......かな?」
私やランキング上位の桜さんって人が気になり、それを将君に聞いてみる。
「うん、そうだよ!桜さんはボクらよりひとつ上の女性でね、そしてボクらが春から通うエクトス学園の先輩でもある人なんだよ!」
「えええぇ!?さ、桜さんって、私達よりひとつしか年が変わらないの!?なのに将君以上の強者達を抑えてランキング一位ってぇぇえ!?」
将君から告げられる桜さんの想像以上の情報に、私は先程よりも更に目を大きく見開いてビックリした表情をこぼしてしまう。
「あはは、ビックリするよね。一度だけ桜さんの試合を生で見た事があるんだけど。その時の対戦相手は大柄で全身筋肉隆々の男性だったんだ。けどさ、桜さんそんな相手に全く臆びもせず物動じないどころか、殆ど一方的な攻撃で完全OKさせちゃったんだよ!しかもスキルを使わないで身体能力のみでだよ!」
「お、大柄で筋肉隆々の男性を一方的に......身体能力のみで!?」
うひえええ!?
マ、マジですかぁ~っ!?
「......はは。そ、それはもう、最早凄いって言葉だけでは言い表せないレベルだね、その桜さんっていう人......」
「こんな言い方をするのは女性に対して失礼かもしれないけど、桜さんって誰が見ても容姿端麗で羞花閉月なのに。でも戦っている姿はまるで鬼か邪か魔人みたいでさ。更にその試合中、身体全体に突き刺さってくる様な鋭い威圧を試合会場周囲にバンバン放っててね。ボク思わず気絶しちゃいそうになったよ。事実、ボクの周囲でかなりの人がパタパタと気絶していたもん......」
将はその時の試合......蹂躙という名の惨劇で桜の放つ禍々しい威圧感の感覚が甦ってきたのか、顔色をドンドン青く染めていき、そして背中の震えを止める事がなかった。




