106・古島に勝ったご褒美という名の幸せ天国
それから何事もなく体育の授業を無事に終えた俺は、体育館から教室へ帰ると別の場所で体育の授業を受けていた女子達が先に教室に帰って来ていた。
「お!朔夜くんが帰って来たし!おっ帰り~~♪」
「で。どうだった、古島との試合結果はさぁ?」
教室に帰って来た俺に気付いた心愛と亜依子が古島との勝負の結果が気になって待ち遠しいかったのか、それを聞くべくこちらに近付いてくる。
「で、勝った?」
「それとも負け......いや、あの古島相手にそれはないか?でどっち?」
「くくく♪勿論、余裕で勝ちましたよ!ハッキリ言って楽勝でしたね♪」
「おお!流石は朔夜くんだしぃ!パチパチパチパチプロ~♪」
俺はあいつとの勝負の結果を二人に報告すると、心愛が喜色満面の笑みを浮かべて拍手をしてくる。
「ふふ。やっぱり楽勝だったか!あの不良共を軽くあしらっていたもんね。慌てふためき脱兎のごとく逃げ出した古島がキミに勝てる道理が一個もある訳ないかぁ♪取り敢えずわたし達の敵討ちご苦労様、朔夜♪」
そして亜依子もまたよくやったという笑顔でサムズアップをピシッと突き出して、俺を褒め称えてくれた。
「そ、それじゃ...や、約束通り、し、勝利のご褒美を...あ、あげなきゃ......ねぇ!」
「―――え!?」
意を決した表情の亜依子が俺にゆっくり近付いて来ると、頬を赤く染めつつ朝の教室で宣言した約束通り、俺の左の頬にキスをしてきた。
ええ!
えええ!?
ママ、マ、マ、マジでかぁぁぁあっ!?
ホ、ホ、ホホ、ホントにキスされちゃったよ、俺ぇぇえっ!?
ヤッハャァァァァァアアァイッ!!
「はわ、あわわわ!?あ、ああ、亜依子のやつ!?ホホ、ホントにチューしやがったしぃっ!!?」
亜依子の大胆な行動に、俺と動揺と幸福の入り混ざった絶叫を心の中で荒らげ、そして心愛は目の前で起こった親友の大胆な行動に目を丸くして慌てふためいてしまう。
「コ、コホン!あ、あ、あーしも......や、約束しちゃったしなぁ~~!は、恥ずかしいけど、し、勝利のご褒美チューをしし、してやるっしょ!うう、受け取れしぃぃいっ!!」
「―――はう!?」
心愛はあわあわとテンパっている心を軽く咳払いし、気持ちを何とか切り替えると、表情を決心した表情へと変え、ドキドキと心の鼓動を鳴らしつつ朔夜の左の頬にソッとキスをした。
「うわわ...はわわわ......さ、左右のほっぺが幸せだぁぁあ~~っ♪」
ご褒美のキスを亜依子と心愛から受けた俺は、左右の頬に残っている二人の唇の感触に目尻を下げに下げたデレ顔で感涙の表情をこぼしてしまう。
そんな絶頂なる幸せの最中、
「ち、ちち、ち、ちょっと何をしているのよ、西城さん!風見さん!神聖なる学び屋で、そそ、そ、そんなハレンチな事をするなんてっ!?」
突然目の前で起こった亜依子と心愛のご褒美キスに対し、目を丸くした理緒さんの叫声が教室内に響き渡る。
「と、とにかくっ!さ、西城さんも風見さんも!光野君からさっさと離れなさあぁぁぁあいっ!!」
理緒さんの表情がお怒りモードに変わっていくと、物凄い早足でこちらに近付いて来て、亜依子と心愛を俺から引き剥がす。
「ほら、光野君もこんなハレンチな連中から離れて離れてっ!!」
理緒さんがギュッと俺の身体に抱き付く様な体勢で、亜依子と心愛の二人から俺を守る盾となる。
「ちょあぁぁあっ!ズ、ズッコいぞ、委員長!朔夜くんに抱き付くなんて!あ、あーしだって、朔夜くんに抱き付きたいしぃぃいっ!!」
「そうだそうだっ!あんたの行動の方こそ、ずっとハレンチ極まりないじゃんかぁ!わ、わたしも朔夜に抱き付きたいぞぉぉおっ!!」
理緒の行う行動に納得が出来ないと不満全開の亜依子と心愛は、目をキラリと光らせると朔夜目掛けて抱き付くポーズで飛びかかって行く。
「ええい!そこを離れるんだ、委員長!そこはわたしの特等席だぁあっ!!」
「いいや!そこはあーしの場所だしぃぃいっ!!」
「はぐっ!?ち、ちょっと!?ふ、二人がかりなんて卑怯ですよっ!!?」
「うっさいし!卑怯上等だっうのっ!過程なんてこの際どうでもいいしぃっ!この闘い、最後に勝ったもんがビクトリーだしぃっ!!」
「そうそう!卑怯だろうがなんだろうが、最後に残っている奴こそがこの闘いの勝利者なんだよぉっ!!」
「くぅう!い、言いますね、お二人とも!いいでしょう!その勝負、受けて立ちますわっ!」
「はぎゃ!?」
「のぎゃ!?」
自分に襲い掛かってくる亜依子と心愛を、理緒がカウンターで薙ぎ払う。