104・古島完膚亡きまでやられる
「新規登録をしたその日にランクがF級になっているという事はつまり、あの試合で良い成績を残せたって事か?ふむ、だとしたらお前に任せても大丈夫か......」
教師は冒険ギルドで行われたあの試合が、優秀者を探すものだと知っていたので、ならば光野に任せていいかと判断し、後ろに下がり身を引いた。
「くくく...俺の切り札を見たってのに随分と余裕じゃねぇか、陰キャラ!だが分かるぜ、正直ビビッているんだろ?ならカッコ付けてないで先生にピーピー泣いて助けてもらえよ?あは、あはははは~~♪」
古島は自分のスキルに自信があるのか、さっきとは打って代わった態度で加速させた身体を右に左にと素早く移動させながら、気持ちの悪いニヤニヤした高笑いで俺を挑発してくる。
が、
「あ、そういうのいいから、さっさと掛かってこい!」
そんな挑発など歯牙にも掛けない俺は、手をコイコイと曲げて逆に古島の事を挑発する。
「ぐぬぬぅぅぅう!こ、このクソぼっちの陰キャラの分際で調子に乗りやがってぇぇぇえっ!見てろや!そのすまし顔をこのマッハパンチで絶望へと変えてやるかなあぁぁぁああっ!!」
俺から挑発返しをくらった古島は血管の切れそうな顔付きで怒り出すと、拳を大きく後ろに振り上げて俺に向かって猛スピードで突っ込んで来る。
「......ハァ。さっきまでの余裕シャキシャキな態度はどこに行ったんだ、古島さんよ?お前、いくらなんでも沸点が低過ぎにも程があるぞ......」
自分は煽りに煽りる癖に、しかし自分がいざそれをくらうと途端に怒りを露にし出す古島に対し、俺は深い嘆息を吐く。
「やかましいぃいいぃいっ!お前は黙って俺の必殺マッハパンチを食らってりゃいいんだよぉぉぉおっ!!」
俺が古島の沸点の低さにやれやれと消沈していると、古島がスピードブースターの速さが乗ったパンチを俺に向かって右に左にと素早く繰り出してくる。
「おお、中々速い攻撃じゃんか、古島!流石は亜依子や心愛を置いてきぼりにして一目散に逃げ出した速さは伊達じゃないなぁ♪」
「う、うるせぇえっ!いつまでも同じ事をグダグダと言いやがってよっ!しつけぇぇぇんだよっ!このクソ陰湿野郎がぁぁあぁぁああっ!!」
「いや、お前がそれを言うなし!」
「な!?」
毎日毎日、恵美の事で俺にあれこれとウザ絡みをしていた奴が、何を言っているんだと半目の表情で呆れつつ、俺を叩き潰そうと次々に繰り出されてくる古島の腕を軽くギュッと掴む。
「お、俺のマッハパンチを意図も簡単に掴むだ―――だべぎゃ!?」
そして床に放る様にポイッと大きく投げ捨てた。
「ぐ、ぐぬぬぬ!くそ!ま......まだだぁぁあっ!!」
俺の手加減がまたまた上手く決まったお陰で古島はヨロヨロとだが、よろめきながら床から起き上がってくる。
「お、俺はまだ負けて......ねぇっ!」
そしてゆっくりとファイティングポーズをとって身構えると、再びスピードブースターを発動させ、俺に向かって突撃して来た。
「りゃぁぁああ!今度こそくたばれやぁぁああっ!!」
「あら残念、明後日の方向~♪」
再び繰り出させる古島の攻撃を、俺はわざとらしい小馬鹿にした態度で身体を右にひょいと片向けて軽く躱す。
「お、おのれ!ふざけた顔して俺を小馬鹿にしやがってぇぇぇえっ!このクソがぁぁぁあっ!!」
「残念至極、これまた遅い~っと♪」
続いて怒りに任せた裏拳で古島が攻撃してくるが、しかし俺は余裕の表情で身体をクイッと仰け反り、古島の攻撃を難なく躱す。
「クソ陰キャラがぁぁあ!ひょいひょい躱すんじゃねぇよぉぉおっ!男ならナヨナヨな回避なんかしてねぇで戦えやぁぁぁあああっ!!」
「ん?回避より攻撃がお望みなのか?だったらそうしてやる......ぜっと!」
「ぶろがぁあっ!!?」
俺は古島のご希望通り、あいつのパンチ攻撃を躱した後、それと同時にカウンター攻撃で古島のみぞうちに目掛けてエルボーをかます。
「あが...あがが......あが......」
「おっと!呆けてるところ悪いけど、攻撃はまだ終わってないぞ、古島!おらぁぁよっとっ!!」
「のわああんだぁああとぉぉお―――――ぎわばぁああ!!?」
間を入れず、古島の脇の服を力強く片手で掴むと、そのまま大きく上にスイッと持ち上げ、そして思いっきり床に向けてバタンと大きい音を鳴らして叩きつける。