102・古島との試合が始まる
「お!古島の奴、やっぱり光野と試合をするつもりだぞ?」
「あいつ、本当に光野に勝てるつもりでいるのかな?」
「光野ってさ、陰キャラの身なりしてっから一見弱そうに見えるけど、相手が強面不良だろうが、自分や身内に降り掛かる火の粉には、ヒヨらず迷わずボコッボコにするからなぁ......」
「ああ、俺もその現場を見た事あるから知ってるわ。その時の相手はチャラチャラした野郎だったけど、あれは少し同情しちゃったよ、俺」
「ホント海川さんに群がる男、本当に多かったもんな......」
「彼氏がいるっていうのに、光野が彼氏と知るや否や、ちょっかい掛けていやがったからな......」
「そして光野や断った海川さんに手を出す奴は全員もれなく返り討ちでボッコボコ♪」
「噂は流れていたんだけどな......」
「だというのに、あいつ正気か?」
「朝の古島の言動を見るからに、光野が自分よりも上だっていう事実を受け入れたくなかったんじゃねぇの?」
「陽キャラって生き物はプライドが人一倍に高いからなぁ......」
「ひょっとしたら何か打算があるのかもしれないぞ?」
「いやいや。あの脳筋にそんな柔軟な思考があるわけないって!」
「「「「だっよなぁ~っ♪」」」」
クラスの男子達が聞こえないくらの声で、光野に喧嘩を売る古島に心底呆れていた。
「よ~し、各自試合をする相手を見つけたようだな!じゃあまず最初は...そっちの組とそっちの組。前に出て試合の準備をしろ!」
「「は、はい!」」
「「お。俺たちか!」」
試合相手を見つけて元の位置に戻ったクラスの男子達は、教師の指示で次々と試合を始める。
――そして。
「よし!次は...そこの組とそのとなりの組だ!」
「うっしゃ!いよいよ俺達の出番みたいだぜ、光野!」
教師から俺と古島の組が選ばれると、古島が勢い良く立ち上がる。
「そっちの組は左、でお前達は右の対戦フィールドに移動しろ!」
「おら光野!ボケッとしてねぇで、さっさと対戦フィールドに移動っすぞ!」
「......ハァ。こいつ、ひとつひとつの行動が鬱陶しいな」
俺は陽キャラ特性の上から目線の古島の態度に軽く嫌気と苛立ちつつ、教師から指示された場所にゆっくりと歩いて行く。
「よし二組とも対戦場に立ったな。それじゃ試合開始!」
教師の試合開始の号令を受け、俺と古島の試合が始まる。
「くくく。さぁて覚悟は良いか、光野!俺のこの鉄拳でてめえの化けの皮を剥いで、てめえが弱っちぃ陰キャラだって証明をしてやるぜぇえっ!」
古島が高らかな叫声で高らかに宣言すると、拳を大きく振り上げながら俺に向かってドタドタと突進して来た。
うわ.....おっそ!
「食らえぇぇええやぁぁぁあっ!!」
「流石にそんな大振りなパンチには当たってやれんよ......」
古島の繰り出す拳を俺はひょいと身体を捻って難なく回避し、軽く受け流す。
「チッ!てめえ、避けんじゃねぇよぉぉおっ!」
怒りを露にした表情で、古島が拳次々に繰り出してくる。
しかしそんな古島の攻撃を先程と同じく、身体を受け流して軽く躱していく。
「ゼェ...ゼェ...ちくしょう!な、何でだ!何でちっとも当たらねぇっ!」
お、動きが止まった。
「んじゃ、次は俺のターンだな。昨日の手加減を思い出して...た、確かこれくらいの力加減...だったよな?」
俺は昨日の手加減具合のパワー量を思い出し、それを古島に実行する。
「あは、あははははは!何だよ、そのふざけたヒョロヒョロな蹴りはよぉぉおっ!そんな攻撃、俺に利くわきゃな―――――いがべぇえ!!」
俺は地面スレスレから上へと振り上げた拳で古島の土手腹を叩き殴ると、古島は天井高く飛んで行き、そしてバタンと大きな音を立てて床に落ちてきた。
「あ、あれ?」
俺は予想以上に吹っ飛んだ古島を見て、おかしいなと首を傾げる。
「な、なんだよ、光野の今の攻撃は!?」
「古島の奴、物凄く吹っ飛んでいかなかったか?」
「あいつの攻撃、ちょっと凄すぎじゃね!?」
「こ、光野の奴、もしかして冒険者ランク高いのか?」
「いやいや流石にそれはないんじゃないか?だって中学生の冒険者は殆どの奴がランク外って聞くしよ?」
「それにもし光野のランクが高いのなら、古島なんて軽くたしなめているだろし、それにもっと学校内で評判になっていても良いだろうしな!」
「だっよな。俺なら思いっきりドヤ顔で周囲に自慢してるぜ♪」
そんな男子生徒の言葉に、
「「「「俺も俺も!!」」」」
他の男子生徒も、うんうんと同意する様に頭を縦に振る。