アスカ 前編 ディアナの農場 6
アスカ達がディアナの農場に向かって数時間。
シアーナはディランから距離を取りながら、今か今かと帰りを待っていた。
「…あのな、チビ助。多分だけどさ。夕方まで戻ってこないぞ、あいつら」
「…分かっています…!」
「遊んで来いって言っていったのはお前だろ?もしかしたら明日まで戻ってこないかもしれない」
「…分かっています…!」
ディランが時々こうして、声を掛けるが、シアーナはもぞもぞ落ち着きがない。
心配しているらしい。そんなに心配なら着いて行けよ…と言いたいが、流石にそれは言えない。
それにとディランは思う。自分で言ったものの、アスカ達は今日中には絶対に戻ってくるだろうな。なんて確信があるのだから。此方からすれば、ほんの少しで良いので落ち着いてほしい所である。言えないけど。
「――!!」
そんな中。草原を見渡していると、シアーナが急に背伸びをするようにつま先で立ち上がった。
張りつめていた表情が安堵の物へと変わる。
――草原の向こう、見えたのだ。赤い髪をした人物の姿が。
そのシアーナの様子にディランだって気が付いた。気が付いて息を付く。
「…良かったな。――走って出迎えるか?」
「――!…私がそんな愛らしい性格に見えますか…?怒りますよ」
ディランの言葉に、シアーナは頬を膨らます。
プイっと顔を逸らして、それでもそわそわと、3人の陰が近づいてくるのを今か、今かと待つのである。
そんなシアーナにディランは思わず呆れる。
多分声を掛けなかったら、走り出していたんじゃないか?なんて。
同時にアスカ達が戻ってきて同じように安堵をしたのも確かだ。
しかし…、疑問も一つ。
――早すぎる。そう、確かな不信感を抱き、眉を顰めるのである。
そんなディランの不安もお構いなし。
草原の向こう、赤い影の近づいてくるスピードが速くなった。側にいたもう一つの大きな影も同じだ。きっと、彼女が同じように此方に気が付いて、競争でも始めたのだろう。シアーナは勝手に推測する。
あそこまで元気なら、きっとディアナの所でも楽しかったんだろうな、なんて。笑顔を浮かべた。
「おーい…シアーナちゃーん!」
笑顔を浮かべていると、アスカの声が響く。
ああ、意外だけどアスカって足が速いんだな。感心した。
自分を呼ぶ声も楽しそうだ。嗚呼、良かった…。なんて。――なんて。
「アスカさん。おかえ…り…なさい」
精一杯振り絞ろうとした声は、アスカの姿を見て、愕然としたように消えていくのである。
◇
「――…」
「はあ、はあ。よーし!いっちゃーく!」
目の前まで走って来たアスカが大きく肩で息をしながら笑顔を浮かべている。
少し遅れて、エイデもケニアスを肩車したまま走って来た。
「おま…、俺の事を少しは考えてくれ!」
「急に走り出すなんてひどいお!怖かったお!!」
「飛べよ!!顔に抱き付きやがって!せめて目は隠すな!」
「あはは!なんであろうと、私が一番なのです!なので今日の夕食は、おかずを一品貰うのです!」
目の前で、アスカ達が、ディアナの所まで行った3人が楽しそうに笑いあっている。
何事もないかのように。
エイデは体中野菜をぶつけられたように汚れていて。
アスカは頭に血の滲んだ包帯を巻いて。
その様子を、シアーナは呆然と、ディランは険しい顔で見つめていた。
2人とも何も言わなかった。何を言えばいいのか、分からなかった。
――…流石に無理があったか。
そう、察したのはエイデだ。目を逸らして頬を掻く。
2人が気にしない様に、明るく帰ろうと決めたが、無理があるに決まっている。
シアーナは、呆然とした様子のまま、口を開いた。
「…なにが、あったのですか…?」
当たり前の問いだ。
アスカだって、すこし笑ってから頬を掻く。
エイデが言った。
「…一応怪我の手当てはしたし、目立つ汚れも拭いたんだが…。やっぱり気になるよな?」
「当たり前です」
もう一度、頬を掻く。
呆然と見つめるシアーナを見つめて、エイデは溜息を一つ。
「ちょっと、な。…歓迎されなかっただけだ」
遠回しに、しかし隠すことも無く。
その言葉を聞き、ディランは直ぐに察しがついたのだろう。目を伏せる。
反対にシアーナが、気が付くには時間が掛かった。
数秒か、数分にも感じ取れた沈黙の後。シアーナの表情は悲痛な物へと変貌していった。
「あのね、シアーナちゃん…」
「…近くに川があります。其処に移動しましょう」
アスカが何かを言い切る前に青白い手がアスカの手を取る。
そのまま、シアーナは後ろを振り返ると同時にアスカの手を引っ張った。彼女の表情はアスカからは見えない。
アスカはそんなシアーナに何かを言おうとして、止めた。
笑みを浮かべて、エイデ達を見る。その表情から直ぐに察しがついた。
誰も何も言わない。小さなため息を零すだけ。
今にも泣きそうなケニアスを撫でながら、エイデはアスカの後を追う。
同じように、ディランもため息を付いて、その後を追いかけるのだ。
◇
アスカの頭の傷は、たいしたものでは無かった。
少し額が切れただけだ。
血流が良いため、見た目に反して血が多く流れているだけに見えるだけ。
ただ、シアーナは怪我に対して疎い。傷の治り方は知っているが、治し方は知らないし、手当も簡単な物しか知らない。本当はもっと深い傷かも知れない。
とりあえず、傷口を洗ってから、新しく綺麗なガーゼを押し当てて、更にその上から包帯を巻くだけで精一杯だった。
「ありがとう、シアーナちゃん」
手当てを終えればアスカはお礼を言って微笑んでくれるが。
シアーナは顔を背けて、つぎはエイデを見る。
川の水で、簡単に服を拭いている。彼。先ほどと比べれば綺麗になったが、あの服の染みはどう考えても何かの野菜や果物をぶつけられた痕だ。
それに、買い物に出かけた筈のエイデの鞄はどう見ても空っぽに近い。
その様子を見て、シアーナは嫌でも察しがついた。
――…何も買えなかった。それどころか、きっと村にも入れなかったのだ。
でも、それはおかしい。シアーナはディランに声を掛ける。
「…ディラン。ディアナの村は旅人問わず誰でも受け入れられるんでしょう?」
「…まあ、な」
重たげにディランが頷く。自分ながらに、余りに愚かな問いだ。
おかしい?その「おかしい」原因は一つしかない。
「やっぱり、情報は流れて…いたんですね…」
「先に言っておくぞ。確かに情報は流れていたが、殆どの“神”は信じてないとさ。あのディアナってやつとあそこの連中が過剰になっているだけのようだ」
シアーナが謝罪を口にする前にエイデが言った。
彼が気を使ってくれたのは直ぐに気が付いた。でも、それなら、なおさらだ。シアーナは俯いた。
「…ディアナは…昔から怖がりでした。怖がり過ぎて、些細な心配も耐えられないんです」
少しの間、ディランもため息を付く。
「…そんな怖がりな“女神”に集まった信者たちだ。あの村の連中もディアナと同じって訳さ」
その説明に、エイデは全て納得した。
あの村の異常な迄の雰囲気と、此方に対しての扱い。
ディアナが言ったそのままだった。「怖かった」ただ、それだけで此方はあそこ迄拒絶されたのだと。
それと同時に、シアーナが村に行こうとしなかった理由も。これで完全に理解した。
「…ごめんなさい」
我慢できずに、シアーナが口にする。
お前のせいじゃない、そう軽々しくは口に出来ない。
そんな言葉は慰みにもならない。
「…ちがうわ。貴女自身がどう思おうとも、私は貴女のせいだとは思えないもの」
しかしだ。沈黙も待たずに、アスカが誰よりも先にそう言葉を紡ぐ。
どうして、シアーナが問う前に、続ける。
「この傷は紛れもなく、あそこの村の人たちが付けたモノよ。石を投げて、作物を投げ来た愚か者は紛れもなく彼らだもの。貴女が謝る必要なんてない」
「――…」
「いいえ。ちがう。――…貴女に謝られても誰も嬉しくないし気分も晴れない。なんとも言えない罪悪感が募るだけだよ」
はっきりとした、真っすぐに突き刺さる言葉。
シアーナは肩を震わせて俯く。――…アスカは怒っている。だから顔を上げられなくなった。
アスカの言っていることは、分かるようで分からなかった。
彼女がなんと言おうと、原因はシアーナにある。それは確かだから。
だから、アスカの言葉は理解が出来ない。
でも、責めて欲しいとかじゃない。自分が悪いと理解していたから、謝っただけ。
どうして、アスカが拒絶するか分からない。
違う。初めて見せた、アスカの突き刺さる様な視線と言葉がどうしようもなく怖くてたまらない。
「――…コレも違うか。なんていうのかな?」
シアーナの様子を見て、アスカは迷う。
彼女も彼女でシアーナを責めたいわけでもないし、むしろ責めている訳でもない。
シアーナの謝罪に対して、怒っているのは確かだけれど、それは村での一件がシアーナの責任だと怒っている訳じゃない。何と言えばいいか。
それに答えたのは、エイデだった。彼は小さくため息を付く。
「――…卑下するな」
はっきりと。
その言葉に、シアーナはエイデに視線を向けた。意味が分からないと首を傾げる。
「さっきのアスカの言葉のままだ。俺達に石を投げたのは、あそこの村人だ」
「ですから、それは…」
「大元の『原因』はお前だろうさ。――…でもな、その『原因』は怯えても仕方が無い理由かもしれないが、石を投げて良い理由にはならない。全部自分のせいにし過ぎなんだよ、お前は」
僅かに、息を呑む。
まじまじとエイデを見つめて、アスカを見る。
彼女は、シアーナを真っすぐに見つめて、大きく頷いた。
――…彼らの言葉は、分かる。いや、やはり分かるようで分からない。
だって、誰がなんと言おうと、原因は自分に合って、それはどうしようもない事実で、それから。それから――。
違う。だって、だって。理解をしようにも、出来ないから。
『自分のせいじゃない』
この言葉を、肯定してくれる人は、誰もいなかったから。
コレも違う。だって、この言葉はいつもいつも思っていた。
――私のせいじゃない。
いつも、いつも、この言葉だけを考えていたじゃないか。なのに。なんで。
たぶん、望んでいた言葉を送られたはずなのに、受け取り方がどうしても分からなかった。
「――…」
シアーナは、分からなくて、どうしても分からなくて俯く。何か言葉にしようとも、声が出てこない。何を考えればいいのかも、何一つとして思いつかなかった。
そんな彼女の肩に、アスカはそっと手を置いた。
「わかった。じゃあ、こうして」
「…」
顔を上げれば、アスカはいつも通り笑っている。
「謝罪を口にするのを我慢しなさい」
「…え?」
「心で思ってしまうのは仕方が無い。顔に出ちゃうのもね。――…でも、口に出すのは我慢しましょう。だぶん、それがまずコレから貴女に必要な事だと思うわ」
――…どうして、アスカは、そんな事を言うのだろう。シアーナは首を傾げる。
「あはは。私もね、なんでこんなこと言うのか分からない。でも、多分…これが貴女が変わる為の最初の一歩だと信じてお願いします。今はまだ、卑屈で、自己否定ばかりでいい。でも、言葉にするのは駄目よ」
「それは、どうして…?」
「――…そうね、じゃあ、うん。私が嫌なの!」
アスカは何処までも笑顔で言い切った。
ただ、シアーナはその表情を見て口を閉ざす。
アスカは笑顔だ。綺麗な笑顔を浮かべている。
でも、その笑顔の中には酷く悲しげな、悲痛な色が帯びていたから。
「…わ、かりました…」
シアーナはその表情の前で頷くしか出来なかった。
理解はできない。でも、たぶん受け入れるのが正解。そう、考えて。
それに、確かに、アスカの為だったら出来るかな、何故だか、そう感じて。
シアーナの言葉にアスカは満足げな表情を浮かべる。
今は、それで十分と言う様に。さてと、と。立ち上がったのは直ぐその後。
「じゃ、十分休憩したし。そろそろ出発しようか!」
「――…あ」
笑顔で言うアスカの前で、シアーナは直ぐに…。嫌、ようやくと言うべきか問題に気が付いた。
アスカもエイデも何も言わないが、大きな問題がある。
それは今まで見守っていたディランだって、気が付いたようで、誰よりも先に問題を指摘したのも彼であった。
「――…話は終わり…は良いけどよ。いいのか?食料調達、失敗したんだろ?」
――…そう、問題は、コレだ。
ディランの言葉にエイデと、そしてアスカも黙った。
この様子を見るに、どうやら2人はあえて黙っていたに見える。ディランはため息を付いた。
「オレとチビはいいよ。元から食事は要らないからさ。でも、お前たちは違うだろ?」
続くディランの言葉。返したのはエイデだ。
彼は僅かに迷いを見せたが、笑みを浮かべた。
「心配いらねぇよ。まだ二日分の食料はある。それにな、自給自足だって十分出来るだろ?」
エイデの言葉にディランは溜息を付く。
「…ま、別にオレは止めないがよ。良いんだな?ディアナから盗むって形になるが、それで」
まるで全て読んだかのような一言だ。
少ししてエイデが口を尖がらせた。
「少しぐらい良いじゃねぇか…」
コレに、不思議そうに首を傾げたのは今まで静かに黙って話を聞いていたケニアスだ。
「?お前達、ディアナから施しを受けたくないんじゃなかったかお?ディアナの領地から作物を盗むことは、ある意味『施し』って言えるんじゃないかお?」
「…痛いところ着いてくるな、お前」
彼女の一言に、エイデは渋い顔を見せた。
でも、確かに。わざわざ村でディアナの施しを蹴ったのに、ここで彼女の物と呼べる作物を盗むのは如何なものか。バレることは無いだろうが。――…エイデはため息を付いた。
「安心しろよ。獣の肉を獲るだけだ。ま、いつもと比べれば質素なものになるだけで食うには困らねぇよ」
出した決断はある意味仕方が無いモノだった。
今、手元にある野菜類は節約しても4日程度でなくなるだろう。次の国までは一週間程度だと聞いている。足りない。でも作物が無くなるだけだ。食材が無くなる訳ではない。魚や獣は簡単に捕まえられるのだから、コレを次の町まで繰り返せば良いだけなのだ。何も問題はない。
ただ、エイデは僅かに残念と言わんばかりの表情。
「ま、最後の旅の食事が簡単な物になる訳だから、そこは悪いな」
――と。
この言葉に、更に表情を変えたのはシアーナだった。彼女は顔を上げる。
「――…駄目です!」
響き渡るシアーナの声。
突然の大声に、誰もがシアーナを見た。
何が駄目なのだろうか。何が問題なのだろうか。全員が疑問の視線を向ける。
その中でシアーナは真剣な表情をしていた。
だって、ダメなのだ。
だって、目標はまだ達成されていないのだ。だからシアーナは納得するわけには行かない。
――だって、まだアスカに楽しい思い出を作ってもらっていない。
そればかりか、ディアナの村では最悪な体験をした。コレは違いない事だから。
エイデが言った。コレが最後の旅だと。その通り。
これは無意味な旅路だ。それでも、この旅は一応次で終わりを迎える。
つまりだが、次の向かう先は、最終目的地『ソレイユの国』なのだ。
あの国にエルシューは居ない。アスカは疑問に思う事だろう。彼女がその先どう動くか分からない。もしかしたら、嘘つきと呼びシアーナから離れていくかもしれない。むしろその可能性が高い。
だから、その前に、シアーナはどうしても行動しなくてはいけない。それが微々たるものでも。
アスカに、元の世界に戻る事を諦めて貰う為に。この世界で楽しく暮らしてもらうために。
アスカにはこの世界が楽しくて素晴らしい、帰りたくないと思ってもらう必要があるのだから。
何度だって言う。それがシアーナの目的なのだから。
本当は、ディアナの村で楽しく過ごしてもらうはずであったのに、ソレが駄目になった。こうなれば最後の旅で巻き返すしかない。だから、妥協してはいけない。少しでもつまらない事は失敗だ。それは食事でも。
最後の旅路なら、思いっきり美味しい物で持て成してみようと考えたのである。
「ダメです…」
「何が駄目なんだ?」
最後の旅を否定するシアーナにエイデが眉を顰める。
少し考えて、シアーナは言った。
「最後の旅なんでしょ…?だったら、最後まで美味しい物を食べましょう…。お、思い出作りです」
精一杯の本音を混ぜて、一番隠したいアスカを返したくないと言う自分勝手な願いを消して言う。
彼女の正体も嘘も知っているエイデは更に眉を顰める。
アスカは突然のシアーナの発言に唖然としていたが、酷く困ったように笑った。
「それは良い考えだね、シアーナちゃん。そうだね、最後の旅だもん。小さい事でも思いで作らないとね。…でも流石に、ディアナさんの作物は盗みたくないな」
シアーナは再び黙った。
盗みたくないと言う、アスカの言葉からは罪悪感と言う感情はなく、嫌悪感が僅かに混ざっているのに気が付いたから。ディアナは彼女に何処まで失礼な事をしたのだ。
せっかく、カルトとインヴェンションの所で楽しい体験を積み重ねたと言うのに、それをぶち壊す様な真似をして。
シアーナは考える。コレからどうやって巻き返すべきか。
考えて、考えて、考えて、一つだけ、思いついた。
個人的に一番失敗しない場所が近くに在る。「ディアナの農場」と「ソレイユの国」の間。此処からだと2日も掛からない。打って付けな場所だ。
しかしだ。あそこは。
悩む、悩む、悩む。――いや、悩むなんて、ダメな事だ。
「――…分かりました。少しだけ寄り道をしたいです…」
悩んでいる暇なんてない。決断しなくてはいけない。
其れこそ、コレから先のアスカ達を信じて。…信じてみようと。
「寄り道したいところ?」
アスカの問いにシアーナは頷いた。
ただ、少しだけ、やはり悩む様子を見せて。
「…そこなら、数日滞在しても平気ですし、美味しい物も沢山あります。食材も分けてくれるでしょう」
思わず、ケニアスも含めた残りの四人が顔を見合わせた。
残念だが、ディランには心当たりがない。――ただ、ケニアスだけは何かを察したような表情を僅かに見せた。
「…お前が言うなら、信じるが。近いのか?村か?えー…“神”の領土だよな?」
「ここから2日程度。村です。でも“神”は居ません。…私が知る限りは…ですが。だれも手を出すことは出来ないと諦めた場所です。でも、どうせ通る場所です。進行に問題はないでしょう」
ここまで聞いて、漸くディランも場所だけは思い立ったようだ。しかし、ディランは首を傾げている。いや、理解できないと言う様に眉を寄せている。
「まて、自殺行為と言うか、村があるとか、オレ初耳なんだけど」
「…それは、まだ“神”は誰も手を出してないって事ですね」
「手を出すなんて無理だお?…そこを知っているのは僕とアネモネとガイルスとアクス、それからアプロだけなんだお…」
頭に疑問を浮かべるディランと反対にケニアスは怪訝な表情をシアーナに向けている。
いったい何があると言うのだ。エイデとアスカは顔を見合わせるしか出来ない。
少しして、アスカがシアーナを見た。
「私は良いよ。うん!私も美味しい物食べたい物!」
この瞬間、エイデが「食い意地!」なんて心で突っ込んだが、咳払いを一つ。エイデも頷いた。2人も行く気にはなったらしい。其処まで言うなら、という様子であるが。
シアーナは安堵した。ただ、直ぐに眉を寄せる。
「でも、お願いです…。この旅が終わってもその場所の事は、絶対に秘密でお願いします。何処にあるかも、どんな村であったかも、全部全部内緒でお願いします…!少しでも洩れたら私は心からあなた達を呪いますから!」
あまりに真剣に懇願する。
その様子に、ケニアスを除いた3人は息を呑む。
少しして、おずおずと言う様に再び顔を見合わせるしかなかった。
「――大丈夫、約束する」
それでも少しして、我に返ったアスカが言う。真剣な眼差しで、誓ってくれる。
それはエイデも同じだ。勿論ディランも。彼女に続いて大きく頷いてくれる。
その様子に、シアーナは目を閉じた。まだ、思い悩む。
ああ、何を悩んでいるのだ。自分自身に叱咤を掛ける。彼らを信じると決めたのだから、覚悟を決めろと。
「――…分かりました。では、案内します」
「ま、まて。どこ行くかぐらい教えろよ」
エイデが言う。
シアーナは一応あたりを見渡して、誰もいないのを確認する。
数分かけて、周りに誰もいないのを確認したし、ケニアスにも頼んで確認してもらった。
誰もいない事を確認して、シアーナは息を付く。
そして、ゆっくりと口にするのだ。
次の目的の場所を。彼女がずっと、ひたすらに隠している場所の名を。
「場所は『終わりの森』――ククウィック族の村です」
――と。
次回更新は未定です。




