アスカ 前編 カルトの町 6
カルトの町の大広場。
大きなステージが置かれた端で、シアーナとアスカ、そしてディランが集まっていた。
そこはカルトに用意された大会参加者達の小さなテントだ。そのテントの隅でさっきからディランは蹲っていじけている。
そんな彼に視線を送らないようにしながら、少し待っていると、そこへ戻ってくるのはエイデ。
片手に一つの紙袋を持ち、テントの中に入ってきた。
「説明、聞いて来たぞ」
「あ、お帰りなさい!」
紙袋を机に置くエイデにアスカが近づく。
今回のコンテストの説明に行っていてくれたのだ。
「それで、どんな感じだった?」
「んー。まあ、普通だな。普通の料理コンテストだよ」
エイデは先程説明を受けたことを思い出す。
それは本当に簡単な物だ。
時間は一時間。最大4人のチーム制。作る料理は自由。食材や器具は用意済。
開始はこれより20分後。そしてシアーナ達含んで参加人数は3組という少なさ。
そんなあまりに簡単な料理コンテスト。むしろ此方に合わせてくれている節へ見える。
あの狂った祭は何処へ行ったのか。
ちなみにだ、因みに。料理コンテストだ。そう決まった。というか、そう決めた。
それに関しては30分前。
――。
「で、どうすんだ?料理コンテストと、萌え萌え…?ソング…歌コンテストか?どっちにするんだ?」
とりあえず、祭り参加は仕方が無いとして、どちらを開催するか。それが問題になった。
カルトは何方でもよいと此方に全投げ。
「料理コンテスト」「萌え萌えソングコンテスト」。
エイデは眉を僅かに顰めて、3人に問いかける。
首をかしげたのはアスカだ。
「萌え萌え…って良く分からないんだけど。歌コンテストなの?」
「…たぶん…そうですね…可愛らしい女性が、可愛らしい歌を歌う感じじゃないでしょうか…」
完全に元気が無いシアーナがアスカの疑問に簡単に答える。
コレを聞いて、アスカは顔を上げる。その視線の先にはエイデ。
「…ま、俺は完全に向いて無いな…無理だろ」
「そんなこと無いよ!エイデさんならいけるよ!!」
「無理だろ!?考えてみろよ!大の男が、可愛らしく歌を歌うんだぞ!?」
「…エイデさんなら大丈夫だよ!!!」
「適材適所がいるだろ!!?」
「全員参加だもの!」
なんだか空しい言い争いだ。
そんな折、カルトがチラリ。
「あ、そうだね。一人がかわいーくばっちりな振り付け付きで踊ってくれるんならぁ、他の人はバックダンサーと合いの手でいいよー」
「…」
「………」
…彼なりの気遣いのつもり…なのだろうか?
それもそれで難しいのだが…。しかし、有難く受け取っておくべきなのだろうか。
少なくともエイデでは歌コンテストは難しそうだ。なぜ萌え萌えなのだろうか?…残念だ。
コホンとエイデは咳払い。
「ま、あ。…参加することになったなら仕方が無い。優勝を目指そう」
「…賞金30万ですもんね」
「4人旅で節約すれば2ヶ月は余裕だっけ…?」
「――…シアーナはどうだ?お前ならいけるんじゃないか?」
「…ええ!?!?」
後から提示された優勝賞金にエイデが完全に目がくらんでしまったのはさて置いて、彼はシアーナに振った。
エイデから聞いてもシアーナは幼く可愛らしい声をしている。以外に行けるのではないか。
その視線にシアーナは目を泳がせた。
「え、えーと…私、萌えソングとかよく分かりませんから…」
もぞもぞ指を絡めて動かす。
エイデだけじゃない。アスカだって期待した目で見ている。
もぞもぞ…。もぞもぞ…。
きょろきょろ…。きょろきょろ…。
「完全な萌えソング?じゃなくてもいいだろ。それっぽく歌え!」
「………」
エイデからすれば萌えソングなんて知ったモノでない。
ただ、シアーナは知っている様だ。
なら、彼女に知っている曲を、それっぽく歌って貰うだけで良い。そう考えた。
しかし、シアーナは、もぞもぞ…きょろきょろ…。
1分ほどして、俯くと漸く口を開く。
「…あ、あの…その…わ、私、讃美歌とか鎮魂歌でしたら…」
「………」
おっと、斜めに来た。流石にその2つなら二人も知っている。
二人とも其々違う世界の住人だけど。分かる。――それは萌えソングにはならない…!
「あ、あの…あ、アメイジンググレイスとか…。あ!す、スカボローフェアなら…!」
「………」
もじもじ、もじもじ。目を逸らすシアーナ。
アスカはキリっとした顔。
無言のまま、そっとシアーナの手を取った。
「…私は聞いたこと無いけど、その2つはとっても素晴らしい歌だと思う。正直、聞きたい。――でも、それは多分今じゃない!」
「――…で、ですよね…」
その曲らが素晴らしいのは保証しよう。でも、今じゃない…。萌えソングは…無理だ――。
シアーナはもぞもぞ恥ずかしそうにフードを被ってしまった。
こうなれば、シアーナも歌うのは難しいのは違いないだろう。
…だったら、後は仕方が無い――。
アスカはキリっと左手を腰に当て、右手を高らかに上げた。
「分かった!仲間からは音痴と絶賛で、お前は本当に歌だけは残念だなとか言われたり、ミサではエミリアからは口パクで歌いなさいって言われた私だけど、私が行きます!!」
――いや、そんな自信満々に言われても…。
「まてまてまてまて!!!!――どうしていけると思った!?」
勿論エイデは阻止。
いや、本当にどうしてソレで行けると思ったのだろうか。アスカ。
でも無理な物は仕方が無い。アスカはしょんぼり顔で手を下す。…歌いたかったんだろうか、アスカ。
しかしだ。こうなれば問題だ。誰が歌うか。
エイデは無理。シアーナも無理。アスカも無理。――となれば、後は一人。
――全員の視線はディランに向けられた。
「…は?」
「――『は』じゃない。ディランしかいないと思う!」
「そうです、ディラン言っていました。“発明”のおかげで女性の声が出るんでしょう?いきましょう」
「い、いや、は?行きましょうって…!?」
唐突な推薦である。
でも確かに、ディランは今こそ声は男性のままだが、変声機で声を変えられる。
その時の声は女性そのものであるし、綺麗な声をしていた。可能性はある。
「いや!?ま…!」
「ディラン、歌ってみてください。歌ってください。ほら」
「そうだよ、ディラン!思いっきり!!」
「そうだぞ!行ってみろ!お前だけだ頼りだ!!」
「え…?ええ?……え?」
3人分の期待に満ちた目。
反対に本人は、まさか自分に白羽の矢が立つとは思いもしていなかった。
何せ、ディランも男だ。姿は女であっても男なのは違いなかったから。声もそうだ。
エイデが無理と判断されたのだから自分には関係ないと今まで黙って見ていたのである。しかしコレだ。
ディランは慌てふためいた様子で周りを見渡していた。
そんな、ディランだって無理である――!
――ああ、でも。あの。アレ。
みんなの期待の目が痛い。凄く痛い。
何より、シアーナの視線が。
――。
―――。
――――。
おれは海の男だ、いっえーい!
今日も、海に行くぞー
ざぶーん、ざぶーん
いつも魚ばかり、文句言うなー
今日も大量だー、青い海ー
ざぶーん、ざぶーん、ざぶぶーん!!☆
作詞、作曲 ディラン
……。
……ディランは高らかに歌った。
――…上手い。
すごく上手い。音程はしっかりとれているし、変成器を使っているとはいえ無駄に美声。
上手いのだけど…。たけど…。
なんと言うか、男らしい…。
「…ディラン。もっと萌え萌えしく歌ってください」
「――…!?……!!…?!!?……!!!?……?」
――5度見された。
ああ、察する。
コレは無理!
「…駄目ですね。料理コンテストにしましょう」
――。
―――。
――と、まあ、長々しくなったが、こういう感じで決まったのである。
ちなみにディランが不貞腐れているのはコレが理由だ。
そもそも振付が付いる時点で無理があろう。
何はともあれ、料理コンテストと決まった訳だが。アスカは参加人数に首をかしげた。
「参加人数少ないね。全員参加じゃないの?」
「ん?あー、ほら普通にって決まった…から、らしい。ま、ほら町全員で料理コンテストは色々と問題がな…。ただ、参加する連中は酒場の店主とレストランの店主だとよ」
エイデは少し思い出す。先程説明を受けているときに町の全員でやるんだと駄々をこねまくるカルトの姿を。町全員で誰が早く料理百品作れるかな?をやるんだとかなんとか。
食材が無い。町の食料全部無くすつもりか?今後を考えろ、と呆れ顔のアクスレオス。カルトの我儘は無視された。今年は普通の祭りで決定なのだとかなんとか。
もし本当にカルトのそれをやったら、今後何人の餓死者が出るか…。考えただけでも恐ろしい。
それはさて置き。
「で、料理対決はいいとして、何を作る?」
話を戻し、エイデが問う。
この4人で協力して料理を作らなくてはいけない。
難しい料理は無理なのは目に見えていた。簡単なのはスープ物だろうが。
「審査員はカルトだとよ…ま、あたりまえか…」
「じゃあ、カリーにしよう!」
エイデが何を作るか、悩んでいるとき勢いよくアスカが答える。
机の上の袋からふりふりのエプロンを取り出し見ていたシアーナは小さく首をかしげた。
「かりー…?もしかして、カレーのことですか…?茶色の、辛い、スープ?」
「そう、それ!私昔に一度みんなで作って食べたことあるの!もうすごくおいしくて!みんな大好きだよ!リンゴを隠し味に入れよう!」
初耳だった。
アスカは意外と料理が好きな所があるのか。何時もは昼食も夕食もエイデが作っていたから、彼女は料理が苦手だと勝手に決めつけていたけど。…意外である。
「カレーね、いいんじゃないか?アスカが簡単だと言うなら簡単だろ」
エイデも賛同する。
ここで、というか…と付け足すエイデ。
「そもそも俺は料理が得意って程じゃないからな」
「ええ…そうですね…だと思いました…」
それは知っている。
エイデの料理は、なんと言うか、豪快なのだ。
大体が丸焼きであったり、スープは味付けが塩だけなのが当たり前で、不味いとは言わないが凝ったものは作った試しがない。
元から食事を作らないディランよりはマシなのは確かだが、エイデもお世辞でも料理が上手いとは言えないのも確か。
だから、とエイデは笑う。
「このメンバーじゃ、簡単な物の方がいいだろ!」
「は、はぁ…そうですね…。カレーが簡単かは、知りませんけど…」
彼の言葉は一理あった。
確かにだ、今のメンバーでは簡単な料理で精一杯だろう。これで優勝を目指そうとしているエイデには驚きしか感じないが。
「大丈夫!大丈夫!!」
何処かしら不安を感じるシアーナに、エイデはにこやかに笑う。
彼のその自信が何処から来るのは本当に不明なのだが。
というか、なんだか、嫌な予感がしたのはこの時だった。
シアーナは妙に勝ち誇ったような表情のエイデを見て、首をかしげる。
いや、エイデだけじゃないのだ。アスカからも全くの不安を感じないのだ。
確かにカルトの気が狂った祭から抜け出し、(意味も無い)平和的な料理コンテストになったが、だとしても。ちょっと二人とも楽天的…違う。
なんで二人とも、そんな安心しきったような、勝ち誇ったような雰囲気を出せているのか。
危険な祭りじゃないが、勝敗に関しては見えてもいないと言うのに、だ。
「あの…お言葉ですけど…。エイデさんは料理が苦手ですよね…?ディランも料理は作れないようですし、そんなにアスカさんは料理が上手なのでしょうか…?」
カレーを作る。こちらは良いとして、本当にコレ。
何度も言うが、なんで料理が苦手と言うこのエイデ。もう勝利した雰囲気を出しているのだ。
そんな疑問のままに首をかしげているシアーナに、エイデは笑顔で彼女の肩を叩いた。
「心配いらねぇよ。――俺達には『妖精さん』が付いているからな…!」
「――…は?」
シアーナ、硬直。
この男、今、笑顔で、何を――。
「何を言っているのです?なんです?頭大丈夫です?妖精さん?」
思わず、聞き返す。
エイデは頭がおかしくなったのか、何かアレだ。幻惑でも見ているのか。まさにそんな勢いで、なんとか平静を保って問いただす。
けれど、エイデ、当たり前に答えた。
「ああ、『妖精さん』だ。毎朝、俺達に朝食を作ってくれる心優しい。『妖精さん』だ!」
「馬鹿でしゅ!?」
――思わず、噛んだ。
ああでも仕方が無い。だって、だってだ。
今この状況で、大会目前と言う状況で、こいつは、この男は、居もしない架空の『協力者』に、縋ろうとしたのだ。――そう、シアーナが焦るのは仕方が無い。
「馬鹿じゃないよ、シア―ナちゃん…『妖精さん』の料理の腕は確かだから…!」
そればかりか、エイデだけじゃない。アスカも笑顔でガッツポーズ。
どうやら、アスカも自信満々に、まさかの『協力者』に頼ろうとしていた訳だ。
これに黙っていられないのは、勿論シアーナ。慌てたように首をぶんぶん横に振った。
「協力者は朝にしか出ないし、人前にも出ません。アレです。人間の前に姿を現す事が出来ないんですよ」
「それは知ってる。けどな、考えがある」
それは知っている…とは?それに、なんでエイデはそんなに自信満々に頷けるのか。
『協力者』はアレだ。姿が無くて、朝の誰も見ていない時にしか姿を保っていられない神秘的な、アレなのに。
今ここで姿を現すどころか、実体化も出来ない非現実的なアレなのに。
しかしエイデ、いい笑顔。
「簡単だ。シアーナ、お前に『妖精さん』を憑依させればいい…!!」
「馬鹿れしゅ!!」
――思わず、かんだ。
いや、いやいや。
いやいやいやいや!!!
この男、正気じゃない…!冗談もほどほどにしろ!
シアーナは内心パニックになりつつもエイデの言葉を整理する。
整理して、目の前の男が本気の目をしているのを確認する。
「馬鹿なのれしゅね!!!!」
――…思わず、かんだ。
「馬鹿でも冗談でもねェ!本気だ!」
エイデ、真っ向から全否定。いや、むしろ本気。
本気で、この料理勝負。『協力者』で勝ちを取りに行こうとしているのである。
そればかりか、エイデの隣に居たアスカもそう。
彼女も本気の目をしてシアーナに迫る。
「私もソレが賛成だよ!シアーナちゃん!!」
「アスカさん!?」
「『妖精さん』は最高の料理人だよ!『妖精さん』の料理はずば抜けて美味しいよ!だから呼び込もう!」
――いや、呼び込もうじゃないのだが。
しかしだ、彼女は真剣に心の底から本気で迫って来たのである。
これにはシアーナ、困る以上の難題。
こいつら何言ってんの?頭おかしい。――そう、言ってやりたいが。言ってやりたいのだが。
目の前の二人、本気中の本気。
2人して声を上げて『妖精さん』…じゃなかった協力者を褒めたたえる。
その料理の上手さを、全身全霊で褒めたたえる。
「妖精さんなら絶対に勝てる!」
「勝てるって、だから協力者は…」
「妖精さんが頼りなの!だからシアーナちゃんも頑張ろう!」
「あの…そもそも私、料理作ったこと無くて…憑依とか無いですし…」
「おい妖精…さん、近く居るんだろ!?その腕前を見せつけてやれ!」
「え、えと、ですね…協力者も、重荷と言うか…あの…」
「そうだよ!見せつけてやれ!美味しい料理を!妖精さん!!」
「――…」
2人、これでもか…と言わんばかりに『妖精さん』の料理を褒めたたえる。
もう右から左から『妖精さん』コール。
いや、その『妖精さん』を憑依させるのも決まっているらしい。シアーナ頑張れコールまでプラス。
そんな二人に挟まれて、シアーナはただ焦った様子で左右を交互に見るしか出来なかった。
もう、こんな大会、エイデ達に任せて隅で縮こまっていようと思っていたのに。
出たくない。出たくない。目立つ事したくない。カルトにこれ以上関わりたくない。――あ、でも…、コレは…!
「――…協力者、降臨しました。今私に憑依しました…カレーは初めてですけど、頑張ります…!!」
「よっしゃ!!」「やったぁ!!」
――たった今、正にシアーナに『妖精さん』は憑依を成功させた…。
もうこうなれば、勝ち確である。なにせ『妖精さん』。
自分は食べない癖に料理だけは無駄に上手い。長い年月、暇と言う理由で料理本を熟読。200年ほど前に一度料理が本格的な趣味になったこともある、最近は食べてくれる人が出来たから、本当はもっと料理をしたいと願っていたのだから。
自信ないけど、シアーナも自信は無いけれど。
其処までいわれたら、頑張るしかない。カレー、楽しく作ろう。
――この様子を見ていたディランは苦笑いを浮かべるしかなかったと言う…。
「そ、それでは。カレーを作ると言う事ですが、私とアスカさんがリーダーとしますが、協力者さんから聞きたいことがあるそうです」
それはさて置き、もうこうなったら仕方が無い。
シアーナは腹を括って、エイデと、戻って来たディランに向き直った。
カレーを作る。コレは良い。カレー作りはシアーナと、カレー作り経験者のアスカが率先して行う。これも決定。
と、なれば問題は二人であるからだ。
主な問題はたった一つ。
「お二人は、何処まで料理が出来ますか?大雑把でいいです。とくにディラン」
――コレ。
この2人が何処まで戦力になるか、何ができるか。コレが問題である。
シアーナの問いに、エイデとディランは顔を見合わせた。
「――」
「あ、言っておきますが、焼く、煮る…以外でお願いします」
エイデが何か口にしようとしたが、その前にシアーナは選択肢をつぶして…いや、先に忠告を入れておく。
いや、今回作るのはカレーだ。焼く…は必要ない。
もっと言えば、何時もエイデがしているような、丸焼きは必要ない。
カレーはスープ…鍋料理なので煮るのは決定済み。だから、それ以外で二人は何処まで何ができるか。…これが問題である。
二人は、黙った。
黙って、数秒。口を開いた。
「火をつける」
――と、エイデ。
「混ぜる」
――と、ディラン。
おい。
おいこら。なんでそんなに自信満々に答えた。
まずエイデ、頓智じゃないんだぞ。
焼くと煮るの選択取っただけなのに、なんで突然馬鹿になった。
いや、確かにエイデは普段から大雑把な料理か作らないけど。ゆで卵ぐらいしか、凝ったものは作らないけど…。他にもあっただろう。
そしてディラン。
混ぜるってお前。混ぜるって。
むしろお前。混ぜるを取ったら何ができる?
いや、混ぜる事しか出来ないお前は一体なんだ。ままごとか。せめて“切ろ”。
しかし…しかしだ。
「あ、うん。はい…火をつけるのは…必要ですから…。混ぜるのも…必要かと…」
分かっている。ここで余計なことは言わない方が良いと。2人の実力は良く分かった。
問題なのは後々、アレンジと称して変な物を入れられる可能性があると言う事。
火をつけて、無心で混ぜて貰っていた方が何倍も良い。
二人はアレだ。その後はサラダでも作っていてもらおう。――シアーナはそう決めた。
「おーい、時間だよー?」
心に決めたと同じ頃、カルトのうっきうきの声が聞こえた。…時間の様だ。
ああ仕方が無いとシアーナは溜息。
それでもやり切るしか無いのだな…なんて心の隅で思いながら、料理コンテストは始まる。




