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残酷で、ただ残酷なこの世界  作者: 海鳴ねこ
1章 暁の魔女
10/39

アスカ 序章1



 酷く冷たい風が吹く、暗闇の世界。

 この世界で“死”と呼ばれる少女は、ただぼんやりと足元を見下ろしていた。

 彼女の瞳に映るのは人間。

 真っ赤な髪をした、一人の自分と同い年ほどの少女。


 ――ああ、またか。

 

 死は呆れたように息を付いた。

 これで何度目だろう。そう小さく言葉をこぼす。

 頭に浮かぶのは、あの真っ白な神を名乗る“生命”の優男(エルシュー)

 これはあいつの仕業に違いない。

 ()を嫌い()をどうにかして消そうと躍起になっている。正義の神。

 少女(コレ)はあいつが呼んだ、正義の味方だ。


 ――全く持って馬鹿馬鹿しい。

 “死”は心から呆れ果てる様に舌打ちを繰り出した。


 この少女は異世界人だ。

 文字通り『異世界』からやって来た。エルシューによって連れて来られた存在。

 別の宇宙から連れて来られたと言った方が正しいか。

 なんにせよ、『別世界』と言う全くの無関係の人間を巻き込むエルシューに本当に嫌気がさす。

 甘い言葉で、優しい口調で、さも自分達は被害者だと泣きながら、同情を誘って、誑し込んで、手あたり次第に、人の良い間抜け達を誘っては連れてくる。



 その癖、呼ぶだけ呼んで、連れてくるだけ連れてきておいて、エルシュー()には()()を元の世界に返す手段()が無い。

 助けを求めて連れてきておいて、後は放置。これは無責任の何物でもない。


 そもそもと思う。

 この世界では“死”の加護が無ければ『異世界』からやって来る『彼ら』は存在すら出来ない。

 数時間で塵となって消えてしまう。塵となった『彼ら』がどうなるかは分からない。

 元の世界に帰っているのか、はたまた死んだのか。知る術はない。

 この世界に留めて置く力も無いくせに、エルシューは何の目的で『彼ら』を呼ぶのか。

 仕方が無いので、そのたびに“自分()”が力を貸していたが、正直嫌々でしかなかった。

 だって、助けようとした『彼ら』は、結局は“(自分)”に石を投げて罵倒するのだから。


 何故自分を殺そうと躍起になる連中に“死”が力を分け与えなくてはいけないのだろうか。

 どうして、人間(彼ら)の為に“(自分)”が損をしなくてはいけないと言うのか。

 とうの昔に、人間には飽き飽きした。どの世界の住人もみんな同じ。

 弱いくせに、何の力も無いくせに、威勢はよくて、“()”の正体を知ると恐怖で涙を流す。

 嗚呼、頭が痛くなる。


 ――そもそも、『異世界人』を巻き込んだら駄目なのに…。

 だから“死”はイラだった様子で舌打ちを繰り出すのだ。

 

 ああ、でも今は無駄に悩んでいる暇はない。

 “死”は気を失っている少女を見下ろす。

 気を失っているのなら手っ取り早い。

 “死”は感情のない目で、目の前で倒れている少女に手を伸ばした。

 


 何、彼女が目覚める前に事を済ませれば良いだけだ。


 彼女は何も知らないまま、何も分からないまま、

 ――()の世界で目を覚ますであろう。


 いつもと同じ。

 目が覚められたら、温情を掛けたら厄介なのは身に染みて分かっていたから。

 その前に送り返すだけで良い。


 「元の世界に返す」

 それが“彼女”が『異世界人』に与える事が出来る唯一の温情。



 ――

 ――――。

 


 ――ふと。

 “死”の手が少女に触れる前に止まった。


 「……。」

 “死”の瞳は少女を映し、小さく息を吸う。

 改めて見た彼女は、整った愛らしい顔立ちのせいぜい16年ほどしか生きていない人間の少女。

 彼女を元の世界に送り返すのは簡単だ。ただ、強く疑問に思ったのだ。

 この子は一体何をしたのだろうか。何を成した子なのだろうか。どうして――と。


 …少しの間。

 “死”は目を細める。

 首元に伸ばしていた手を引いて、わずかに震えながら今度は彼女の手に手を伸ばす。

 指先がわずかに少女の手に触れた。

 

 指先からは微かに温もりが感じ取れる。


 「…やっぱり、暖かいんだ…」

 指先から伝わる確かな、久しぶりの温もり。

 死はポツリと呟き、空を見上げる。


 これはほんの少しの余興。苦しい毎日の暇つぶしとしましょう。

 ――そう決めて。


 嗚呼、人間を側に置くのは本当に久しぶりだ。もう何百年も昔の事だ。

 今度は、()は、いいや彼女は、自分をどんなふうに扱い、どのように接してくれるだろうか。

 不安しかない中で、“死”はふらりと立ち上がる。

とりあえず、此処から離れる事にしよう。自分の隠れ家にでも行こうと決めて。


 「ああ、でもこの子何も無いな…。本当に何もないよ」

 側に倒れる赤毛の少女を見つめて溜息をこぼすのだ。

 

 真っ白な手が地面から来たのは次の瞬間。

 少女を担ぎ上げ、“死”はブツブツフラフラと夜の闇の中に消えていった。




 ………。



 良い…いい香りがする。

 バターが軽く焦げた匂いにお米と甘い牛乳の香り。

 真っ暗な闇の中で「ぐぅ」と自身のお腹の音が鳴ったのが分かった。

 お腹の音を聞きながら、暗闇で思う。

 ご飯食べたの、何時だっけ?今何時だろう?

 「…お腹すいたなぁ」

 なんて、間抜けだなと内心思いながら、少女はオレンジ色の瞳を開いた。


 ボンヤリと目に入るのは見知らぬ天井。

 何となくあたりを見渡せば、側に人影が一つ。

 多分ベッドの側。自分はベッドに寝かされているのだろう。その側。

 椅子に腰かけ、静かに本を読んでいる。知らない子。


 …いいや、いいや。この子は知っている。

 毛先に緑のグラデーションが掛かった肩までのブロンドの髪。十字の模様が入った特徴的な大きな紫の瞳。

 この子は、彼女は知っている。

 ――だって、昔からずっと一緒に育ってきた幼馴染なのだから。


 「エミリア!!」

 だからこそ、少女はベッドから飛び起きて側にいた“彼女”の肩へと掴みかかった。

 オレンジ色の瞳に“彼女”が映る。真っ黒なローブを羽織った。目をまん丸にして驚いている、その姿が。



 「…うへ!?」

 “彼女”の姿を目にして、少女は素っ頓狂な声を出した。

 慌てたように掴んでいる細い腕から手を放して、瞬き一つ。

 しかめ面で目を擦り、また瞬き。

 そして目に見てわかるほどに、もう一度慌てた表情を浮かべた。


 「ご、ごめんね!!人違い!!」

 「……」

 少女は未だに目をぱちくりとしている、目の前の“彼女”に手をぶんぶん振りながら謝罪する。

 “彼女”は何も言わない。

 当たり前と言うべきか、二人の間に気まずい沈黙が流れた。

 少女は「ええと」「そのう」と口籠り。目を泳がす。立て続けに「ぐぅ」とお腹の音。


 少女の顔が見る見るうちに赤くなる。当たり前である。

 まさか初対面の子を前に、人違いを起こした上に、こんなに大きく腹の虫を鳴らす事になるなんて、誰が思えようか。

 いや、しかし。

 もう一度、目の前の子を見るが、“彼女”もまた驚いているのか此方を見たままピクリともしない。

 ――ならばと少女は決意する。


 ガシッ

 と青白い“彼女”の手を、少女の手が握りしめた。

 そして、期待に満ちた瞳を驚く“彼女”へ向け、


 「初めまして!私はアスカ!アスカ・ピエリス!!初対面唐突で申し訳ないのだけど、たぶん私を助けてくれた人と思ってお願いします!!――何か食べ物無いかな!!」


 全く持って唐突に。少女、アスカは恥も全てかなぐり捨てて、満面の笑みでお願いするのだ。



 ――少しの間。

 呆然としていた“彼女”が、目を逸らす。

 アスカの手からするりと手を抜き取り、膝の上に落ちていた本を手に取って椅子から立ち上がった。

 その様子を見て、アスカは「あ!」と声を漏らした。

 順番を間違えたことに気が付いたのだ。慌ててアスカは身を乗り出す。


 「ごめん!貴女の名前は?」


 これもまた唐突である。

 アスカの問いかけに“彼女”は僅かに止まって、勢いにつられる様に口を開いた。


 「シア……シアーナです…」

 一瞬何か考えるように、しかし“彼女”は、そう確かに名乗った。

 再びほんの少しの間、名前を名乗った”彼女”はもじもじとアスカから目をそらす。


 「あの…リゾット…ありますから…少し待っていてください…」

 聞き耳を立てないと聞こえないような小さな声。それでも、アスカには十分だった。

 その言葉を聞いてアスカは、また思いっきり明るい笑顔を浮かべる。期待に満ちまくった笑顔を“彼女”に向ける。


 「ありがとう!シアーナちゃん!」

 「……あ、は、はい…」

 心のこもった感謝の言葉。期待に満ちた瞳。

 見たこともない視線から逃げるようにくるりと背を向けて、“彼女”は部屋の隅にある石造りの台所に走る。


 皿とお鍋を用意しながら

 ちらりと後ろを確認すれば、まだ期待に満ちたオレンジ色の瞳がニコニコとこちらに向けられていた。

 

 ――あんな視線初めてだ。向けられたこともない。

 バクバクと心臓の音が鳴る。


 いや、だって仕方がない。当たり前だ。

 もう何万と言う年月を蔑む視線だけ送られてきたのだから。あんなに真っすぐで敵意のない瞳はすっかり忘れていたから。人間ってあんな目も出来るんだ、なんて。


 それは余りに経験したことのない出来事で。思わず、適当な名前を名乗ってしまったぐらいだ。

それぐらい“彼女”には、あまりに奇天烈で、奇妙としか言えない体験であるのは違いなかったから。


 シアーナ()は、ただ困惑した表情で、後ろからの期待のこもった瞳に目を逸らすしか出来なかったであった――。

 



 ……………。



 「うん!おいしい!本当においしい!!」

 「は、はぁ…」

 がつがつと何度も何度も同じ言葉を呟きながら、リゾットを頬張るアスカにシアーナは唖然とした様子で彼女の様子を見つめていた。


 あれから、温め直したリゾットお盆に乗せて、アスカに渡した。

 彼女は嬉しそうにお盆を受け取ると、お礼と共に熱々のリゾットをパクリ。忠告する暇も無かった。

 一瞬「熱っ!」と声を零したが、アスカは大きく瞳を開けて、キラキラと顔を輝かせる。

 次の瞬間には、おいしい!と満面の笑顔で、リゾットを掻き込み始めたのだ。



 「おかわり!」

 皿が空になれば、アスカは元気いっぱいに皿をシアーナに差し出す。

 これで彼女のお代わりは3度目だ。どれだけ食べるのだろう。

 呆然のままに、シアーナは皿を受け取り、最後のリゾットを皿によそう。

 アスカは皿を受け取ると、また食べ始める。その姿は本当に幸せそうだ。


 幸せそうなのだが、同時にあれだ。

 頬一杯に、がつがつと食べるその姿は、まるで頬をパンパンに膨らますハムスターやリスの様。

 ――絵本でしか見たことが無いけれど。


 そんなアスカの様子を呆然と見つめていると、最後の一口を頬張った彼女が此方を見る。

 少しだけアスカの表情が険しくなる。しかし、それも数秒。

 オレンジ色の瞳がシアーナを映しとり、何故か覚悟を決めたような表情を浮かべ、皿を差し出す――。


 「――おかわ…」

 「ありません。それで最後の一杯です」


 まさかとは思ったが、本当にまさかであったらしい。本当にどれだけ食べるつもりなのか。

 シアーナの冷徹な一言に、アスカの表情はみるみるうちに変わっていき、今度は絶望にも近い表情になる。

 リゾット一つで此処まで落ち込むとは、中々のものである。


 そもそも、こうもバクバクお米を食べ進める少女は初めて見た。

 ぱっと見アスカは16歳程。所謂お年頃なのだが。

 年頃の女の子と言うのはアレじゃないのか。

 体重を気にして食事を減らすのが普通で、炭水化物のお米なんて天敵!…が普通じゃないのか。…本で見た情報でしかないけど。

 多分、あの僅かな険しい顔は、葛藤だったのだろう。これ以上食べたら…的な。それでも食べようと決意したのか。

 そもそも細い体のどこに入ったのか…。疑問中の疑問である。


 「ううう…!残念だけど美味しかった!!ありがとう!」

 「――。いえ。露店の物です…。そこまで喜んで頂けると作った人も喜ぶことでしょう」


 まじまじとアスカを見ていると、彼女は残念そうに、しかし改めてお礼を言う。

 当たり前のように、シアーナの青白い手を取って、今までの絶望が嘘のようにニコニコと満面の笑顔で。

 その様子にシアーナは思わず目を逸らした。目には焦げたお鍋が映るが、何も言わない。

 嬉しい、なんて久々に胸に宿った感情は、上手く言葉には表す事が出来なかった。

 

 「…では、アスカさん…。お聞きしたいことがあります」

 それを隠す様に、シアーナが改まってアスカへ視線を移したのは少ししてから。

 アスカは、何?と首をかしげた。


 「…覚えていることはありますか?ここが何処だとか…分かりますか?」

 「え?覚えている事?」

 シアーナの問いかけにアスカは目を丸くして、もう一度首をかしげた。


 シアーナの問い。コレは確認だ。

 彼女がどのような理由でこの“異世界”にやって来て、誰に連れて来られたか。

 ――何処まで覚えているかの確認。


 正直な所、アスカがなんと答えようと特に問題はない。

 本当に一応の確認。

 彼女の答えによって、シアーナの在り方が少々変わるだけだ。


 シアーナの問いにアスカは僅かに悩むように上を向く。

 少しの間、アスカは今までに無い程、険しい顔になって悩み始める。


 ――そんなに難しい質問をしたであろうか。シアーナも不安になってくる。

 まさか転移、召喚。何方でもよいが、その時に何か不具合でもあって自身の名前以外の全てを忘れでもしたか。記憶の戻し方ぐらい簡単であるが、記憶は戻らない方が此方としても楽な気もする。


 シアーナは酷く珍しく、緊張しながら彼女の言葉を待った。

 時間にして5分。

 ようやくアスカが口を開く。


 「――私」

 「…はい」

 「私、昨日テントに泊まったはずなんだけど。ここは何処でしょうか!」

 「……………。」

 それがアスカの答え。

 その答えにシアーナは僅かに驚いて、大きな安堵。予想は概ね当たっていて、外れていたようだ。

 アスカがエルシューに呼ばれたのは間違いない。

 しかしだ。やはり彼女はエルシューに呼ばれた事を忘れてしまったらしい。

 ただ、忘れているのは其処だけ。自分(彼女)自身については、最低限は一応覚えているらしい。

 むしろ冷静になったようで、アスカは真剣な顔で問いただしてくる。


 「シアーナちゃん。ここは何処なんでしょうか!もしかして賊!?賊にでも襲われちゃった私達!?は!――…ってことはシアーナちゃん…こんなかわいい顔して、こんなかわいい姿で賊の一味なの!?頭領さんですか!」


 ――等と、何とも的外れも良いことを勝手に口に出しては震えている。

 確かにここは古びた小屋。盗賊のアジトに…見えるだろうか?

 とりあえず、シアーナはアスカの様子に小さくため息を付いて首を横に振った。


 「いえ。アスカさん。ここは盗賊のアジトではありません。ただの私の隠れ家です」

 「ええ!?」

 「…『ええ』…?」


 ――ええ?なんでそんなにアスカは驚いたのだろうか。

 シアーナ(自分)は、ただ彼女の言葉を否定しただけなのだが、何か間違っただろうか。

 全く持って分からない。

 思わずアスカを見つめていると彼女は無駄に険しい顔をして言葉に出す。


 「――人さらいはだめだよ。シアーナちゃん」

 「……………。」


 いや。別に人さらいはしていないのだが。更におかしな方向にアスカは勘違いし始めたようだ。

 ……いや、人さらいと変わりないのも確かであるが…。でも、犯人はシアーナ(自分)じゃない。

 エルシュー(あいつ)の悪事が自分の責任にされるのは酷く腹立たしい。


 「………違います。私は犯人ではありません。犯人はエルシューという男です」

 「え、ええ!?私本当に攫われちゃったの!?誰その男!」

 取り敢えず否定しておく。


 アスカからすれば驚愕の事実で間違いないが。

 むしろ正直言えばアスカからすれば冗談のつもりで、否定を待っていたのに。

 送られたのは、まさかの肯定。

 愛らしい顔を顰めに顰めて「変態だ」だとかと震え始める。


 そんなアスカの表情を見てシアーナも判断する。

 うん、これは本当に覚えていないようだなと。

 そうなれば問題は次にある。

 彼女にどうやって、この状況を説明するかである。


 「アスカさん、最後に覚えているのはテントで眠った事だけなのですね」

 「どうしよう人さらいとか…エミリアになんて説明を――!と言うかどうやって戻れば?ここ何処?」

 もう一度確認するがアスカには、あまり聞こえていないようだ。

 シアーナも流石に悩む。

 目の前の赤髪の少女は現状を理解できていない様子で、酷く悩んでいる。

 ここまで悩んでいるようであるなら、率直に答えてしまっても問題ないかな…なんて…。決断。


 「率直に言いますね。ここは貴女にとって“異世界”です。貴女はエルシューと言う男によって連れて来られた犠牲者です」

 「――――なん…だと?」


 あ、ダメだったようだ。以外にも冷静だった。

 アスカはシアーナの唐突で率直な答えに、いつも何処かで聞くセリフと共に固まってしまった。

 オレンジ色の瞳が、まん丸と見開かれる。


 思えばいきなり「異世界です」とか混乱するに決まっている。間違えた。

 シアーナが何とか取り繕って言い訳しようかと考え始めた直後であった。

 アスカは、それは見事に、勢い良く頭を抱えた。


 「異世界に召喚だと!?それどんな『奇跡』!?高度過ぎて『奇跡』とも呼べないのですが!!魔法かな!?神様の魔法かな!」

 「……………魔法ではありませんよ。貴女を此処に連れて来た存在は神の力と鼻を伸ばしています」

 「シアーナちゃん!否定できないならちょっと黙っていようか!!――え?何?神の力?神様の力…?」


 シャラップ要求。

 アスカは更に困惑した様であった。

 嫌、当たり前なのだが。シアーナが急ぎ過ぎたのだ。

 むしろこれで「はいそうですか」と受け入れられる方がおかしい。


 でも黙っている様にと言われたなら、仕方がない。シアーナは黙っていることにした。

 …10秒。…30秒。…1分。アスカは頭を抱え続ける。


 アスカ(彼女)が顔を上げたのは、時間にして大よそ5分経った頃。

 ただ「じぃ」とアスカを見つめていたシアーナの前でアスカは勢いよく顔を上げた。



 「ここは異世界。私の世界じゃない!だったらお家に帰ります!!!」

 うん。見事な状況判断と、もっともな判断だ。微塵も迷いはなかった。

 むしろすんなり「ここは異世界」と言う事実を簡単に飲み込み過ぎて驚いたほどだ。

 アスカの様子に一瞬びくりと肩を震わしたシアーナだが、少ししておずおずと口を開く。


 「………それは、どうして…?」

 “異世界”と判断したうえで、彼女(アスカ)はどうして迷いもなく元の世界に帰りたいと決めたのか。決めることが出来たのか、疑問のままに問いかけていた。

 その問いに、アスカは眉をキリっと上げたままシアーナを見る。彼女を見て大きく頷く。

 思わずシアーナもつられて小さく頷く。




 「私が元の世界に帰りたいのは当然です!『私の世界』ですから!」

 そして、その勢いのままにアスカの口から出たのは…やはり良く分からない理由だった。答えになっていない気がする。

 いや、彼女が元の世界に帰りたがるのは当然だから答えとしてはあっているのか…?

 ただ、シアーナが求めていた答えと違って、あまりに大雑把だったから。理解できなかっただけだ。

 それに、やはりアスカの宣言にも近い発言には、迷いが無さすぎる

 シアーナは小さく首をかしげた。


 「えと…。折角の異世界だー。冒険しよー…とか思わないのですか?」

 「…………ないよ!」


 ――間があった。

 あ、いや。とアスカはシアーナの表情に思わず目を逸らしてコホン。


 「この…“異世界”?この“世界”に興味ないって訳じゃないよ。暇があれば、ちょっと遊んでみたい」

 「…正直ですね」

 「えへへ…」

 アスカが少し照れたように頬を掻く。褒めたつもりは無いが。その様子は普通の少女そのものであった。

 ただ、それはほんの僅かの表情。

 照れくさそうに笑っていた、少女は、真っすぐとシアーナを見据えた。


 「――でも、帰りたいと思うのは別。私は元の世界に帰って確認したいことがあるの。それだけはちゃんと覚えている」


 オレンジ色の瞳は迷いなく真っすぐに、此方を見据えて言い放つ。

 その言葉に、微塵も偽りはない。決意が籠った瞳をしていた。

 「元の世界に帰って確認したいことがある」

 どうやら、これが、アスカが元の世界に帰りたいと願う理由のようだ。


 ――それは見たことのない瞳。あまりに強い瞳。

 シアーナはそんな瞳から、目を逸らす事が出来なかった。


 「どうして…ですか?」

 思わず、シアーナの口から問いが出る。

 何故彼女が此処まで元の世界に拘るのかが分からない。

 どうして、そんなに迷いなく答える事が出来るのかが分からない。


 そんなシアーナの瞳を、アスカは真っすぐに、僅かにも目を逸らすことなく。

 力強い決意が籠った瞳で答えた。


 「私達が勝ち取った未来だから!」


 満面の笑みで、キラキラと輝いていて。

 その笑顔に、

 決意に、

 シアーナと言う“死”は、ただ頭が白くなる。


 理解が追い付かず、『困惑』。

 その言葉だけが頭を駆け巡る。


 「…そう…ですか」

 ただ、どうしても、その瞳から目を逸らすことが出来なかったのだ。

 アスカと言う少女のあまりに力強い瞳に。

 ただ、あまりに悲しく思えて、どこか羨ましく思えて、放って置けなくなったのだ――。


 だから、シアーナは自分でも気付かないうちに、言葉を紡いでいた。

 

 「だったら私も手伝います。…微力でありますが、貴女が元の世界に戻れるように。お手伝いします」

 「………え!?」

 「――この“世界”の案内ぐらいしか出来ませんが…。もしかしたら元の世界に帰れる手段があるかもしれません。お手伝い…させてください…」

 「…おお、まじか…。うん、じゃあ、任せた!」


 シアーナの言葉に、目に見えてアスカは驚いた。

 ただ、次の瞬間には、目に見えて分かるほどに大きく喜び、青白い手を取る。

 手からアスカの温もりが伝わり、シアーナは思わず肩を震わす。

 彼女の「任せた」という言葉には迷いは無かった。

 ただ、百面相なのか。次には渋い顔。



 「うーん、違うな…。うん、これだ…。お願いします!シアーナちゃん!」


 そして、今度は「お願いします」と、アスカと言う少女はもう一度満面の笑みを浮かべるのだ。


 コロコロと表情が変わる少女の前でシアーナは、やはり呆然とするしか出来なかった。

 どうして彼女に、協力するなんて、自分から協力を申し出たのか…、自分の事なのに分からない。

 口が勝手に開いていた、としか言えない。

 ――それも、飛び切りの大嘘を。意味も無い協力を…。


 ただ、それでも――。

 何故だろうか。

 シアーナの中で、温かな気持ちが溢れてくる。

 なんだか酷く照れくさくて、

 誰かの役に立てると言う事が久しぶりに嬉しくて、


 シアーナは僅かに、はにかむ様な笑みを浮かべるのだ。

 

 「あ、笑った!…ふふ、可愛い」

 「――!」

 アスカは、そんなシアーナの僅かな表情の変化に目ざとく気が付いた。

 のぞき込んでくるアスカから逃れる様にシアーナはフードを深く被る。

 何故か、本当に彼女(アスカ)の表情にも言葉にも嘘が全く感じられないから。

 シアーナは無言のままに、気恥ずかしさから、慌てたようにそっぽを向くのであった。



 ……………。



 「うわぁ!何これ凄い!!」


 シアーナの隠れ家から出たアスカの最初の一言はコレであった。

 アスカの目に映るのは天に広がる満天の星。

 地面には青々とした緑が広がり、奥には澄み渡る湖が広がっている。

 その湖に星空が反射をして、「美しい」の一言でしか表せない程の光景が出来上がっていたのだ。



 「アスカさん…何度も言いますが、ここは地底湖です。アレも星ではありません」

 純粋に無邪気に笑顔を浮かべるアスカを前にシアーナは冷静に真実を掛ける。

 ――ここはシアーナ()の隠れ家。

 実は地下深く、湧き水から出来た地底湖の側だ。


 空に見えるのは星では無くて特別な鉱石、広がる緑は苔。

 不自然なまでに輝く鉱石のおかげで地下の底でも暗くない。


 それでも、初めてこの光景を見るアスカには夜空とそう変わらなかった。

 まるで終わらない永遠の夜が続いているような、そんな風景である。

 アスカは、そんな風景を見て、目を輝かせシアーナを見た。


 「鉱石って事は宝石だよね?なんて宝石なの?」

 「え…」

 思いがけない、突然の問いにシアーナは固まった。動かしていた手を止めてアスカを見た。


 ――あの輝く鉱石の名前?

 此処に長く暮らしているが、知らない。

 正直、ここは偶然見つけたに過ぎない。1人で閉じこもるのに、うってつけの場所でしかない。

 近くに小屋があるが、アレは長年かけて自分で造ったもの。

 鉱石の名前なんて考える事も、調べる事も、シアーナの頭には無かった。


 シアーナは口籠る。

 「ええと、ええと…。…だ、第一発見者はアスカさんなので、アスカさんが決めてください」

 「え!?どうして突然に丸投げ!?」

 

 考えたすえ考え付いたのは、アスカに全て委ねる事であった。

 ほら。人間は何でもかんでも、取り敢えず最初に見つけた人が名前を付けるし、だったらアスカに決めてもらおうとの思惑である。

 この場合、第一発見はシアーナなのだが。

 

 「いや、ここは普通シアーナちゃんが…」

 「……………」


 シアーナは何も言わず目で催促する。

 シアーナ(自分)は残念ながら『人間』ではない。であるなら、命名の権利は無い筈だ。コレに関しては言葉にはしなかったが、自分で決める気はない。

だからここは全てアスカにゆだねる事にした。その意思をアスカに目で訴える。


 アスカもアスカで困った。

 でも目の前の少女の瞳は本気だ。本気で全部丸投げにするつもりだ。

 アスカからすれば、ただの興味本位であったのに。

 一度、光り輝く天井を見上げる。

 

 ――少しの間。

 アスカは力強く頷く。


 「じゃあ“シアーナストーン”で」

 「――」


 うん、丸投げにするんじゃなかった。


 ――シアーナはアスカから目を逸らす。

 馬鹿馬鹿しい。本当に馬鹿馬鹿しい会話だった。無駄に等しい。石の名前なんて。

 今はあんな光る石より、無理難題を片付けるのが先であるからだ。


 「夜行石の事は放っておきましょう」

 「え、今私の命名は…」

 「それよりも私はこの無理難題を片付けなくてはいけない事が苦痛でしかありませんから。夜行石よりもこっちを先に終わらせます…」

 

 絶対に本題に入る。

 あの輝く石は今日から「夜行石」で決まった。それでいいのだ。

 アスカは腑に落ちない表情をしていたが、シアーナがそう言い切るのなら仕方がない。

 あれは「シアーナストーン」だと心に決めて、シアーナの元へ。

 険しい顔をしたまま本を片手に、岩に落書きをする、彼女をのぞき込むのだ。


 「シアーナちゃん。楽しい?」

 「いえ、全然。産まれて初めて、魔法陣なるモノを書く破目になりました…」


 アスカの目に映るのは、平らな岩の上で必死に何かを描くシアーナの姿。

 赤い液体で、本と睨めっこをしながら彼女は岩に良く分からない模様を描いている。

 アスカは知らないが、シアーナが今必死に岩に絵の具で描いているのは、所謂『魔法陣』である。


 何故こんな事をしているかと言えば簡単。――とりあえず、である。


 一応、アスカには故郷に帰る手伝いをすると約束してしまったので。

 今こうして彼女を送り返す用に『魔法陣』を描いているのだ。


 此処までのきっかけは些細であった。

 とりあえず魔法を試してみよう、なんて本当に些細以下な言葉から始まったのだから。


 ――うん、意味も無いのだが。

 アスカは不思議そうに魔法陣を見ているが、正直言えば、シアーナだって描いておきながらアレだが。意味が解っていない。


 だってこの“異世界”には魔法の類が無いのだ。魔術と呼ばれるものすら存在しない。

 断言しても良い。絶対に無い。あるはずない。創ってないから。


 この本だって、適当に引っ張り出した物だ。

 子供だましの絵本に過ぎない。おまじないしか書かれていない。

 おまじないでアスカが元の世界に帰れるわけが無かろう。


 なら何故、とりあえずでも『魔法』に頼ったかと言えば。コレも簡単である。

 無理だったと結果を出して、アスカに元の世界に帰る事を諦めて貰う為。否、諦めてくれればいいな。なんて浅はかな考えである。


 そんなシアーナの考えに気が付かないまま、アスカはポツリ。


 「コレが魔法陣かぁ…。私の世界、魔法は無かったからなぁ」

 

 ――この“世界”にもありませんから…魔法…。思わず出かけた言葉を飲み込む。

 なんならシアーナには魔力の欠片もありません。

 そもそも魔法と言うのは宇宙(世界)によって種類とあり方やらが違うのだ。

 マナだとか、魔力だとか、生命力を使ってだとか、考えただけで頭が痛くなる。

 

 それでも昔は願うだけで魔法の一つや二つ。概念を造り出す事が出来たが、今は出来そうも無いし、元より産みだす気も無い。

 いや、それはさて置き。

 一応出来上がった魔法陣の前に、シアーナは小さく息を付いた。


 「やはりだめでしたね」

 「………え!?なにが!?何が駄目だったの?何かした!?」

 「はい、この本に書かれています。魔法陣を描くだけでこの魔法は完成とする。成功していれば、人間を違う世界に飛ばす事が出来ると…。でもアスカさん此処に居ますから失敗だったようです」


 ――嘘である。

 本当は唯の恋のおまじないである。

 それでもアスカはシアーナから本を受け取りページに視線を落とす。

 コレも計算のうちだ。アスカは本を目に入れた瞬間に、険しく表情を変えた。

 アスカは、この“世界”の文字が読めないからである。

 と言うより、シアーナが許可していないので、アスカはこの本を読めないのである。


 「申し訳ありません」

 アスカは一瞬腑に落ちないかを押したが、読めないものは仕方がない。

 さらっと謝罪を言葉にするシアーナを見上げた。


 「だったら仕方がないよ。シアーナちゃんにお願い!」

 「…はい」

 「私をこの世界に連れて来たのはエルシューさんなんだよね!なんで私を連れて来たか不明だけど…。直談判しに行きたい!その人の所に案内して欲しい!」

 「………。」


 アスカは迷いのない瞳でシアーナに頼んだ。

 彼女の瞳を見ながら反対にシアーナは「やっぱりか」なんて心で思う。

 おまじない(こんなもの)で彼女が諦めてくれるとは流石に思ってはいなかったからだ。

 そして、遅かれ早かれ。元凶のエルシューに頼ろうとするのは当たり前のことで、正直言えば、それこそ無駄なので避けたかった事であった。


 「…エルシューの居場所は…ここから凄く遠いですよ」

 「でも。それしか方法が無いのならソレに賭けたい!お願いしますシアーナちゃん!」


 アスカの誠意のこもった瞳がシアーナを映す。

 エルシューの居場所はシアーナだって知っている。此処から遠いのも本当だ。

 

 「この“世界”は広いです。賊やら…獣やら沢山います。野宿にもなりますでしょうし…女二人旅は危険ですよ」

 「う…大丈夫!これでも私、賊や獣ぐらいなら相手に出来る!」


 エルシューの所まで行くのに獣や賊がいる場所を通る事になるのも本当。

 しかし、アスカは腰に差す剣を握りしめて真っすぐにシアーナを見る。

 そんなアスカの様子にシアーナは溜息を一つ。

 ここで断れば、彼女は一人でも旅立つであろう。

 「やっぱり無理だったか」なんて考えながら、それでも渋々と頷くしか出来なかった。



 「分かりました…。エルシューの所に行きましょう…。案内します」

 「ありがとうシアーナちゃん!」

 アスカの心から喜ぶ表情。

 その笑顔を見ながらシアーナは思っていた。


 エルシューの所までは、まぁ本当に遠い。それに本当に無駄足なのは間違いない。

 と言うか会いたくないし、合わせる気も無い。

 それでもアスカに付き合うのは紛れもなく罪悪感からの行動だ。

 身勝手に巻き込んでしまった彼女の為に、彼女が望む出来る限り手伝いをしようと心に決めたのだ。

 ――その間に、彼女の気持ちが変わってくれれば、それでよいと。願いながら。


 ()()()勿論アスカには言わない。これは彼女には絶対の秘密。

 

 「それじゃあ、長旅になりますから…準備をしますね。出発は明日にしましょう」

 シアーナはアスカから目を逸らして、小屋に戻っていく。

 ここは地下であるが、恐らく今は夜だ。だから、出発は一晩明けた明日の朝。

 手伝うよと駆け寄ってくるアスカを目の端でとらえながら、シアーナはしかしと、僅かに眉を顰めた。


 無駄な旅をすると決めたが、それでも旅は旅だ。問題がある。

 適当な鞄の中に、今まで使うことも無かったお金と食料を詰め込みながら一番の問題に悩む。


 コレからの無駄な長い旅路は、少女二人旅。流石に危険でしか無い。

 シアーナは“死”だ。それは確かな事実。

 自分は死なない。でも怪我はする。それはアスカも同じであろう。

 むしろアスカはシアーナと違って弱い人間だ。彼女は怪我一つで死ぬ。

 そんな弱いアスカを守りきる自信なんてシアーナにはない。


 ――誰か一人。頼りになる男性(ヒト)が欲しい。


 でも、この“世界”。シアーナに進んで手を貸してくれる存在はいない。

 むしろ街に入るのだって危険が伴う。それはアスカにも被害が及ぶだろう。

 だから――。


 シアーナは頭に浮かんだ一人の人物を思い出し、大きくため息を付いた。

 本当はもう二度と顔も合わせたくないと思っていた、でも恐らく今この世界で誰より安全で、手を貸してくれる男性。

 仕方が無いと、シアーナはもう一度ため息を付いて。

渋々と、覚悟を決めるのであった――。




 ……………。



 暗い、地下の小屋の中で、シアーナは閉じていた目を覚ます。

 身体を起こして、ベッドから下を見ればアスカが眠っている。


 自分は寝る事も必要が無いのに、アスカは頑なにベッドを使おうとはしなかった。

 仕方が無いので、寝たふりをして、彼女が完全に眠るのを待ってから目を覚ます。

 アスカを確認したが、彼女は完全に眠っているようであった。


 暗闇の中で、シアーナは音をたてないように外へと出る。


 小屋の外は相変わらず満天の鉱石が辺りを照らしている。作り物の夜の世界。

 その明かりを頼りにして、シアーナは本を何処からともなく取り出す。

 真っ黒で分厚い、それは「死の本」。


 この“世界”の人間たちの、どうしようもなく逃れようのない最後が記されている、シアーナの仕事道具。

 コレは何時もの日課だ。

 シアーナは指先をナイフで切って、記されている『彼ら』の最後の瞬間に、見届け印として自分の名を書き記す。


 今夜の仕事の数は100人。

 『彼ら』がどのように死んで、最後を迎えたかはシアーナですら分からない。

 此処に閉じこもって「見届ける事」を辞めたのだから。仕方が無い。

 本当は「見届ける」だけじゃなくて、こんな仕事は辞めてしまいたいが…。


 それでも、この仕事は、この仕事だけは辞めることは出来ないのだ。


 シアーナ(彼女)は何時も病的に青白い。

 『彼ら』の為に何時も毎日、血を流さなくてはいけないから。


 書きながら思う。


 ――どうして、自分は。『人間(彼ら)』の為に損をしなくてはいけないのだろうと。


 この仕事光景を見たモノ達は皆後ろ指を指す。

 「お前は人殺しだ」

 ――“私”は何もしていないのに。

 「お前が死を選んでいるのだ」

 ――そんな訳ない。“私”が選んでいる訳じゃない。

 「お前はこの“世界”の悪だ」

 ――“私”が何もしなければ、泥を浴びせるくせに。


 「お前が居るから、この“世界”には死があるのだ」


 ――――。


 正義感面で、当たり前の様に『彼ら』は皆、泥を投げつけてくる。

 どうしてだろう。何も知らない癖に。

 どうして『彼ら』は“私”を蔑むのだろう。…分からない。


 そう。

 彼女は忘れた筈の疑問を久しぶりに思い出しながら、今日の仕事を終わらせるのであった――。





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