第九十五話 極限複合生命体
「発射ああああああ!!!!!!!」
フランシアの持つ『電磁砲型』から光の速度に匹敵するほどの速さで聖属性と雷属性を複合した弾丸が射出された。
「くっ!!!」
エルムはとっさに腕を目の前でクロスさせ、さらに自信の前に大量のゾンビを出現させた。
「おおおお!!!!!貫けええぇぇぇ!!!!!!!!」
射出された弾丸はエルムの出現させたゾンビたちを全て貫き、エルムのガードも貫通して確実にエルムの心臓を貫いた。
「ぐふぅぅっ!!!!!???・・・が・・・はっ・・・。」
エルムは驚きに目を見開いてそのまま前へとゆっくり倒れていき、地面に墜落した。
「他愛もない相手でしたね・・・。所詮この程度ですか・・・。」
そう言ってフランシアはポテプたちの通って行った扉を開けて先へと進んだ。
自身の背後でエルムの死骸が少しずつ蠢きながら再生していることを知らずに・・・。
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「ふう。ま、これで斃せましたね。あとは先生たちに追いつくだけ・・・っ!!!!!」
フランシアが中庭から場内に戻ってきてすぐにソレは動き出した。
ゾワアアアァァァァァァ!!!!!!!!!
と、フランシアの背中に悪寒が走る。
振り向いた直後、何か形の定まっていないゲル状のものに捕まり、フランシアは中庭に引き戻された。
「くっ!!何ですかこれは!!?」
ソレは中庭にある、倒壊した噴水の前に鎮座していた。
ソレは下半身が腐った東洋龍でできていた。
ソレは紫色で、腐臭が体中から漂っていた。
ソレは・・・変わり果てた姿をしたエルムだった。
いや、正確に言えばエルムだったモノであった。
「まさか・・・その姿は・・・!!!??」
「GYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYA!!!!!!!!!!」
「龍種を取り込んだのですか・・・しかも、東洋龍を・・・。これは・・・少し厳しいですね。」
「GYURAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!」
キメラが咆哮を上げるだけで中庭の木々が倒れ、地面が裂けてめくれ上がった。
「くっ!!!!咆哮だけでこの威力・・・。厄介極まりないですね!!!!」
「GU・・・GYURU・・・RAA・・・AAA・・・GYURUAAA!!!!!!!」
「まさか今のは・・・!!!」
フランシアが予想してすぐさま横に跳んで回避するのと、先ほどまでフランシアがいた場所に呪力だけで構成された、『呪弾』とでもいうべきものが着弾するのはほとんど同時であった。
「詠唱もできるのですか・・・。」
フランシアの頬を汗が伝う。
「やるしかないですね。全属性複合系最上級魔法『絶対不可避の魔槍光芒』!!!!!!!」
キメラの顔面に『絶対不可避の魔槍光芒』が当たり、一瞬キメラがひるむ。
『GYUAAAAAA!!!』
「これでひるんだだけとは・・・半年前よりも威力が上がっているというのに・・・。私もまだまだですね。出し惜しみしてはいられないようですね・・・・・。本気を出します!!!!!」
キメラがひるんでいる隙にフランシアは詠唱を開始した。
「属性選択:龍属性系上級魔法『真・龍化』!!!!!!!」
フランシアの体を青とも緑ともつかない鱗が覆っていき、瞳孔が猫のように裂けて龍の角が生えた。
「続けて、属性選択:魔砲系単一魔法『狙撃銃型』!!!」
その手には狙撃銃型の魔砲が持たれており、フランシアは魔力を集めて装填を開始した。
「〔装填:龍属性弾〕〔利用魔法:龍属性系上級魔法『龍頭魔弾』〕・・・はっし・・・。」
「GYUUUUUUUUAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
フランシアが魔力を集めて装填した弾丸は発射する前にキメラの方向によって拡散された超密度の呪力によって相殺された。
「なっ!!!!?」
「GURU・・・GYUUA・・・GYUAAAAAAA!!!!!!!!」
口の中から腐った何かをまき散らしながらキメラは詠唱をし、牙だらけの腐った口内から紫色のブレスを発射した。
「くっ!!!!」
ジュワアアアァァァ!!!!!!
間一髪でよけたもののフランシアのいた場所は一瞬で溶けて更地になる。
「当たったらまずいですね・・・。」
「GYURAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」
ズガンッ!!!!
という音がして、フランシアがそちらを振り返るよりも早く、キメラの体から生えたナニカによってフランシアは吹き飛ばされた。
「ぐふっ・・・!!!!」
ジュウウウウウウゥゥゥ・・・!!!!!!
という音がして、フランシアの脇腹に激痛が走る。
「っ・・・・!!!??(まさか尾にまで腐敗属性がついているとは・・・。)」
そう、フランシアの脇腹が徐々に腐敗していっているのだ。
「が・・・げふっ!!!!!」
吹き飛ばされた勢いで城壁に激突し、背中と脇腹に痛みが走る。
そのまま重力に従って、受け身も取れずに城の中庭に墜落した。
「ぐ・・・・うぅぅ・・・・・。」
「GYAAHAHAHA!!!!!!」
キメラがフランシアを地面から持ち上げて徐々に自分の口に近づけていき、今まさに嚙み砕こうとしたそのとき・・・。
「我が・・・前にいるものを・・・貫き・・・穿て・・・光系・・・初級魔法・・・・『ビーム』・・・・・!!!」
キメラの口腔内を閃光が穿ち、貫いた。