第六話 いつだって薬草採取は波乱万丈
「あ、じゃあそれでいいです。勇者様方もそれでいいですよね?」
「ああ。いいぜ。」
「良いですよ。」
俺は一応賢者と勇者に引率されてる少年という立ち場なので人様の前では二人には敬語を使わなければならない。・・・それのせいかは分からないが、さっきからアルジェンがめっちゃこっち見てにやにやしてる。
・・・これはあれだな。・・・こいつは後でお仕置きが必要そうだな。そう考え、無言でアルジェンに圧をかける。普通の人なら気絶するレベルの圧だ。おっ!!アルジェンがブルブルしてる。効いてるみたいだな。
「それでは手続きを行います。取ってくるのはヒーラント草30本です。期限はいつでもいいですよ。」
もちろん、リリアさんの前では圧は解く。だってリリアさんただの一般人だもん。
「はい。ありがとうございます。それでは勇者様方行きましょうか?」
そう言って、俺達は外に出て近くの森を目指した。
「おい、アルジェン。フランシア。ただの薬草採取なのに、どうしてこんなことになってんだよ?」
「そんなこと俺らに聞かれても困るっすよ。本当に、何でこんなことになってんすかね~?」
俺とアルジェンがこんな話をしているのには理由がある。そう。薬草を採取しに来たら魔物がたくさんいたのだ。本当にたくさんいる。さっきゴブリンを50体倒したと思ったら、もうリザードマンが20体出てきた。
「やばいなこれ。冒険者ランクがエグいほど上がるぜ。」
「でも先生。薬草一本も集まってないじゃないですか。」
「うっ。そ、そういうこと言うのは良くないんだぞ。いいじゃないか。薬草なんて。こんだけ倒したんだから。」
「あ、そう言えば。ギルドって、一度受けたクエストは絶対に遂行しないといけないらしいっすよ。なんでも、受けたクエスト中にどれだけ魔物倒しても、ランクに影響はないらしっす。てか、そうリリアさんに教えられたっす。」
ガラ~ン!!!そういって、俺の手から剣が落ちた。ま、まじか。そんなルールあったのか。
「なんだそのクソ使用!!!!!ふざけんじゃねえぞ!!!!!なんなんだよそれ!!!!!」
クッソ~~。イラついて叫んで剣踏んで割っちまったじゃないか。ホントにもぉ~。何だそのクソ使用は!それじゃあここ二時間の俺の努力は全部無駄だったってことかよ!!
「っていうかアルジェン!!!なんでそれを先に言わなかったんだよ!!!お陰で俺の二時間が無駄になったじゃないか!!!!!」
「いや、俺だってさっき思い出したんっすよ。そんなこと言われても仕方ないっすよ。」
どうやらアルジェンは俺とケンカしたいらしい。アルジェンに向かって若干とはいいがたいほどの殺気を飛ばす。それを受けてブルブルし始めたアルジェンは、俺と目が合い、気絶した。
「すみませんが、そのようなバカげた言い争いをしている暇はありませんわ。今すぐお逃げください。龍が近づいてきています。」
「「「龍?」」」
謎の声が聞こえたほうを見てみると、エメラルドグリーンの色の髪をした美しいオーガの美女が立っていた。・・・そして、俺達が彼女を見た直後。大きな蛇のような龍が出てきた。
いや、正確には森の上に綺麗な青色の龍が浮いていた。
「GYAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!」
「うわ。ちょっと、まじかよ。何だアノ大きさ。倒せるのか?あんなの?」
「お師匠さん!!倒せるんっすか!?あんなの!!???」
そして・・・龍が口を開く。
「おい。人間ども。・・・・・ん?お前ら、死霊にヴァンパイアに妖精もどきか・・・。ならば生かしておく意味はない!!!!!」
ピクっと俺の指が動いた。
「あ?ふざけるなよ。生かしておく意味がないだあ?俺のこの魔力を見て良く言えるなあ?そんなこと。」
そう言って俺は魔力を集めた。周りのみんながじりっと後ずさりするほどの大きさだった。そりゃそうだ。俺は、コマンド『魔力増強Lv5』をこっそり使用していたのだから。
このコマンドは、Lv1~Lv4までは少し魔力を上げる程度のコマンドだ。ただし、Lv5になると話が違ってくる。Lv1~Lv4では、自身の体内中にある魔力を限界まで引き出すコマンド。しかし、さっきも言った通りLv5からは話が違う。Lv5では、自分の魔力以外のステータスをほぼ犠牲にして魔力を底上げする。
つまり!!動きが遅くなったり、攻撃力が弱くなったりする。ということだ。だが・・・。
「ほう、やりおるな。だが、私には遠く及ばない。これが私の全魔力だ。」
ズアッ!!!という音が聞こえるほどの魔力波がまき散らされ、周囲を龍の殺気が支配する。
「こりゃあだめだぁ・・・。」
え~。リリアさんに関しては書いてる筆者が一番びっくりするような設定があります。それでは!次話もよろしく!!