第三話 近況報告
私達がメイランが魔王になったことを知ったのは、先生と別れた時からちょうど5年程経過したころでした。その頃、私は妖精王になるため、各地を放浪しており、アルジェンも吸血鬼になるために着々と準備を進めていました。そんな折、メイランが手紙をよこしてきたのです。その手紙には、
『一週間以内にコラシオン王国南部の森に来い。来なければお前たちの大切な者を殺す。』
という凄くありきたりな脅しが書かれていました。先生と別れてから、私とアルジェン、そしてメイランは定期的に連絡を取っていたのですが、手紙が来る2か月ほど前からメイランと連絡が取れなくなっていました。そこにメイランからの手紙です。私達は先生や、それぞれに何かあったと思い、急いで駆けつけました。
三日後、アルジェンより先についた私はアルジェンを待ちながら森の中にあった城に行きました。そして翌日アルジェンと合流した私はメイランを探して、呼び出された場所へ行きました。・・・そこにいたのは、純白のドレスを着て、怪しく笑っているメイランでした。
『よく来たな二人とも・・・。む?師匠は来ていないのか。まあ良い。ん?どうしたアルジェン。何を驚いている?ああ。例の件か?すまなかったなアルジェン。君の夢を奪ってしまった。だが、私も夢を諦めたんだ。君も諦めてくれ。』
後でアルジェンに聞いたところ、ここに集合した時点で、アルジェンはメイランが魔王になっていたことを知っていたらしいのです。
『そんなことできるか!!!!それはお前が勝手に決めたことだろうが!!俺が従う理由なんて無いね!!俺は俺の夢を諦めることはしないし、お前もお前の夢をあきらめるなよ!!!・・・いったいどうしたんだよメイラン?あれだけ夢を大切にしていたお前がどうしてそんなにあっさり夢を諦められんだよ?』
『そうですよメイラン。今のあなたを見たら先生はなんて言うのでしょうね?』
『ふんっ。師匠などどうでも・・・!!!ぐっ!!ぐううううああああああ!!あああああああああああああああ!!!』
先生の話をした瞬間、メイランが急に苦しみ始めたんです。そして・・・。
『・・・ふっふっふ。ふはははははははは。この娘の体は良い。鍛え上げられた剣術と魔法。そして若さゆえのしなやかでハリのある身体。スタイルも申し分ない。のう?おぬしらもそうは思わぬか?そちらの娘もなかなかに良い体をしているではないか。・・・まあ良い。今は我慢しよう。・・・それよりも、先生とか言っておったな。そいつをここに連れて来い。我と戦をさせてやろうではないか。それで我が勝ったらその娘を貰おう。我が負けたらこの娘を返してやろう。良い条件だろう?』
と、言ったのです。明らかに操られているようでした。私達はそこで意識を失い、気づいたら一番近くの町の宿屋で、同じ部屋の同じベッドの上で寝ていました。・・・その後、各地で人助けなどをしてメイランについての情報を集めているうちに、賢者や勇者と呼ばれる様になっていました。
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「・・・・・そいつ、悪役と変態の鏡みたいなこと言ってたんだな。」
「先生!どうかメイランを助けてください!!お願いします!!!」
「そうっす!あいつは明らかに変態っす!!お師匠さん!!お願いするっす!!」
「・・・二人共。ここからさらに西に行くと海がある。」
「いきなり何の話っすか?こっちは真剣な話をしているっすよ。」
「わかってる!いいから聞け。フランシアも。そんな険悪な表情をするな。いいか?ここからさらに西に行くと海がある。その海を越えると大陸がある。その大陸にはこんな言葉があるらしい。
『 One more adventure together 』
意味は、『また一緒に冒険しよう。』まあ、つまり、その、そういうことだ。」
そう言うと、二人の顔が明るい笑みに染まった。
「ありがとうございます!」
「そのことばをまってたっすよ!!!」
「ああ。それはそうと、お前ら一体どうやってここまで来たんだ?」
「え~っと、それはっすね~。冒険者ギルドで何年も放置されていた妖精王の湖の探索+謎の魔物討伐クエストを受注して入ってきたんっすよ。」
「私達は先生がここに住んでいることを知っていて入ってきたのですが、このクエストを出した者はこんな死地に人が住んでいることなど知らなかったのでしょう。」
「死地?ちょっと待てどういうことだ?ここには俺が住んでいるんだぞ?少なくとも人が住めるくらいの場所だってことだろ?そりゃあ変な格好した奴らが入ってきたら、トラップが作動するかもしんないけどさ。そんなに危険な場所じゃないはずだぜ?」
「だからお師匠さん。そのトラップが原因なんっすよ。大方そのトラップは、引っかかったら大穴が開くとか、横から何か鋭いものが飛んでくるとか、いきなり霧が出てきて人が増えたりする様なトラップなんじゃないんっすか?」
ギクウッ!!!!!!!!!!!
「な、なぜそれを?」
「そりゃあ俺たちだってそのトラップを潜り抜けてきましたからね。出てくるものや、仕組みを知っているのは当然っすよ。前に弟子だった時に見たのもあったっすからね。」
「・・・ま、まあいい。いや、良くはないけど。とりあえず出発しよう。ここにいてもメイランを救えないし、時間を食うだけだ。」
「そうでした!早く出発しましょう!!」
フランシアも思い出したのか、俺に賛同してきた。
「その遅れた原因を作った張本人達がなにいってんのかねぇ?」
・・・う、ウザイ。さっきの仕返し。とばかりに俺たちのことを煽ってくるのがとてもウザイ。
「う、うるさいですよアルジェン!さっさと行きましょう!!」
うん、そうだな。早く行かないとだ。ホントこういう時、フランシアは頼りになるな~。
連載なので次回もよろしくお願いします。