第百話 シメノという人間 其の一
記念すべき百話!!!これまで拙作を応援して読んでくださった皆様!!そしてこれからも読んでいただく方々にはもうほんとに感謝しかないです!!これで最終会ではないですし、まだまだ続きますが、これからも拙作を読んでいただけると幸いです!!!これからも拙作をよろしくお願いいたします!
「なぜだなぜだなぜだなぜだ・・・。」
「生きてる・・・いや、先程確かに殺したはず・・・。」
「なぜと聞きたいのはこっちっすよ・・・。」
「あああああ・・・テオ様・・・感謝致します・・・これで私は・・・私はぁ!!こいつらを殺せる!!!!」
エルムの体が内側から膨張していき、顔中の穴から赤紫色の触手が大量に生えた。
「グロいっすね・・・。」
「見ていて気持ちの良いものではありませんね・・・。」
「UUUUUUUUWAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!」
すべての触手が高速で二人に向かってくる。
「速っ!!!?」
「くっ・・・世界干渉命令スキル『パラグリア』始動。攻撃魔法作成。名称:『暗黒之災禍』。等級:上級魔法。はっし・・・。」
フランシアの手のひらに魔力が集まり、黒く巨大な球を形作る。
「フランシアちゃん、それを撃つ必要はない。」
突如として、フランシアの後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「えっ・・・?スカイアさん!!?」
「【ア・ポート】」
ヴンッ!!
という音と共に、スカイアが一瞬にして青い光に包まれ、エルムの前に現れてそのまま剣を一閃。エルムの首と胴を泣き別れにした。
「OK。ふい~。二人ともだいぶ苦戦してたようだね~。」
「え・・・?スカイアさんがなぜここに・・・?」
「そっちは終わったんっすか・・・?」
「ああ、こっちは終わったよ。二人よりかは簡単な相手だったかな・・・。」
「にしてはなんか哀愁漂ってるっすけど・・・?」
「ん?何でもないよ~?」
「それで?なぜこちらに来たのですか?そのまま先生の所に行かなかったんですか?」
「ああ・・・こっちの敵も斃したはずなのに生き返ってね、もしかしたらそっち側もって思ってさ~。フランシアちゃんの気を見た感じだいぶ苦戦してたから助太刀に来たんだよ~。この後アルジェンのところに行こうと思ったけど、必要なさそうだったしね~。」
「そういうことでしたか・・・。」
「にしても・・・なんで生き返ったんっすかね?」
「テオに呪いでもかけられてたんじゃないのかな~?発動条件はすべての四天王がテオから認識できなくなったときとかじゃない~?」
「成程・・・。」
「いや~・・・にしても、アルジェンは自分の敵が生き返ってるって考えてないのかい?」
「ああ、あいつなら大丈夫っすよ・・・。多分。」
「なぜそう思うんだい?」
「あいつには・・・グライには・・・こいつらと違って、何かを貫き通すための信念があると感じたからっすかね・・・。」
「なるほどね・・・根拠のない自信か・・・。まあ、俺はそれでもいいと思うよ~。そういう勘みたいなものは馬鹿にできないからね~。実際俺もあったしさ~。」
「スカイアさんの方はどんな敵だったんですか?」
「師匠の方に向かいながら話すよ。っていうか、君たち強くなりすぎだよ~。さすが師匠の弟子だね~。」
「そうっすかね・・・。」
「特にアルジェンは、言っちゃ悪いけどあそこまで弱いスキルをうまく自分が使いやすいように昇華させたのはほんとにすごいと思う。あれはもう『多重斬撃』じゃない。もっと別の何かになってるよ。俺でもあそこまではできないさ。フランシアだって、急に得たその力を存分に使えるようになってきている。二人とも素晴らしいよ。」
「ありがとうございます!」
「で、俺の方の戦いだったっけ?」
「はい。」
「俺の方はね・・・二人いたんだよ。」
「・・・え?」
「よく勝てたっすね・・・。さすがっすよ・・・。」
「まあまあ、そんな強くなかったしね~。でさ~・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
フランシアと別れた後、スカイアとポテプは語ることは何もないとばかりに無言で謁見の間を目指して走っていた。
「・・・ここか・・・。」
謁見の間の大扉の前に到達した二人は、扉を蹴り壊して中に入った。
「・・・おやおや。ずいぶん早かったじゃないか・・・。ポテプ。」
「テオ・・・。」
表情のない骸骨の顔からでもわかるほどに殺気を乗せた声でポテプはそう呟いた。
「まあまあ、君の恋人には何もしてないから。」
そう言ってテオが虚空に手を突っ込んで取り出したものは・・・カレラの形をした石像であった。
「・・・・・。」
「どうしたんだい?黙りこくっちゃって?ここはもっと安堵したり激怒したりするシーンじゃないのかな?」
「う・・・せえ・・・。」
「・・・なんだって?」
「うるせえっつったんだよ変態野郎。」
「ふ~ん?そういう態度をとるんだ・・・。こっちは君の恋人の像をいつでも砕けるけど?」
「やってみろよ。ぜってえ砕けねえから。」
「ほざけ。」
テオが腕に力を込めてカレラの石像を思いっきり殴った。
「・・・なっ!!?」
しかし、石像には罅一つ入らず、逆にテオの拳が赤く腫れあがる始末。
「何故だ!!!!」
「さあ、なぜだろうな?」
「貴様・・・何かしただろう!!?でなければこのようなことはあり得ない!!!」
「俺は何もしてないぞ?噓も何も言ってない。まあ、お前の拳がちょっと弱すぎたんじゃないのかなぁ~?」
「ぐっ・・・。」
「テオ様、落ち着いてください。」
「・・・済まないシメノ。少し取り乱したよ。仕切り直しと行こうか。」
「ええ。わかっております。」
直後、テオの隣で座っており、フードを被っているシメノと呼ばれた女がポテプの目の前へと高速移動し、持っていたクナイを振り抜いてポテプの首をはねようとした。
「やらせないよ~。」
しかし、その刃はポテプの首を切断する前にスカイアの取り出した剣によって阻まれた。
「・・・・・?あなた何者ぉ?」
「師匠の一番弟子。スカイアだ。」
「ふぅん。テオ様、この人の相手は私とそっちのゴーレム君とやっていいですか?」
「別に構わないよ。じゃあ、ポテプ。私達は場所を移そうか?」
「いいぜ。スカイア、頼んだぞ。」
「任せてください。」
その言葉を最後に、謁見の間からポテプとテオの姿が消える。
「・・・で?シメノとやら・・・。お前は何者だ?」
「さあ?しがない暗殺者とでも言っておきましょうかぁ?」
「なるほど・・・素直に答えてくれるわけではないようだな。」
「当然!!」
ズガァンッ!!!
突如空中で鳴った巨大な爆発音を合図に、二人の体がその場から消える。
謁見の間の中央で何度も衝撃音と衝撃波が生じ、目にもとまらぬ速さで両者が動き、ぶつかり合っていることを示している。
「結構やるわねぇ。」
「そっちこそ・・・!」
ここまでは両者にとっては準備運動。
「「ここからが本番だ!!!」」
互いに、ここからが本当の殺し合いと言わんばかりに目を血走らせ、剣を、クナイを握りしめて踏み込む。
そして・・・激突した。