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第7話 もう1つの魔王軍襲来

高く大きい窓から差し込む朝日、


高い天井、天蓋付きベット、


そこから起きてきた少年、


黒髪ギザギザ頭の、まるで横からの強風に吹かれ、


そのまま固まった様な髪型。


そう、ドリファンである。



吸血鬼の城で一晩明かし、先程ほど目覚めたのである。


その後、朝食もご馳走になり、


この国の姫、ドリー・メイスンとテーブルを囲んで、


茶まで、いただいた。


そこに、ドリファン、ミン、ドリーに弥太郎がいた。


ミンは、昨晩の話しの続きをしていた。



「んで、これも気になったのだけどぉ、


私達は、人間を食い殺したりしないって言ってたけど、


じゃぁ、あなた達以外は?」



「残念だけど、人間を食い殺してしまう者がいるわ。


ごく一部だけど。


そのせいで、私達まで、同じ様に思われているのが、


現状よ。


魔物の血でも、飲んだのでしょうね。」



「魔物の血を飲むとどうなるの?」



「膨大な魔力を得られる代わりに、知性が、著しく低下するわ。


そして、理性も無くし、


見境なく周りの者を襲い始める様になるの。


ま、そうなった奴の後始末も私達の仕事でもあるのだけどね。」



「わたしたちって、何も知らなかったのねぇ。」



「結局、私達って、


人間と共生するしか、生きる道がないって言うのもあるのよ。


知性と理性を守るために、人間から血を貰い、


代わりに、理不尽な暴力から人間達を、守るために、


私達は、力を使う。


この国では、そうやって生きている感じだと思う。


全ての人の胸の内までは、わかんないけどね。」



「共存共栄ってやつだね。」



「そっ!それよ! ミン、あなた学識あるのね。


ちょっと待って?


ミン・シャウリンって、あのシャウリン領の?」



「そうだよ。」



「マジ?まさか、直系とかじゃ無いわよね。」



「ミンは、跡取りだよ。」



会話に入れないドリファンが、口を挟む。



「なんでいるの?こんな所に?」



吸血姫は、キャラ崩壊。


ミンは、照れながら答えた。



「あのね、その、ドリファンの冒険の旅に、


着いて来ちゃった。 家出して、、。」



「家出、、、やるわね、あなた。


私も、思う事もあったけど、出来なかったのよ。」



「ひ、姫様!」



弥太郎は、目を白黒させ驚いている。


その様を見て、


当の本人は、それを笑っていた。



「弥太郎、私だって、この広い世界、自分の目で見て周りたい、


と、思う事は、悪い事じゃないでしょ。


私達の国は、小さいし、なかなか他国から相手にされないし、


外交で出る事も無いし、


だから、


しょうがないでしょ。」



「なるほどなるほど。」


「パパ!」



そこへ、国王が現れた。



「いやなに、近くを通り掛かったら、


面白い話しが聴こえて来たので、


つい、聴き耳を立ててしまったのだ。」



「パパったら、いつから聞いていたの?」



「その娘が、シャウリンの娘だと言う辺りかのぉ、


ドリーよ、そんなに世界を見てみたいのなら、


良いぞ、行っても。」



「本当!?」



みんなびっくり。



「ただし、条件が3つある。」



「条件?」



「うむ、


1つは、太陽の下でも力を使いこなせる事。


自分の身も守れん様では、話にならん。」



「2つ目は?」



「うむ、


2つ目は、世界には、ワシらより強い者が多くいる。


その様な者と、戦ってはダメだ。


戦わず、回避する知恵を学びなさい。


出来れば、強者の気配を感じ取り、会わない様に回避するのだ。」



「わかったわ、それで、3つ目は?」



「それは当然、


ワシに手紙を書く事、出来ればマメにな。


それと、」



「まだあるの?」



「いや、これは条件ではない。


まぁ、頼み事みたいなものでな、


お前の、兄や姉達に会って来なさい。


自分が困った時は、勿論頼り、兄弟が困っていたら、


手伝いなさい。



出来ればその、


ワシにも、こっそりと、教えてくれ。


あ奴らは、なかなか自分では言ってこないのでな。」



少し照れながら答える国王、


そこには父親の顔を覗かせる。



「わかったわパパ、何か困れば兄達を頼るわ。


ところで、


太陽の下でも力を使いこなせる様になるのには、


どうするの?」



「何簡単な事だ、ワシが教えれば、


お前ならI年もかからずに、使える様になる。」



「ありがとうパパ。」



ミンは、少し羨ましそうに、親子の会話を聞いていた。



「いいな〜ドリーは、話しの解るパパで、


わたしの所なんか、話しにもならないんだから。」



「ふふ、いいでしょう私のパパ。」



そう言い、父親の腕にしがみつくドリー、


おかげで国王の顔は真っ赤になり、


その場に笑いが満ち溢れていたのだが、


それは、


駆け込んで来た王の従者により、


終わってしまった。



「陛下!大変でございます。」



「どうした。 かまわん申せ。」




「はっ、再び北西部の国境付近から、


例の霧が発生して、


それと共に屍の群れが進んで来ているとの事。」



「そうか、また来たか。」



「それともう1つ、偵察からの報告で、


今回の襲撃は、魔王軍の死霊使いによるものとの事です。」



「そうか。」



「魔王軍、、」



短く呟く吸血姫に、武闘少女は訪ねた。



「ねえ、どうして魔王軍が?」



「私にも、本当の所は解らないけど、


少し前に、魔国バゼルの支配下に入れって言って来たのよ。


断ったけど。


もしかしたら、そのせいかな?」



「それひどくない?一方的すぎる!」



国王は、更に話しを付け加えた。



「実はな、属国になりイストニアを襲えと言って来たのだ。


奴らは、我らの本質を理解していないのだ。


人間達と共に生きる必要がある事を。」



少年剣士は、話しの輪に入って来た。



「もしかして、イストニアの戦争になるかもって、


ジジイが言ってたけど、


その相手って、魔王軍?」



「その話しは判らんが、確かに、北西と北北東からの、


2方向から進攻されると、


大国イストニアでも、苦戦するな。」



「ねえミン?ジジイって誰のこと?」



吸血姫の問いに、ケロっと答える。



「あぁ、ダマリア様の事よ。」



「ダマリア〜! あの伝説の魔導師の、


あの、おとぎ話に出てくる?


あの、あの、あの〜?」



「たぶんそう。」



「なんで〜ドリファンは、ジジイって言ってるの?」



「あぁだって、ダマリア様は、ドリファンの育ての親だも。」


これには、国王も驚いた。



「なんと!


では、少年は魔法使いなのか?」



「違うよ、剣士だよ。魔法は使っちゃダメなんだって。」



「うむ、なぜであろうな?」



「ジジイは、使わないんだけど、その1つの技を習った。


その技のせいなんだって、言ってた。」



「その技とは?」



「ショルダマギ。」



「聞かん名だなぁ。」



「ジジイは、無駄な事は言わないから、


本当に、大事な事なんだ。きっと。」



「うむ、なるほど、1人は、シャウリンの拳士、


もう1人は、大魔導師の弟子の剣士、


強力な助っ人になるな、、


すまんが2人、手を貸して貰えてぬか。」



ミンとドリファンは、満面の笑みで、即答した。



「やる!手伝う!」


「いいよ。任せて!


わたし達、強いから!」



「うむ、助かる。


では、娘と一緒に敵に当たってくれ。」



「わかったわ。」



ドリファンとミンは、ドリーと弥太郎とパーティーを組んで、


従軍した。



軍は、国王の指揮のもと、町に可能なかぎり被害が及ばないよう、


平原に出て迎え撃つよう、布陣して、


魔物の群れを待ち構えていた。



やがて、


濃い霧がやって来て、それと共に、アンデット系の魔物の群れが、


現れた。



その霧は、太陽の影響を、呪術的に無くすものだった。


ただし、


それは、術者側だけで、相手側には、何の効果もなかった。



今回は、アンデットの軍団の中に、


大将らしき者がおり、


その者は、戦車に乗っている。



その戦車を引く馬は、2頭とも蒼白い炎の立髪を持つ黒馬で、


ナイトメアアーマーの御者と、ハルバートを持つ者2名がおり、


当人は、中心の玉座に座っていた。



それを見つけた吸血鬼の王は、口上を叫び始めた。



「目にも見よ!


遠からんば、音に聞け!


雷鳴轟く、この威風!


我こそは!メイソニア国王!ドラン・メイスンである!」



口上を無視して魔王軍は、進軍を始める。


ただ、


魔王軍の将は、


拡声魔法で、大声で威圧を始めた。



「ふぁっふぁっははつ、


吸血鬼の王よ!


すぐに軍門に降るがよい!


くっくっ、さすれば命だけは助けてやろう!


我は、魔王軍、三大将軍が1人!


冥界王デス・テーロスじゃ!


貴様らに、勝ち目はないぞ!」



吸血鬼の王は、怯える様子もなく、


それどころか、不適な笑みを浮かべ、挑発した。



「齢五千を超えるワシの力!舐めるなよ小僧!


冥府の王は、冥府に帰るがよかろう!ぅわっはっはっはっ!」



「ちっ、真祖級か、


だが、こちらの勝ちは揺るがない!


いでよ!


ヒュドラゾンビ!」



その号令と共に、ドラゴンゾンビの群れが現れ、


その中心に、ヒュドラの動く屍が現れた。



ヒュドラは、その首の数だけ、


桁違いに強くなっていき、


そこに現れたものは、6つの首を持つ、


神話級のヒュドラであった。



「また厄介な物を持ち込みおって。」



流石の吸血鬼の王も、舌打ちをした。



「くっくっくっ、


大人しく軍門に降らなかった事を、後悔するがよい!


全軍進撃せよ!


奴らを噛み殺し、我がコレクションに加えるのだ!」



号令と共に、咆哮放ちドラゴンゾンビ達が、


突進を始めたが、


吸血鬼の戦士達は、一歩も引かない。



「我らの高貴な血に掛けて!


暴虐なる物どもを、


冥府に叩き返すのだぁぁ!」



「おおぉぉぉ!」



国王の激に、戦士達は、大いに士気を上げ、


こうして両軍は激突した。



不死身どうしの戦いは激しさを増し、


おかしな話ではあるが、戦死者が出始めた。


ドラゴンゾンビも、ゾンビの存在魔力の様な物を破壊されると、


再生出来なくなり、やがて滅びる。



同様に、


吸血鬼達も、自身の魔力より強い力で、


心臓と融合している、核を破壊されると、


消滅した。


この場合、戦死である。



「ちっ、思ったより、やりおる。」



デス・テーロスの舌打ちとは対照的に、


吸血鬼の王は、涙を堪えて、再び激を飛ばす。



「散って逝った同士の思いを!


力に変えぇぇ!


奴らを叩き帰すのだぁぁぁ!!」


「おおぉぉぉ!!」



ドリファン達も、ゾンビや、スケルトン達を撃退していく。


ただ、


まだまだ、その数も多く、戦っている者達にとっては、


まったく数が減った気がしない。


ある意味、精神を削られる戦いである。


そんな中、


1人で無双している者がいる。



ミンである。



彼女は、武闘僧侶モンク、


つまりは、僧侶である。


彼女自身、聖なるオーラを纏い、


繰り出す技すべてに、聖属性の威力が上乗せされた。


当然、


ゾンビやスケルトン達は、簡単に昇天した。



「やるわねぇ。」



吸血姫も舌を巻く、ミンの無双っぷり。


それにつられて、


ドリー、弥太郎、ドリファン達も、


次々と、魔物達を倒していく。



戦士達と共にではあるが、


ようやく、ゾンビやスケルトン達を撃退した。



そして、


国王と、強力な戦士達で、


ドラゴンゾンビとヒュドラゾンビを抑えていたが、



ゾンビ、スケルトンと戦っていた部隊が合流すると、


形勢は、吸血鬼達に傾いた。


ドラゴンゾンビは、その数を減らし、一見すると、


吸血鬼達が有利に見えたが、


しかし、


ヒュドラゾンビと対峙できるのが、国王1人で、


やや押され気味なのである。



その時、


再び、ドリファンに、あの声が聞こえてきた。



、、、さあ、その剣を使うのです。


風剣士の子よ。、、、



背負っている手掛かりの剣のオーブが光り始め、


いつも抜けない、その剣が、スルリと抜けた。



「抜けた!」



その時の剣気が凄まじく強く、それに気づいた国王が叫ぶ。



「少年! 手を貸せ!」



「はい!」



ドリファンは、全身光り輝き、ヒュドラゾンビに突進した。



「ドリファンその技ダメー!」


「どうしたのミン?」



叫ぶミンに、ドリーは聞く。



「あの技を使うと、今のドリファンは、動けなくなるの!」



「弥太郎!ついて来なさい!ドリファンのフォローに回るわよ!」



3人は、ドリファンに続いた。



全身光り輝く少年の剣も輝きを増し、


彼の渾身の一撃が、ヒュドラゾンビに、


国王から見て、左側から、首2本を切り飛ばし、


3本目の中程まで、切り込みを入れた。



結果として、ヒュドラゾンビは、大幅に弱体化した。



「でかしたぞ!少年!」



国王は、少年を褒め、


そして、


ヒュドラゾンビに、止めを入れる。



「くらえ!」



国王の影の刃は、無数に伸び、


全周からヒュドラゾンビに、襲い掛かり、


細切れにして、消滅、冥府に叩き返した。



ドリファンは、体が動けなくなり、


その場に崩れた。



そこに、ドラゴンゾンビの足が、


あわや、ドリファン、ぺっしゃんこ、


だが、


そうは、ならず、


すでに動いていたミンが担いで飛び、


友の窮地に、半覚醒したドリーが、


そのドラゴンゾンビ、影の刃でズタズタにして、


無に返した。



他のドラゴンゾンビは、猛者の戦士達により駆逐された。



「チッ、こんな事ならば、黒騎士を連れてくるのであったわい。


奴が居れば、貴様ら全員、ワシのコレクションだったものを、、」



魔王軍全軍出ている中、護衛と称して残してきたのだが、


自身の心情良くしようと、企んだ結果である。


魔王自身は、護衛を必要としておらず、


一部の側近達で十分であったのである。



しかし、


この判断のおかげで、メーソニア王国は、


勝利出来たとも、言える。



実際、その黒騎士は、剣一本で、一国を滅ぼす。


刃こぼれ1つも、剣技の恥と、言う、


剣の達人であったのだ。



それはそれとして、


吸血鬼の国は、勝利した。



「我らの勝利だぁぁぁ!」



「おおぉぉぉぉ!」



国王の勝利宣言で、戦士達は、大いにに沸いた。



第7話 完

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