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6話:運動するって気持ちがいい

「うぉぉぉぉぉぉおおおお!」


 俺は、年甲斐も無くめちゃくちゃ運動している。


 場所は道場。

 もちろん『Yggdrasil ユグドラシル』の中である。

 個人に貸し出される『修練場』という機能を活用するとこの場所に来れる。


 その中で俺は、初期武器である『木製の双剣』を振り回している。

 ゲームだからこそ疲れるという感覚は無いが、いま心の中にあるのはあのクソ兎への苛立ちだ。


「うぉぉぉぉぉおお!」


 リスポーンをしてからは、結構真剣に調べ物をした。

 特にフィールドのモンスターの分布とか、パリィとか、結構調べた。


 その結果わかったのは、俺が馬鹿だったということだ。


『ホーンラビット』


 俺が戦ったモンスターだ。

 事前に調べたときは、兎とゴブリンとスライム、という覚え方だったが、正確に言うと


『バニー』

『ゴブリン』

『ネイチャースライム』


 この三匹が初心者が倒せるあの森のモンスターだ。


 そして追記すると、森は真南から東か西のどちらかにでも動くと、少しずつ適正レベルが上がる。

 森が続いているからと言って、全てが初心者の森ではない。


「うぉぉぉぉおおお!」


 失敗したときは、失敗を処理し、今後への対策を打ち、それで終わりなのだが、精神はそうは行かない。

 失敗するのは嫌だ。

 だって人間なんだもの。

 それに今回は俺の調べが甘いというところもあり、こうやってストレスを発散している。


 ちなみに、デスペナルティだったが初心者のうちは現実世界で1日は免除されるらしい。

 優しい世界だ。


『クリア!』

「終わった」


 ちなみに現在、虚空に向かって双剣を振るっていたように見えるが、俺の視界には幾つものボールが向かってくるのが確認できる。

 それを切りまくってもう一時間は経ったのだが、ようやく双剣の扱いに慣れてきた。


 今こうして双剣を振るっているのは、しっかりとした理由があって行っている。


 『ゲーム慣れ』と『ステータス向上』のためだ。


 ゲーム慣れに関しては、先程の戦闘での動きがあまりにも悪かったことだ。

 そこで、このゲームの操作方法について調べてみると、2つの操作方法があることがわかった。


 『リアル』と『ゲーム』という操作だ。

 リアルというのが基本設定であり、現実に即した操作方法で、初期のステータスがリアルに近いと、変に現実との動きとリンクしてしまい、動きづらいらしい。


 そしてもう一つの『ゲーム』という操作方法。

 これは自分のしたい行動に対して、ある程度プログラムされた動きをする、というものだ。

 つまりはボタンを押して動くゲームと同じ様な操作感ということだ。

 こちらはある程度読みやすい動き、思考を読み取り、適切な行動を選んで、実現、までのプロセスがあるので、動こうと思ってから少しラグい感じがするという。


「やっぱリアルかぁ」


 結論として、俺の操作方法は先程から変わっていない。

 ゲームの方も試した。

 試したけど、どうしてもリアルと比べて遅れる自分の体に違和感を覚えてしまう。


 だからこそ、こうして体を動かしまくってゲームの操作感に慣れようとしている。


 攻略wikiには『レベルを上げて操作感の不慣れを克服する』と『プレイしまくって慣れる』の2つの意見があって、俺はこうして後者を実践している。

 単純にストレス発散も兼ねているけど。


 小一時間動いて、双剣の重みに慣れた。

 まだ足を動かすと少し双剣の動きがもつれる。

 だけどモンスターを倒していけばこういうのも慣れていくだろう。


「後一時間」


 ウィンドウを操作して、修練場メニューから攻撃練習を選択する。

 時間は最長の一時間。


 ゲーム慣れともう一つの目的である、ステータス向上。


 ステータスはイベントとレベルアップでしか上昇しない。

 それ以外にもステ向上のアイテムもあるのでは、とされているけど、まだ見つかっていない。


 と、言うのがわかっている情報なのだが、この話には続きがある。


『ステータスの上昇に個人差がある』


 10人のプレイヤーがいて、みんな10レベルまで行っているはずなのに、ステータスの総合値が微妙に違うのだ。

 1割も差は無いが、すべての人が微妙にステータスの総合値が違う。


 まだ確定していないが、現在上がっている仮説は『経験値以外での行動』だった。


 経験値を獲得する以外での戦闘行動や、街での行動が、レベルアップ後のステータス上昇に影響していると考えられている。

 その仮説が上がったのが、『いだてん』というプレイヤーだ。


 彼は戦闘など一切せず、ユグドラシル探しに走っていた。

 CON、SPDに極振りし、ひたすら走った。

 ひたすら走っても成果は未だ出ていないのだが、彼が道中適当にモンスターを倒してレベルアップすると、明らかにCON、SPDのステータスが多めに上がったのだ。

 それをSNSに投稿したところ、それが見つかりこの仮説に至った、ということ。


「ふふふふふ」


 趣味の音ゲーで棒状の物を振るうのには自信がある。

 それをどんどん双剣のやり方に変換していけばいい。


「これで兎を……」


 俺の勘違い?

 恨むのはお門違い?


「そんな事関係ないんだよぉぉぉ!」


 確実に逆恨みだけどここはゲームだからそう思ってもいいじゃないの。

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